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7.

 ルビー色の光沢ある真っ直ぐな髪と大きくキラキラな瞳が目に眩しい、童顔の美女。

 そんな彼女が、カナちゃんことカトリーナさん、だった。


 領主の出資で設立された栄えあるこの学園の、理事長と現在は唯一人となった教師を兼任。

 俺が勤務する「カナのパン屋さん」のオーナーであり、繁盛する某大衆向け食堂の経営者でもある、そうだ。


 成人前の子ども達に、生計を立てるための職場と将来の糧となる学びの場を提供している、生ける伝説というか、若くして偉人に列せられるレベルの雲上人というか...まあ、凄い人だった。


 パッと見の容姿や浮かべる表情は俺より幼そうにも見えるのだが、しっかりした言動や所作と大人びた雰囲気およびそのキャリアを考えると...俺より年上、なのかな?

 う~ん。いや、同年代のような気もするなぁ…。


 まあ、女性の年齢に対する追及は禁忌なので置いておく、としても...うん、本当に可愛い、よね。

 あまりの可愛らしさに、後光が差して見える。いや、ホントに。本気(マジ)で。


 うん。キラキラで、ピッカピカだ。


 と、まあ。

 そんな超絶に可愛らしいカトリーナさんが教鞭をとる教室で、俺は、この近隣の主要な国々で使われる言語を基礎から学習し直していた。


 合間合間で他の生徒たちに随時の指導を施しながら、約束(アポ)なく現れた俺からサクッとヒアリングして。

 二つ三つと間髪を入れない簡素な課題の連打で、速やかに俺の実力を測り。

 最後のトドメとばかりに改めて俺の希望を聞き取り確認した上で、ドドンと資料あんど課題を山積みにする。


 ははははは。カトリーナ女史って、割とスパルタだったんだね。


 けど、まあ。本当に、有難いこと、だった。

 無造作にサクッと貸してくれたけど、この資料たち、結構なお値打ち品だと思うんだよなぁ…。


 う~ん。大丈夫なの?


 今更ながら、色々と心配になってきた。


 そもそも。人気店である「カナのパン屋さん」だけでも十分に資産価値は高い筈、だ。

 その上に。もう一店舗、別業態の割と大きめな飲食店を、自己資本で経営している、らしい。

 更に、この学園を運営する為に投下しているであろう資金や保有資産など含めると...うん、相当な経済規模になるのは間違いない。


 それを、若くて可憐な女性が一人で確たる後ろ盾もなく切り盛りしている。

 となれば、この弱肉強食を是とする世界ではアッと言う間に強欲な(やから)の餌食になるのは必定、確定事項だ。


 だから。

 この現状が成り立っているという事は、何かそれを支えられるだけのモノが存在する、筈なんだけど…。


 形式だけの領主による支援と彼女の持つ過去の名声のみでは、限界があるよね?


 俺が、そんな事をホケっと考え込み、ついつい学習が疎かになっていると、カトリーナさんが気付き声を掛けてくる。


「カイトさん。進捗は如何ですか?」

「えっと…」

「どこか分からない箇所でも、ありましたか?」


 くっ!

 カナちゃんの笑顔が眩しいぜ。


 多忙なカトリーナさんに余計な手間を掛けてしまうとは、何たる不覚!

 真面目に勉学に励もうよ、俺。


 なけなしの俺の良心が、シクシクと痛む。

 ちょっと、自分が情けなくなってきた。とほほほほ。


 年齢も学力も上下の幅がある生徒たちを一人で見ているので、カトリーナさんの負担は大きい。


 だから。自己学習に適した一定レベル以上の学力がある年長者は皆、黙々と自分の課題に取り組んでいる。

 行き詰ったり自力で解決できない壁にぶち当たった時にのみ、カトリーナ女史の助力を乞うのだ。


 これは、あれだ。くMん式の学習塾と似たような形態、だね。

 一人の教師が多数の多様な生徒を指導するには、この方式が現実的で効率が良い、という事なのだろう。

 ここ、カトリーナ学園では、開設以来ずっと、この方式を取っている、という話だった。


 黙々と用意された課題をクリアしながら、要所要所で笑顔の童顔美少女と知的な会話を交わし、着々と自己の学力の底上げを実現する。


 うん。中々に充実した時間を過ごしているよな、俺。


 こんな平穏で長閑な日常が、ずっとこのまま続けば、良いのになぁ…。

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