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4.

 街の繁華街にある大通りから少し路地を入った場所に「カナのパン屋さん」はある。


 そんな、俺が短期バイト的な契約で用心棒っぽい役割も含む雑用係として働くこととなったこの店は、伝説的なエピソードをもつこの街の有名店、らしい。


 元は、神童として一世を風靡したカナちゃんという少女とその両親が営んでいた、小さな個人経営のパン屋だったのだそうだ。

 幼いながらも利発で可愛らしい女の子が、商売下手な両親を健気に支え、無名で何の特徴もなかった小さなお店を繁盛店へと導いた。そんなエピソードが、このお店には色々とあるのだとか…。


 拙い笑顔の幼女が、見知らぬ大人の相手をし、要望に添った商品を自ら選んで勧め、素早く的確に会計を済ませ、綺麗に包装した商品を渡して丁寧に見送る。

 朝から晩まで毎日毎日、苦難があっても挫けることなく、ひたむきに実直に笑顔を忘れず、お店を切り盛りする幼い少女。


 うん。俺でも、全力で応援してしまいそうだな。


 有名らしい数々のエピソードについての全容と詳細はまだまだ聞けていないのだが、様々な苦難に見舞われつつも、神童と(うた)われた才能と機転と強運で切り抜け、成功を鼻にかけ天狗になることなく大成した結果、現在のこの店と関連するいくつかの施設を今でもカナちゃんが所有している、という説明は既に聞いた。

 けど。現在のこの店に、カナちゃんは居なかった。

 というか、俺は、まだ、カナちゃん本人にお会いしていない。


 もの凄ぉ~く、残念だ。


 いや、まあ。経営者が全ての従業員と顔を合わせる必要がある訳ではないし、俺は単なる臨時雇いのスポット従業員、だからね…。


「おはよう、ルルちゃん!」

「おはようございます、ヘンリーさん」

「今日も元気だねぇ。本日のお勧めは、何だい?」

「えへへへ。えっと…」

「ん?」

「...」

「もう、ルル。また、確認し忘れてたわね!」

「ご、ごめんなさい。お姉ちゃん」

「まあまあ、リナちゃん。怒ると、可愛らしい顔が台無しだよ~」


 開店と共に、訪れたお客さんが数人。

 その中の一人の常連らしきご老人が、店員である少女と和やかに会話しながら買い物を楽しんでいる様子を、俺は店のバックヤードから窺う。


 うん。今日も、平和だ。

 これなら、用心棒的な人員など不要、なような気もする...けど、世知辛い世の中、一寸先は闇なので備えは必要、なんだよね。


 まあ、成人前の少女や幼女が接客を担い、バックヤードでパンを焼くのはお婆さん達なので、抑止力的な意味合いでの若い男手は店にい居た方がよい。

 けど。厳つい荒事が得意そうなタイプの強面(こわもて)は、店の雰囲気にそぐわず、店員たちも委縮しそうだ。

 だから。俺みたいな見た感じ然程は強そうにない男が採用された、という事かな?


 と、まあ。

 兎にも角にも。

 何とも緩い環境ではあったけど、俺は、真面目に割り当てられた役割を果たすべく、店内の様子に注視しながらも細々とした雑用を見つけては片付ける日々を送るのであった。






 本日も、住民に根強い人気がある繁盛店「カナのパン屋さん」は、平和だ。


 この店舗内での接客は、どうやら、未成年の少女が担うお約束になっているようで、少し前に入れ替わった現在の店員さん達も、可愛らしい制服を着た女の子たちだった。

 って言うか...いや、まあ。今は、お馴染みとなってしまった三姉妹がいる訳だが、俺がここ数日、ずっと見守っていた店内には、少女の手前の幼女から成人直前の少女まで、兎に角、二~三人で一組となった女の子たちが働いていた。


 シフトは、朝八時からの午前組と昼一時からの午後組が、各五時間毎の二交代制で。

 日曜が定休日になっているので、一週間の十二枠を三組+αで回している、模様だ。


 今現在は、簡素ながらも可愛らしい揃いの制服を身に纏った、並ぶと大中小といった感じのよく似た容姿の三人が、お互いにフォローし合いながら途切れることのない来店客を捌いている。


 パンの補充と整頓などの陳列作業、お勧め提案や店内誘導などの顧客対応、そしてお会計。

 見ていて気持ち良い程に、くるくると立ち回り、きびきびと働く。


 そして。一番年下のまだ幼女ともいえるルルちゃんでさえ、値札や名称や簡単な解説が記された商品札を読み取り、遅滞なく的確にお会計も含めた顧客対応を熟している。

 これは、ある意味で凄いこと、だと思う。


 所作や持ち物と普段の服装から見て、この子たちは、決して裕福な家庭のお嬢様でない、のは明白。


 が、しかし。どうやら、この店で働く少女たちは皆、レベルの差こそあれ、キチンとした教育を受けている、ように見える。

 けど。この街の子ども達が全てそうなのではなく、この店に関連する場所だけが特殊、であるようだ。


 弱肉強食が当たり前であり貧富の差が激しいこの人類社会では、極一部の富裕層を除き、子どもは幼くても貴重な労働力として扱われる。

 そして。幼稚園や小学校に該当するような教育機関は、一般的ではない。

 つまり。読み書きや計算ができる子どもは珍しい存在、である筈なのだ。


 だから。何か、秘訣というか理由が…。


「いらっしゃいませ~」

「まあ~。まあ、まあ、まあ、何て可愛いらしいのかしら!」

「えへへ。ありがとうございます~」

「良いわね、あなた。おいくつ?」

「あはははは。お姉さんも、可愛いですね。そのドレスも、凄く格好良いです~」

「あら、あら、まあ、まあ。良く分かってるではなくて!」


 ははははは。急に店内が騒がしくなった、ね。

 何て言うか、かなり馴染み深いハイなテンションが盛大に炸裂している、よね?


 そう。美幼女が何よりも大好きで大好物なゴスロリ美少女、エイプリルちゃんがご来店したのであった。

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