1.
略して「yロリnT」ってことで、どうでしょう?
ちなみに「わいロリえぬティー」って読む目論見ですが…。
という訳で。はい、開幕です。よろしくお願い致します!
なだらかな丘を越え、視界が開けた。
目の前に、不毛の大地を寂れた街道が貫く雄大な景色が展開する。
そう。それは、この世界では、割とありふれた光景、だった。
のだが、何故だか。
荒野に延々と続く寂れた街道のド真ん中に、立派なゴスロリ衣装を装備した少女が、仁王立ちしていた。
* * *
中世のヨーロッパっぽい文明レベルの人類社会。
人は徒歩で移動、が基本。
騎士は騎馬、貴族は馬車で移動する。
つまりは、馬を使った移動が贅沢かつ最速。で、異世界モノに在りがちな移転魔法は存在しない。たぶん。
喰い詰めたり爪弾きになったりした人間が、ふらりと旅に出る。
だから、一般人にとっての旅人は、要警戒の対象。
流れの冒険者や商人など、旅人を見かけること自体は決して稀ではない、のだが…。
だから。行商を生業とする一部の商人たちを除き、一度別れた旅人と定住する一般庶民が再会することは、極々稀なこと、らしい。
況してや、集落をふらりと出て行った者とは再び会うことなど無い。それが、一般常識、とされている。
そんな世界で、俺は、旅をしてる。
徒歩で。
冴えない風貌の若者が、一人寂しく荒野を旅する。
と思いきや...実は、黒髪碧眼で新雪のような白い肌が眩しい美少女剣士と二人旅、だったりする。ははははは。
ただ、まあ。残念至極でかつ大変遺憾ながら、俺と彼女との間に甘い雰囲気は一切ない。
さらさらストレートの長い黒髪を、後頭部の少し高い位置で束ねた、馬シッポ。
うん。ポニーテールと言うには少し長過ぎる長髪だけど、彼女には凄く似合っている。
小柄でスラリとした体形に、飾り気のない質素なワンピースを纏った、冷静沈着でストイックな少女。
そんな、俺よりも二つほど年上のクールビューティな美少女お姉さんが、俺の旅の相方、なのだった。
その腰には、彼女が父親から受け継いだ、年季の入った古い刀を佩いている。
そう、刀。
外観は、俺の記憶にある日本刀とは少し違い、鍔の部分や鞘が西洋の剣に近い感じのデザインではあるものの、刃の部分はどう見ても日本刀。
彼女は、この刀を駆使する凄腕の剣士さま、なのだ。
居合切りも高度に使い熟し、一対一ではほぼ無敵とも言える程の使い手さん。
ただし。
刀という武器の特性もあってか、惜しいことに、乱戦には強いと言い難い。
人類が何かと遭遇することの多い集団で群れて襲ってくるタイプの魔獣たちとの戦闘では、苦戦しがち、だったりする。
つまり。まあ、彼女の実力は正当に評価されないことが割と多い、といった現実があったりするのだ。
弱肉強食は当然で、他者を蹴落としてでも生き残る。
そんな脳筋的な考えが幅を利かせる諸行無常なこの世ではあるが、実力主義は徹底している。
強さを示し実績を上げれば、女性だからといって差別されることはない。
のだが、高度な技能より一目瞭然な強さが高く評価される。が故に、彼女のある意味で繊細な剣術は、少し分が悪かった。
だから、まあ。色々とあった結果、彼女は、生まれ育った辺境の大きめで割と栄えていた農村から、武者修行の旅という名目で出奔した。
そこに、諸般の事情でこれまた村に居場所がなく将来の展望も開けず進退に窮まっていた俺が、少し強引に同行させて貰い、現在に至る。
そう。かなり強引に、形振り構わず必死に縋りつく勢いで、無理やりに同行させて貰った。
ははははは。
いや、もう、本当に。必死でした。
身体能力にも容姿にも家族にも恵まれず、知識や学力があっても活かす機会は皆無で唯々只管に腕力と体力勝負な貧民環境におかれ、泥沼の最底辺生活まっしぐらだったもので…。
もう、藁にも縋る思いと勢いで、脱出できる唯一の機会と確信してガッシリしがみ付きましたよ、はい。
物心ついた頃からずっと暮らす村にいる限りは窮状打開の目は無く、跋扈する魔物と戦う術がない身で村から出るのは自殺行為。
そこに出現したのが、戦闘力が秀逸な村から旅立つ知人。
うん。何が何でも憑いて行くしかない、よね?
と、まあ、つまり。姉貴分の凄腕美少女剣士と、その金魚の糞である俺、という組み合わせが完成したのであった。
はっはっはっはは。
しかし、まあ。
冷静かつ客観的に現実を鑑みた結果として認めるに吝かでない事実ながら、物凄く悲しい、よね。
せいぜい足手纏いに為らないよう、精進したいと強く心に刻んでおきます。とほほほほ。
ちなみに。というか当然ながら、俺には、飛び抜けた才能など何一つない。たぶん。
うん。転生特典という名の夢やロマンに満ち溢れた何かなど俺には縁のない架空の産物、ですね。はい、合掌。
けど、まあ、幼い頃から苦労に苦労を重ね必死に自活してきたので、生活能力と危険察知の直感だけは研ぎ澄まされている、などと自負していたりもする。
まあ。美少女剣士さんとは、身内といえる程に親密な間柄ではないが、知らぬ仲でもないしね。
俺個人としてはある程度の信用を得ている上に、遺憾ながらも彼女からは人生の相方として守備範囲外という無言の通告を受けている一方で、腕力を含め俺が彼女に勝てる要素など欠片もないのは明白な事実。
だから、まあ、人畜無害な雑務担当の従者として当面の間は同行を容認されている、といった感じかなぁ…。
と。現実逃避も兼ねて俺自身の直近の各種事情など思い返してみた、のだが...消えないね。あれ。
どうやら目前の光景は、俺に全く自覚のない謎な深層心理くんが見せていた幻、では無かったらしい。
そう。
荒野に細々と続く寂れた街道のド真ん中に、立派なゴスロリ衣装を装備した少女が仁王立ちしていた。
俺は、棒立ちとなり目を見開いた状態でそのゴスロリ少女を暫しガン見した後、ハタと正気に戻った。
その間、数秒。だったと思う、たぶん。
うん。数分ということは無い、筈。
いや、現実逃避の追憶が結構な長さになったので、もしかして数十秒?
いやいや。あくまでも脳内思考なんだから、長くても十数秒、だよね?
と、まあ、未だに少し混乱気味な俺は、何とか気を取り直して、首を右方向にグリンと回す。
すぐ右横に立つ美少女剣士さまのご尊顔を視界に収め、我らがパーティのリーダーである彼女に指示を仰ごうと、遠慮がちに声を掛けてみる。
「アーヤさん、どうします?」
「...」
「えっと…」
「...うわぁ、可愛い」
「へ?」
冷静沈着でストイックな美少女剣士であるアーヤさんが、少し壊れかけていた。
うん、まあ、仕方ないよね。
この非日常的で斬新な光景を唐突に問答無用で突き付けられると、流石に茫然自失になる、よな。
しかし、まあ。ある意味、この近辺ではお目にかかれない奇抜な衣装、だよねぇ。
けど、まあ。シックだけども豪華でヒラヒラしていてメルヘンチックな独自の世界を構築している、と言えなくもない、かも。
そう。女の子の憧れを詰め込んだ玉手箱、なのかもしれない…。
特に、アーヤさんのようなタイプの女の子にとっては、遠い憧れのキラキラ衣装なのかも…。
ただ、制作にいくら掛かっているのか想像したくもないが、カスタム製造の超高級な衣装である事だけは俺にも分かる。
この近辺の社会通念からすると、少しスカートの丈が短すぎるような気もしないでもない。が、アウトではなかった、と思う。
のだけど...まあ、間違いなく、異質、ではあった。
違和感の塊、とでも言うべき、かな?
その少女が纏う衣装は、二十一世紀の日本の、超高級なメイド喫茶で採用されていそうな程に優美で豪勢な衣装だったのだ。
数あるネット小説の中から、このページを訪れて下さり、ありがとうございます。
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貧弱な文章生産能力と乏しい記憶力を酷使し、読みたい理想の長編小説を目指して、またもや挑戦しております。ので、呆れずに最後まで楽しくお付き合い頂ければ幸いです。




