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無限世界の片隅で  作者: 海鳴雫


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第5話 ― 限界を越える刻(リアライザー) ―

轟音が、世界を裂いた。

 風が千の刃となって塔の周囲を切り刻む。

 《The Infinity World Online》――その名の通り、無限に広がる世界の空が、今や戦場の幕として裂けていた。


 Λ(ラムダ)。

 元世界ランク1位のプレイヤー。

 今やこの世界を“修正するワールド・コレクター”として支配する存在。


 Mioは、その圧倒的な力を前に、歯を食いしばっていた。


 「――化け物だな。」

 「当たり前でしょ。あれ、私たちが到達できなかった“上”だよ。」

 Seraが言う。

 その瞳には恐怖よりも、闘志の炎が宿っていた。


 Λはゆっくりと空中に浮かび、黒い翼を広げた。

 「秩序を乱すコードは削除される。それが、俺の使命だ。」

 「削除、ね。……なら俺たちは、“バグ”として生き延びてやる!」

 Mioが剣を構える。雷光が刀身を包み込み、空気が震えた。



 Λが動いた。

 ただ、片手を振っただけで、空間が歪む。

 見えない衝撃波が塔を包み込み、MioとSeraを吹き飛ばした。


 「ぐっ……!」

 背中から瓦礫に叩きつけられる。

 ログ画面に赤い文字が走る。

 《HP-62%》


 「クソッ……攻撃の“風圧”だけでこれかよ……!」


 Λが指先を弾く。

 瞬間、黒い光弾が十数発、空間から出現した。


 「《Null Bullet》――軌跡のない弾丸、避けられるか?」


 黒光が閃き、次の瞬間、爆音と共に塔の外壁が吹き飛ぶ。

 Mioが地を蹴り、Seraが後方宙返りでかわす。


 「避けても、追尾してくる!?」

 「クソッ、こいつの攻撃、AIアルゴリズム付きかよ!」


 Λの声が静かに響く。

 「違う。俺の意思で、動いている。」


 ――そして、Λの姿が消えた。


 「消え――!?」


 刹那。

 Mioの後ろに、影。


 「遅い。」


 声が耳元で囁かれた瞬間、Mioは反射的に剣を振るう。

 刃がぶつかり、火花が飛んだ。


 Λの剣が黒光を放つ。

 その一撃で、地面が深く抉れた。


 「ッ……!」

 衝撃が腕を突き抜ける。

 重い。まるで質量そのものが違う。


 Seraが援護に入る。

 「《デュアル・レイ》!」


 光の双剣がΛを貫こうとするが――彼は無造作に片手で受け止めた。

 「……この程度か。」


 そして、握ったままの手から衝撃波を放つ。

 爆風が弾け、Seraが後方に吹き飛んだ。


 「セラッ!!」


 「大丈夫……っ、まだ動ける!」


 Mioが駆け寄ろうとするが、Λが前に立ちはだかる。

 その瞳が、まるで神のように冷たく光った。


 「この世界は、俺が完成させる。

  お前たちの“感情”も、“自由”も、バグに過ぎない。」


 「ふざけんな……!」

 Mioの声が怒りで震えた。

 「自由を奪って世界を作るなんて、それはただの独裁だろ!」


 Λの剣が再び光る。

 「ならば、力で証明してみせろ――貴様らの正義を。」


 瞬間、世界が白に染まった。



 閃光の嵐。

 剣と剣がぶつかる音が、雷鳴のように空を裂く。


 Mioが一撃を放つ。Λは軽々と受け止める。

 Seraが後方から連撃を放つ。Λは一瞬の身の捌きで全弾を避ける。


 「クソッ、速すぎる!」

 「Sera、距離を取れ! ――《アーツ・モード:ブレイクコード》起動!!」


 Mioの体から蒼白い光が噴き上がる。

 システム制限を越える“危険モード”。

 使用すればアバターが崩壊するリスクがある。


 「制限解除。速度300%、反応補正限界突破――!」


 Λの目がわずかに細められた。

 「……それが、お前の選択か。」


 「そうだ――! 命なんて、この世界にねぇ!

  だからこそ、命を懸けられるんだよッ!!」


 雷光が塔を貫く。

 Mioの剣がΛに迫る――初めて、彼の頬に浅い傷を刻んだ。


 Λの表情が、初めて“笑った”。

 「――面白い。」


 黒い翼が広がる。

 「ならば、俺も本気を出そう。」


 塔の空が一瞬で闇に染まる。

 Λの剣が空間を断ち切ると、世界そのものが裏返った。

 床も重力も、存在すら崩壊していく。


 「《ワールド・オーバーライド》発動。」


 それは、世界を書き換える権限――神のスキル。


 「クソッ……! Sera、掴まれ!」

 「わかってる!!」


 二人が同時に跳び、空中で手を掴み合う。

 Seraが叫ぶ。

 「まだ終わらない! Mio、行くよ――!」


 「おう!」


 リンク・シフト再起動。

 蒼と紅、二つの光が交差し、一つの巨大な剣を形成する。


 《デュアルアーツ:ゼロ・リアライザー》


 Λが構える。

 「来い、無限を越えたその先を――俺が受け止めてやる。」


 MioとSeraが同時に叫ぶ。

 「――うおおおおおおおッ!!!」


 閃光。

 音すら消える。


 蒼と黒の衝突が、塔そのものを粉砕した。

 光の粒子が空へ舞い、世界が一瞬だけ“無音”になる。



 ――光が収まったとき、Λは膝をついていた。

 その周囲の空間は崩壊し、データの残滓が雨のように降り注ぐ。


 「……まさか、ここまでとは。」


 MioとSeraは肩で息をしながら、剣を下ろした。

 Mioのアバターの右腕は崩れかけている。

 「ハァ……ハァ……これで、終わりか?」


 Λがわずかに笑う。

 「いや――ここからだ。」


 その瞬間、Λの背後の虚空に“もう一つの影”が現れた。

 輪郭も、形も曖昧。

 ただ一つ、明確にわかる――あれはΛではない。


 「……なんだ、あれは……?」

 Seraが息を呑む。


 Λの目が細められた。

 「俺が作った“世界”を喰う、もう一人の……俺だ。」


 新たな脅威の出現。

 終わらぬ戦いの始まりを告げる、低い轟音が世界を震わせた。


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