終章 墓参り
美月と雪乃が出会ってから、およそ1年が過ぎた。美月は、雪乃と出会ってから和真に襲われるまでの記憶は戻っていない。しかし、雪乃に対してぎこちない態度をとることはなくなり、同居を続けていた。
お盆休みのある日。美月のスマホに雪乃から連絡があった。雪乃は実家に帰省している。
「母が、3人で父のお墓参りに行こうって行ってるんだけど、どうかな?去年、その話をしたことを覚えていて、父とお姉ちゃんを会わせたいみたい。」
2人の父である雅人は、ガンで亡くなっていると雪乃から聞いていた。美月は覚えていないが、雪乃の母と会ったときに彼女が「来年のお盆は3人で墓参りに行こう」と提案したらしい。
「誘ってくれてありがとう。私もお父さんに挨拶したい。」
「そうだよね。明日でもいい?」
「特に予定はないから、大丈夫だよ。」
「分かった。私の実家に集合でいい?母が車で連れていってくれるって。」
そう言って、雪乃は実家の住所を送ってきた。
「ありがとう。紫乃さんにもお礼伝えといてね。」
「うん、伝えとくね。」
雪乃の返事を聞いて、美月は電話を切った。
翌日、美月は雪乃の家に向かった。インターホンを鳴らすと、紫乃と雪乃が出迎えてくれた。
「お姉ちゃん、いらっしゃい。」
「美月さん、久しぶりね。」
「紫乃さん、ご無沙汰してます。」
簡単に挨拶をしたあと、3人は雅人の墓がある霊園に向かった。
霊園に向かう車内で主にしゃべっていたのは紫乃だった。
「去年、美月さんがうちを訪ねてきたときは本当に驚いたわ~。雅人さんに雪乃以外に子供がいるなんて信じられなかったけど、あまりにもそっくりだったから疑いようもなくて。しかも、いつの間にか雪乃と同居してるでしょ?もうびっくりしちゃったわ~。」
コロコロ笑いながら紫乃は話し続けた。母の真由美の手紙を頼りに紫乃の家を訪ねたあとすぐに雪乃に会ったため、美月はその事を覚えていない。さらに、紫乃には記憶喪失になったことを伝えていなかった。よって、美月はあいまいに笑うしかなかった。
その後、紫乃が雅人との馴れ初めや人柄などを話しているうちに霊園に到着した。
雅人の墓は、緑豊かな霊園の一角にあった。3人で墓を掃除して花を活け、最後に手を合わせた。
(お父さん、初めまして。真由美の娘の美月です。来るのが遅くなってごめんなさい。)
美月は心の中で雅人に語りかけた。次の瞬間、美月の知らない記憶が走馬灯のようなに頭の中に浮かんできた。その中で、美月は雪乃と警察署から出てきて並んで歩いている。また、2人で部屋を片付けたり、見覚えのあるリサイクルショップにいる。すぐに美月は失っていた記憶だと分かり、興奮して叫んでいた。
「雪乃、記憶が戻った!」
隣で手を合わせていた雪乃は目を見開いた。
「お姉ちゃん、本当に!?」
「うん、全部思い出した!」
「記憶が戻ったって、どういうこと?」
事情を知らない紫乃は怪訝な表情をしている。興奮が冷めやらない美月の代わりに、雪乃が手短に説明する。最後には、3人で抱き合って喜びを分かち合ったのだった。
これで完結になります!最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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