10.紫乃の訪問
そして向かえた日曜日。紫乃がやって来た。
「美月さん、久しぶりですね。雪乃、元気にしてた?」
「紫乃さん、お久しぶりです。」
「お母さんも元気そうで良かった。」
美月は紫乃を家の中に案内し、3人分のお茶と紫乃が持参したお茶菓子を出す。
「雪乃がこの家でお世話になっているそうですね。」
紫乃がそう切り出した。
「うん。実は、大学時代に付き合っていた元彼にストーカーされてたの。初めはメッセージとか電話だったんだけど、お姉ちゃんと初めて会ったときに監視されてるようなメッセージが来て、怖くなって。お姉ちゃんに相談したら、警察に相談しに行くのに付いてきてくれたり、同居しようって提案してくれて本当に助かってる。」
雪乃がスマホの画面を見せながら説明する。そこには和真からのストーカーの証拠のスクリーンショットが写っていた。
雪乃の話を聞き、紫乃は動揺を落ち着けるためにお茶を飲む。
「美月さんにお世話にならなくても、うちに帰ってくれば良かったのに。」
「和真はうちの場所知ってるから。和真の知らないところに行きたかったの。」
「そう。警察は何か対応してくれたの?」
「ストーカー規制法に基づいて警告を出してくれた。ストーカーがまだ続くようだったら、接近禁止命令に切り替えてくれるって。あと、防犯ブザー携帯するようにアドバイスしてくれて、さっそく買ったよ。」
「そうだったの。美月さん、本当にありがとう。あなたがいなかったら、今頃雪乃がどうなっていたか分からないわ。」
そういって紫乃は深々と頭を下げた。
「それで、雪乃は迷惑を掛けてないかしら?」
「そんなことないです。ちゃんと家賃や水道光熱費としてお金を入れてもらってますし、家事もやってもらっています。それに、お昼のお弁当も作ってもらっているんです。今まではコンビニとかで買っていたので、経済的にも栄養バランス的にも助かってます。」
「なら良かったわ。これからも雪乃をよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
その後、3人で普段の生活などについて談笑していると、紫乃が思い付いたように話し出した。
「そういえば、美月さんは雅人さんのことを最近知ったわけだから、あの人のお墓に行ったことないってことよね?」
「そうですね。」
「それじゃあ、今年のお盆は終わってしまったけれど、来年のお盆は3人で行きましょう!あ、真由美さんのお墓にもご挨拶させてちょうだいね。雪乃にとって、こんな素敵なお姉ちゃんに育てていただいてありがとうございますってお礼しなきゃ。」
「はい、ありがとうございます。母も喜びます。」
「お母さん、その前にお仏壇にご挨拶!」
「あらやだ、美月さんはうちに来たときにちゃんとしてくれたのに、私ったら!」
3人で笑いながら、美月は幸せを噛み締めていた。




