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ドクター・パラドックス  作者: たかなしコとり
前編

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第7話 後輩

医者ってほどでもないんだけど。

足にさっきの手錠をつけられて、鎖でベッドの手すりにつながれる。結構な長さがあるので、隣のトイレまで届きそうだ。よかった。


クーガが出て行った後、医務室の備品を確認したら、驚きの発見があった。

用法なんかを書いてあるラベルに使われている言葉、何となく分かる。所々妙な文字になっているが、いくつか単語を拾い読みできる。

消毒薬。麻酔薬。滅菌ガーゼ。注射器。サージカルテープ。ステープラー。あとは解熱剤。抗生物質。

しかし消耗品は種類も量も少ない。手袋とか綿棒とか。基本的なところはもう少し欲しい。あと、造血剤とか点滴パックとか。

ペンとメモ用紙っぽい紙があったので、欲しい物を書きつける。


暇になったのでベッドに座ると、急激に眠気が来た。とにかく留置所のベッドがひどすぎてよく眠れなかった。

とりあえず、寝る。

夢を見た。アイリィが出てきた。

大学の理学部の後輩で、ゼミの中で一番華奢な子だった。笑顔が優しい。

物静かで、友達とつるんでいるのをあまり見ない。


よく重そうな備品を運んだりしているので、つい手を貸したくなるが、それが他の女子には気に食わないらしい。

「なんであの子だけ、手助けするのよ!」

と、よく言われた。

いやいや。なんでって言われても。

女の子にやさしくするのはデフォルトだろ。それに男がみんなチアガールみたいなボンキュッボンの元気な女の子を好きだと思ったら大間違いだ。手助けしたい相手を選ぶ権利はあるはずだ。


俺はとにかく、アイリィのあのはにかむような笑顔が大好きなんだ。見ているとこっちも幸せな気分になる。

それに意外にタフだ。友達がいなくても平気だし、不思議に周りと仲良くなっているし。


付き合って二年になるが、その間デートに行けたのは3回ぐらいだ。二回目で何とかキスまで持ち込んだが、それ止まり。お互いに忙しい。去年俺が大学を卒業したら、ほぼ画面越しでしか会えなくなった。

夢の中の彼女は、にこにこと俺とのデートを楽しんでいた。でも服はいつも着ている実験用の白衣だった。


ドン、と音がして目が覚めた。せっかくいい夢だったのに。もったいない。

何かと思ったら、髭のおっさんにベッドの足を蹴られていた。


「おい、おめぇ医者なんだって?ちょっと見てくれよ。」

「は、へ、あ、了解・・。」

差し出された剛毛の腕に、大きな切り傷が出来ている。しかし浅い。あと打ち身らしい青あざ。大騒ぎするほどではない。

「止血テープがないから、仕方ねぇ。任せる。」

えらそうなおっさんの腕に、麻酔薬を塗って、極小のステープラーを打ち込む。


「補給とかないんすかね?」

「明日来る予定だ。今のうちにフィーンに言っておけば、追加してもらえるかもしれないぜぇ。」

おっと。早く言ってほしい。さっきのメモ用紙を見せる。おっさんは顔をしかめた。

「分かんねぇ。直接フィーンに言え。」


その後クーガが入ってきて、そのメモをのぞいた。

「あー、よく分かんねぇけど、それ医療品だろ。誰も扱えねぇよ。」

「いや、点滴とか必要だろ。」

俺が抗弁すると、クーガは頭を掻きながら

「んー。ま、一応言っとくけどさ。お前は今から、俺が送っていくから。仕度しろよ。」


え!送って行くって、俺がいた、あの荒野のど真ん中に?

「場所・・分かるのか?」

「ユーリィに聞いた。AMFに履歴が残ってるから、それで行けるってさ。」


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