微睡む君に夢を侍る
花冠に飾られた君を、いつもと同じように少し離れたところから見つめる事しか私にはできないのだろう。
白いベールで覆われたその表情は穏やかな表情をしているのだろう。
「何も見えやしないな」
誰よりも後ろの席で参列しているからなのか、どうしようもなく滲み出る液体が視界を滲ませているからなのか。
純白のドレスに身を包んだ君は、この世界と隔絶されたような存在感を醸し出していた。
どうしようもなく、どうしようもない私はどうしようもなく、そんな君を見ているだけで心に大きな穴が空いたような感覚に陥った。
「なぁ、君にとって俺は良い人でしたか」
声にならないほどのか細い声が溜息と共に漏れ出した。君の周りを囲んでいる人々の背を眺めては、コレは本当は夢なんじゃないだろうかと受け入れずに自らに問い掛けていた。
現実なんだろうな、間に合わなかった私は夢であってほしいと願って、願っては非常な現実を思い知り、息が出来ないような焦燥感が喉を、胸を締めつけた。
君は今、微睡みの中に夢を見ているのだろうか。
幸せな夢を見れているのだろうか、その表情を窺い知る事は私にはできない。怖かった、君のその表情を知ってしまう事で私の想いが、飽和した思いが泡沫してしまう事が。
本当は今言うのは卑怯なのは分かっていた。
だけど、だからこそ、最後に私のこの夢を終わらせる為に言わせてほしい。
「君が私の生きる意味、全てだったよ」
ここから先は君は微睡み微笑み、私は私の世界から煙のように溶けて消える君を思うだろう。
微睡から覚めた、頃。
君は、どうだろうか。
私を忘却の彼方へ連れ去ってくれたのだろうか。
さよならの時間が、今。