1.真骨頂
あの馬鹿な人たちは僕の力をわかっていない。まあ、品性に欠けるっていうのは同意するけどね。
ギャオオス!
突如草むらから現れたのはハイゴブリン。危険度B級の魔物だ。
「ちょっと今落ち込んでるんだ。邪魔しないでくれる?『布団が吹っ飛んだ』」
よく街中でも聞こえてくるギャグの代表格の『布団が吹っ飛んだ』だが、オルトが魔力を込めて言うだけで、爆発が起こる。
「『爆発』」
そして煙が舞う。煙が晴れた先には、何も残っていなかった。
「はあ、流石にオーバーキルかな?ただの『爆発』に使う魔力なのに、祝詞で詠唱するだけで、上位魔術の『橙ノ爆撃』になるんだから。」
そう。今のオルトの言葉を聞けばわかるように、本来使うはずの魔力量より少ない魔力で魔術を使えるということである。
「さて、じゃあ気ままに森でも歩きますか。」
「はあ、でも国王陛下に断りだけでも入れてから国を出れば良かったかな〜。たぶんバッカデーイじゃ僕の代わりを務めれないだろうし。」
その次の瞬間黒ずくめの人間がナイフを持ってオルトに襲いかかる。
「シッ!」
ブンッ!
それを紙一重でかわす。
「あいつに何を吹き込まれたのか知らないけど、僕もともと魔導剣士で冒険者に登録してるから接近戦できるよ。」
「なっ!あれを交わすとはどういうことだ!」
「僕はさ、最初このジョブを大したことがないから、接近戦を鍛えたんだ。普通にランクも高いから覚悟してよね?」
「クソッ!『身体強化』!」
男が黒色の道具を取り出して、使用する。
「なるほど、身体強化の魔道具か。これで誰が依頼したのかはわかったね。それにしても舐めたことしてくれるじゃないか。僕は君たちみたいに宮仕えで魔術しか使ってこなかった温室育ちのボンボンとは違ってね。」
「何をぶつぶつ言っている!喰らえ!」
「『いくらはいくら?』」
オルトがだじゃれを言った瞬間、水が舞い込む。
「何っ!」
「飲み込まれな。『水龍』」
水が龍になり、男を飲み込む。
「はい、終わり。さて、ほんと我ながらこの戦い方がダサいよね〜」
と、何事もなかったかのように暗殺者を一掃したオルト。だがしかし、オルトを襲撃した男はムノー第二王子お抱えの暗殺者集団。『影の狼』。全員が暗殺のエリートで、生半可に倒せる相手ではない。その構成員である人間を軽々と倒した。その知らせを追放した彼らが聞くとどう思うのだろうか?
「よし、じゃあこのまま街を目指しますか。おっと、こいつの処理どうしよ。」
このまま放置しては再度襲われる可能性や、依頼人に情報を漏らす可能性がある。
「よし、じゃあ、このまま放置しておこうか。ここに魔物の好きな臭いが発せられるお香を置いて。」
このあと男がどうなったかは想像にお任せする。だが楽な未来が待っているはずがないだろう。
「オルト強すぎだろ」
「暗殺者の人可哀想」
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