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中毒患者IQ2000~転生したのは知能指数に基礎魔力量が比例する世界でした~  作者: 茉瀬 薫
Ⅰⅰ 平穏(?)な転生

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2.ここはどこ?あなたはだれ?

―――あれ?


目を開いたわたしは、思わず首を傾げてしまった。

さっき寝たときは、生後二日の、視界がぼんやりとした赤ちゃんだったはずなのに。


はっきりとした視界に映るのは、澄み切った夜空に浮かぶ満天の星と繊月。

どう考えても赤ちゃんのものではない体を起こしてみれば、母なる大地を体現しているかのような美しい野に横たわっていたことがわかる。


……でも、おかしいのはそこじゃないんだよ。


地面は色彩鮮やかな砂や石、岩などにおおわれている。

宝石かもしれないけど、たしかめる方法が……と思った瞬間、目の前に浮かんだのは実験器具。

検出された結果から、やはり宝石だったことが判明。

しかも、地球上にある宝石のみならず、鉱石や、果ては未知の鉱物まであった。

これは明らかに新種だよ。

わたしのデータベースにないもん。

まぁ、異世界のものか、未発見、もしくは違う時代の地球のものかはわからないんだけど。


研究、楽しすぎる!

あぁ、わたしのエデン(楽園)、我が愛しの研究よ!

―――あいかわらず、私は研究中毒だったよ……やっぱり……。


宝石の間をぬって生える植物――自然法則やらなんやらを完全無視してる。栄養とか水は、一体どこにあるの?――は、無数のエリアに分かれているみたいだ。

地球の植物のみならず、未知の植物や絶対に異世界のものだとわかる植物――言い伝え上の(叫ぶ)マンドラゴラみたいなのとか――まである。


……じゅるり。研究したいよ〜。

研究者魂がうずいてくるんだよ。


「アンナマリーア・エヴァ・マーガレット・イルメンガルト・レ・ローズモンディット=ル・メゲッティンブルク。」


あの、意味不明なワードが聞こえる。

って、誰が話してるの?


鷹司聖枝(たかつかさ きよえ)。」


今度は前世の名前が呼ばれた。

同時に、目の前に白い光が集まってきて、人型を形作っていく。

ある瞬間に一気に光が強まり、視界が真っ白に染まった。


「こんにちは。いえ、あなたにとっては初めましてかしら、聖枝。」


大きく目を見開いて固まっているわたしを見てくすりと笑った女性は、さっきまで人型が煌々と輝いていたところにいる。

淡く光る彼女を例えるならば、月が一番近いと思う。

影のある、この世のものとは思えないほど美しい(かんばせ)


「聖枝、あなたも人のことは言えないでしょう。」


わたしは前世で美容やファッションどころか日常生活までむとんちゃくであったが、顔だけは良かった……と彼女は言いたいらしい。


う〜ん……。


でも、考えてみて欲しい。わたしはたしかに平均くらいの顔はあったと思う。

恋愛的な意味で好きだと言われたこともそれなりにあったし、それなりに怖い思い(内容はご想像にお任せします)もした。


けど、社会人になって研究所に入ってからは徹夜は当たり前、食事抜きも当たり前という乱れに乱れた生活――奮闘してくれる助手が入ってからは少しましになったけど――で、見る目もあてられなかったと思う。

それにほら、顔なんて結局年をとるとともに変わるもんだし。


「美しい人は年をとっても美しいものよ。」


はぁ、そうですか。

でも、悪魔(研究)(人生)売った(捧げた)わたしには関係ないですよ〜。

それに、死んじゃったし。


「そのことについてなんだけど……。」


―――あれ?

ちょっと待って。

今、やっと気づいたけど、なんでわたしがなにも話してないのに会話成立してるの?

もしかして、思考読めるの?


「読めますよ。正確に言うと、あなたが亡くなってから半年後くらいに発表された、脳を循環する血液の動きや微弱な電流を流した際の抵抗、反応、波動などを利用した、思考を記号化して読み解く方法を使いました。」


……ん?

なんか、覚えが……。


それ、わたしが研究したあと、書きためて、爆発してないほうの研究室の隅でホコリを被ってごみと化していた、山積みの論文の中になかったっけ?

それに、なんで過去形なの?


「論文は遺品整理の際に発見されて、ほか数百の論文とともに助手達によってあなたの名前で発表されたのよ。結果、あなたの名前は知らない人はいないほど有名になり、食糧難や医薬品不足で苦しんでいた人々に新たな解決策を示し、人口の増加で地球の土地が足りなくなるだろうと予想されていたことに対する解決策―――他の惑星で快適に過ごすための環境整備についてや、“瞬間移動”や“超能力”の原理だとか、時空や次元などについてだとか、ともかく文明水準全般を一気に500年くらい進めたのよ。あなたによって助けられた人々には救世主だとか崇められて、まぁ数十年後にはかなり大きな宗教になってたし、100年くらいあとには世界最大の宗教になってたわ。二つ名は生前の“科学の天才”から“史上最高の研究者”、“地球の救世主”、“全知全能の天才研究者”って変化していき、いつの間にかあなたが秘匿していたIQは世界中の人に知れ渡っていたわよ。あなたのことをどれだけ知っているか自慢し合うのが世界中の人々の習慣やステータスになって―――」


そ、そこまで!

ストップ!

……ぜぇはぁ。

マシンガントーク、威力すごい。

っていうか、途中経過の未完成品についても一応記録としてまとめておこうという考えで書いた、理想としてかかげている研究結果と現在の研究結果の隔離についての考察なども含んだ論文が、そんなことになっていたなんて。


情報過多。

完全に、情報過多だよ。


っていうか、さっきからなんでそんな過去のことを語るような口調なんだろ?

答えてもらってないよ。


「あら、わたくしとしたことが。―――申し遅れたわね。」


彼女は居住まいを正し、にっこりと微笑む。


「わたくし、すべてを創った女神、アリアフィディーナといいます。この世の時間は全てわたくしの手の中を動いてゆくのよ。知識も同様に。」


……はい?

25,5,2024

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