第14話 星のかけらの使い道
「ディーさん、ありがとうございます。どうなることかと思いました」
「お兄ちゃんが来てくれて助かったわ。でも、あんな方法で黄泉に送るなんてやり方があったのね」
異世界転生できると思い込ませて黄泉に送るなんて、騙したようなものだが、ギリギリ規定には違反していない。一つもウソをついていないのだから。
「嘘は一つも付かなかった。ただ転生までに幾千年かかるだけで」
「あの男がバカだにゃ。自分で望んで第八へ行くにゃんて」
「小物のくせに、大物の罪をかぶって黄泉に渡るなんてね」
「マリー、そのように馬鹿にしてはいけないよ。お前のミスのせいであの男は自分の罪よりも重い物を背負ってしまったのだ。いくら善良な魂ではなかったとはいえ、お前の責任だよ。せめて試練を無事に終えて転生を果たせるように願ってやれ」
ディーに注意されて、マリーはしょんぼりと肩を落とした。
「ごめんなさい」
「わかればいい。さあ、今度は黄泉に渡ってしまった転生者を探し出して、異世界転生の希望があるか確認しなければならないぞ。俺とクロがサポートするから、ネロとマリーで黄泉へ行って来い」
「「はい」」
「今度はうまくやれよ。それと、他の魂の前で異世界転生の話をするんじゃないぞ。みんな飛びついてくるぞ」
「気を付けます!」
その後、ネロとマリーは無事に転生者を連れて帰って来ることができた。まだ三途の川を渡る手前だったようだ。一度にたくさんの魂が天に昇ったので、行き先審査に時間がかかったのが幸いしたようだ。
無事に異世界転生をさせて、ラダの執務室に戻って来た四人にラダは温かい微笑みを向けた。
「ご苦労様でした。ディー、よい手並みでしたね。腕をあげました」
「ありがとうございます」
「三途の川の審査官よりお礼の言葉が届いていましたよ」
「審査官からですか?」
「ええ、一人分の審査をこちらで代行したので、助かったそうです。かなり忙しかったようですね。ディーとクロには星のかけらを二つあげましょう。さあ、受け取りなさい」
「ありがとうございます」
「やったにゃ」
キラキラと輝く星のかけらを受け取り、みんなで部屋の外へ出た。
「ディーさん、クロさん、今日は本当にありがとうございました」
「いいってことにゃ」
「気にするな。マリーが迷惑をかけたな」
謙虚なネロは慌てて両手を振り否定する。
「いえいえいえ、自分のフォローが足りなかったんです」
「ネロさん、ごめんなさい。私が不注意でした。もうこんなことがないように気を付けます」
「自分も力不足ですみません。先輩として恥ずかしいです。まだまだ未熟者ですみません。一緒に頑張りましょう」
「はい!」
クロ、ネロと別れ、兄弟は二人で住み始めたアパルトメントへ入って行く。もといた部屋では手狭だったので、こちらへ引っ越したのだ。
二人は星のかけらを集めている瓶のふたを開け、今日の収穫を入れた。
耳に心地よい、やや高めの鈴の音のようなチリリンという音を立てて、星のかけらが瓶におさまった。どこか懐かしい思い出を喚起させる、切ない音だ。
「本当にきれいね」
「・・・ああ」
それが音のことなのか、見た目のことなのかは、ディーにはわからなかったが、どちらもきれいなことに間違いない。
「…本当にいいの?お兄ちゃんが頑張ってためてきたのに」
「かまわないさ。今まで願いなどなかったんだから。星のかけらがたまったら、二人でばあちゃんのところへ転生させてもらおう」
兄妹は星のかけらの使い道を話し合い、ミランダが聖女として転生したゼウス世界に二人とも転生させてもらうことに決めた。ミランダはもう老婆でも魔女でもない。だから後から転生してきた兄妹と、どんな関係でつながれるのか、ミランダが二人を見てどんな顔をするのか、楽しみで仕方ない。
「うん!」
マリーは嬉しそうに、星のかけらの入った瓶を眺めた。その姿を見守るディーの口元に、小さな笑みが浮かんだ。
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