終わりの始まり③
茅野さんとの飲み会は、伝嘘の制作状況や、今後の展開などの仕事関の話をし、早くも1時間を過ぎ、俺は少し酔いが回ってきた。すると茅野さんが突然、『少し、変な事聞いてもいいかな?…』と言ってきた「なんですか?」
『白石くんは、今彼女とかいるの?』 「なんですか突然?、いないですよw」俺は茅野さんが突然可笑しな事を聞くのでつい笑ってしまった。すると、
『じゃあさ、私と…付き合ってよ…』
それは一瞬の出来事だった、ドリクラの社員はもちろん、俺もずっと憧れていたあの茅野さんが、俺に告白をしてきた!?「え?ちょっと…どうしたんですか?急に、あ、飲み過ぎたんですねwダメですよ後輩をからかっちゃ」俺はなんとか話をそらそうとした、すると
『冗談なんかじゃない!!』
居酒屋中に響いたその声は、隣で大宴会をしていた集団をも黙らせ、その場の全員がこちらに視線を向けた。
「え?…ちょっと、そろそろ出ましょうか、ね?あ、すいませーん、お会計で」俺は半ば強引に会計を済ませ、茅野さんと店を出た。
「えっと、その…さっきのはいったい?」しばらくの沈黙が続き、『そのまんまの意味だよ、ごめんね、急に大声出しちゃって、ビックリしたよね?』「いえ、あの、少し歩きましょうか」俺達は居酒屋を出てすぐの海岸沿いの砂浜を少し歩いた。
『実は、私さ、今度、付き合ってる彼と結婚するの…』それは唐突に茅野さんの口から告げられた。
「へ、ヘー、そーなんですね、おめでとうございます。」
俺は内心よく祝えなかった、なぜならさっき告白してきたばかりなのに、俺の見ず知らずの男と、急に結婚するとか言ってきたのだ、無理もない、そもそも茅野さんに恋人がいたのも初耳だ、俺は少しガッカリした。
『私の彼ね、ルポライターをしてて、今度海外に取材に行くらしいの、それでね私にも一緒に来てほしいんだって、そこで家でも買って『一緒に住もう』って。』
『そもそも私達ってお見合いで知り合って、両親が勝手に結婚まで決めて、海外に行くのにも大賛成してくれて、その分の祝い金として向こうのご両親からも大金をいただいて、だから逆らえなくて、どうしようか迷っていたの。』
どうもそーゆう事らしい。
『一緒に着いていく場合、私はこの会社を、大好きなアニメ制作の仕事を辞めないといけないの…だけど彼を好きな気持ちもあるの。』
「そうだったんですか」茅野さんの気持ちを分かったような言い方をしたが、実際は何も分かっていない、いや、分かりたくもない、憧れていた茅野さんが遠くに行ってしまう、その気持ちが邪魔をして、俺の思考回路をぐちゃぐちゃにした。
『だからね、どうにかして行かなくて良い方法を探していたら、白石くん、あなたの事が頭に浮かんできたの。私には好きな人がいて、付き合ってるの。って、彼やご両親に相談したら、このお見合いはなかった事になんじゃないかなって。だから私の彼氏になってほしかったの』
そんな複雑な事情があったのか、俺はしばらく考えた。