終わりの始まり①
朝6時、いつも通り目覚ましで目が覚め、布団でアニメを2、3本見る、7時になったら布団を片付け、歯を磨き朝食を食べ、コーヒーを飲みながら、テレビで天気予報とニュースをチェックする俺、白石天斗25歳
『続いてのニュースです、今日で建国20周年目となる【バハザール国】では、建国記念日の式典が開催されています、バハザール国は、数多の可能性を秘める孤児の未来を守る為に、世界中のあらゆる孤児院の施設を一括に統一した国で、建国者である、アルバ・バハザール皇帝の指揮の元、孤児達を保護し、輝かしい未来を与えてあげる目的で設立された国です、式典のあとは、今日と明日の2日間に渡り、建国祭が行われる予定との事です、それでは次はお天気情報です。』
などと、テレビのニュースの内容を聞きながら、俺は支度をする、仏壇に置いてある、母さんと父さんの遺影に手を合わせ、「行ってきます」と言い、8時に家を出て仕事に向かう、そんな日々のルーティーンを欠かさず、平凡な毎日を送っている俺は、今日も誰かに届けるため、大好きなアニメを作りに行く。
何気にこの歳で独身、彼女いない歴=年齢の俺は、独り身なのが最近のコンプレックスだ、中学や高校の時の友達や、会社の同僚のほとんどが結婚し、子供もいる。そんな俺のまわりは幸せムードな連中でいっぱい、だからコンプレックスなのだ。
しかしそんな俺でも、女の子とは完全に無縁なわけではない、そもそも俺がアニメを好きになったのは、ある女の子との出会いがきっかけだった、それが、俺が7歳の頃、家の隣に[東玲那]という同い年の女の子が引っ越してきた、俺は母さんに連れられて、東家に挨拶しに行った、そしてしばらくもしないうちに、玲那とは唯一の女の子友達として、仲良くなった。
しかし、玲那は昔から体が弱く、常に家で寝たきりの生活で、立つ事はできるものの、歩く事は難しい。だから学校にも行けない玲那を元気づけるために、俺は放課後、掃除や友達との約束をすっぽかして、毎日すぐ家に帰っては、隣の玲那の家に遊びに行った。玲那は毎日俺が来るのを楽しみにしてくれていて、俺がその日学校であった出来事を話すと、楽しそうに笑いながら聴いてくれた。
俺と玲那の繋がりはそんな日常的な会話をするだけではない、俺達には共通の趣味があった、それがアニメだ、玲那は家ではほとんどベッドで寝たきりなので、玲那の母親が『気分転換にアニメでも見たら?』と玲那に勧めた、すると玲那はすぐにアニメにハマり、遊びに行く度に、俺におすすめのアニメをよく紹介してくれた、それがキッカケで、俺もアニメを好きになり、2人してよくアニメを観ていた、『将来は2人でアニメの制作会社で働こうよ』と玲那と将来の夢についても話した事があった、その頃には俺達は14歳になり、俺は中学2年の秋を過ごしていた。
そんなある日、玲那はかなり大きな手術をしに、海外への引っ越しをする事を母さんが伝えてくれた、海外へは玲那の父親の仕事の転勤も兼ねていたそうだ、寂しい気持ちでいっぱいだったけど、その手術が最高すれば、玲那は自由に歩いたり走ったりできるという事を知った俺は、玲那の肩を推してやりたいと思った、しかし少し照れ臭かった俺は、(行ってほしくない)という気持ちが邪魔をし、その思いを上手く言葉にする事は出来なく、「勝手に行けばいいだろう」と玲那に対してキツくあたってしまい、その結果大喧嘩、それからは玲那とは一切口を聞かなく、そして2ヶ月ほど月日が過ぎ、母さんだけが空港まで見送りに行き、玲那の家族は、クリスマスを迎える日本を旅立った。
玲那がその後どうなったのかは分からない、手紙のやり取りをしていなければ、連絡先を知っているわけでもない、玲那が日本を旅立ったのが俺達が15歳の時だから、約10年は経過している、ならもう俺の事なんて忘れているか、今になってなんであんな別れ方しか出来なかったのだろうと思い返しながら、俺は車のキーを差し込み、エンジンを付け、会社に向かう、俺の家から会社までは車で約20分のところにある、今日は何かと渋滞に巻き込まれ、30分してようやく俺は仕事場に着いた。