8.火の国シャ・パクダ
『火の国シャ・バクダ』
この国は200年前に既に滅んだ国だ
その名だけ現在でも残り、点在するオアシス群の最も東に位置するこの場所がそう言われて居るだけだ
国としてはもう存在しておらず血統の良い家系の者が領主を名乗りセントラルの自治領と言う形になっていた
沙漠や荒野には当時繫栄したシャ・バクダ王朝の遺跡が多く残されて居り
まだ莫大な財宝が眠って居る事から探検家や研究者が集う様になり現在に至って居る
ワイワイ ガヤガヤ
おひかえなすって…入りやす カラカラ
半か丁か!…半!半!丁!……
ぐぁぁぁぁ!!いかさましやがってぇぇ!!
商隊の終点にあたるこの町は意外に過ごしやすく貴族達が好んで別荘を持つリゾート地でもあった
だから街道にはいくつもの露店が並びセントラル並みの賑わいが有る
剣士「あんなところに馬車置いていくの?」
女海賊「いーのいーの!あんな馬車もう要らないよ…馬だけ宿に預ける」
剣士「荷物も載せっぱなしだよ」
女海賊「大事な物何も無いじゃん…もう良いって…要らないから」
剣士「人も多くて…なんか不安だなぁ」クンクン
女海賊「馬引いてる人にわざわざぶつかって来る奴なんか居ないよ!手綱離すんじゃないよ!」
剣士がそう感じるのも無理はない
簡単なテントの奥では麻薬に興じる者や娼婦と絡み合う者…博打で賭け事をする者
剣士にとって初めて感じる物ばかりだからだ
剣士「ん?なんだろう…この音」ドドド
女エルフ「ラクダの匂いね…」
女海賊「あ~ラクダレースだね…オアシスの向こう側でやってんだよ」
剣士「へぇ…」
女海賊「お金持ちがレースで賭け事やってんのさ…私は臭いから近寄りたくない」
剣士「セントラルと違って色々あるんだね」
女海賊「2~3日ゆっくりするから行ってみたら?私は興味ないからパス」
女エルフ「行き交う人が私から目をそらすのはなぜ?」
女海賊「ニカーブを身に着けて居る人と目が合っちゃダメなんだ…あんたを隠すのに丁度良いって訳」
女エルフ「人間の町にはそんなルールがあるのね…」
女海賊「おっし着いた!ここの宿屋だよ…馬は裏で預けるからちょい待ってて」
『宿屋』
レンガと土で作られたその建物は相当歴史の古い建造物だ
恐らくシャ・バクダ王朝時代から残って居る遺跡に近い物だろう
建屋の中は外と違ってかなり涼しく休息するには最適の場所だ
店主「いらっしゃいませ…3名様ですか?」
女海賊「大部屋空いてる?しばらく泊まりたいんだけど」ジャラリ
女海賊はカウンターに貴族の身分証と持って居る金貨を置いた
店主は上目遣いでチラリと女海賊の顔を確認する
店主「何日程泊まられますか?」
女海賊「この金貨で泊まれるだけ…用が済んだら勝手に居なくなるから先払いで良いよ」
店主「ええと…この金貨ですと半月ほど泊まれますが…」
女海賊「良いよ…後さぁコブラ酒と赤ワイン持ってきて」
店主「…のちほど」ジロリ
店主は金貨を数えながら女海賊へ視線を配る
女海賊「案内して?」
店主「こちらへどうぞ」ジロジロ
女海賊「あぁ忘れてたグラスはタンブラー3つ」
店主「かしこまりました」
女海賊「この部屋だっけ?」
店主「はい…お飲み物は少し遅くなるかもしれません」
女海賊「おけおけ」
店主「ごゆっくり…」ガチャリ バタン
店主が部屋を後にするなり女海賊はベッドに倒れ込んだ
女海賊「はぁぁぁぁぁ無事付いたぁぁぁぁ」ドタリ
剣士「お酒飲むの?」
女海賊「さっきのは合図だよ…3人案内しろっていう意味」
剣士「どうしてそんな風に?」
女海賊「盗賊ギルドってさ…早い話秘密結社なのさ…だから私も今のアジトが何処なのか知らないんだよ」
剣士「それで暗号みたいな合図で呼ぶんだ…」
女海賊「そうそう…その内向こうから来るよ」
剣士「なるほど…」
女海賊「もう自由にしてて良いよ!水浴びしたいなら隣の部屋で出来るから!私は寝る」
剣士「外に出ても?」
女海賊「おっけ…女エルフは二カーブ脱がない条件で好きに出回って良いよ」
女エルフ「え…人間の町を歩き回るの不安…又掴まってしまいそうで…」
女海賊「剣士!あんたが付いて行きな!てか…何かあってもどうせ行先は盗賊ギルドなんだけどね…」
剣士「お金が欲しい」
女海賊「あぁ忘れてたホイ!」ジャラジャラ
女海賊は色んな所に金貨を隠して居た
剣士「ありがとう」
女海賊「私はちょい横になる…てかあんたぁ!夜までには帰って来るんだよ!」
剣士「うん大丈夫…ペットの役割は果たすよ」
女海賊「分かってりゃ良いんだ…はい行った行った!!」
『街道』
剣士は女海賊から十分すぎる程金貨を貰っていた
その金貨を使って女エルフの装備品を新調し魔法用の触媒も買った…もちろん女海賊のお土産もだ
ワイワイ ガヤガヤ
女エルフ(あなた…人間の町に慣れてるのね)
剣士(買い物は目が見えないから苦手だよ…今みたいに教えてくれないとどれが良いか分からない)
女エルフ(私は人間の町のこの匂いが苦手)
剣士(僕も同じだよ…雑音も多すぎて方向が分からなくなる)
女エルフ(でも不思議…エルフ2人が人間の町をこんな風に歩いてるなんて…)
剣士
女エルフ(まだ認めていないの?)
剣士(実感が無いんだ…そんなに差があるのかも正直分からない)
女エルフ(目が無くてもそれほど不自由しないのは感覚がエルフだからよ?)
剣士(妖精も同じ事言ってたよ…それより…さっき買ったその弓は良さそう?)
女エルフ(少し調整が必要だけど十分使えそう)
剣士(僕にも使えるかな?)
女エルフ(遠くの獲物を射止めるのは目が必要なの…多分使えない)
剣士(結構遠くまで感じてると思うんだけどな)
女エルフ(音は少し遅れて聞こえて来るの…分かるかな?)
剣士(見えるよりも遅れてるっていう事?)
女エルフ(そうよ…感じてる所に撃ってもそこにはもう居ない)
剣士(少し広いところで試してみたいな)
女エルフ(砂の向こう側にオアシスが見えてる…行ってみる?)
剣士(水の匂いのする方だね…オアシスってどんなだろう?)
女エルフ(砂の上にある大きな水たまりよ)
剣士(ん?…)ピク
女エルフ(どうしたの?)
剣士(何だこの感じ?)クンクン
女エルフ(どこ?)キョロ
剣士(オアシスの少し右方向…上)クンクン
女エルフ(ハッ!!ドラゴン…)
剣士(こっちに来る…)
上空にドラゴンが接近している事は他の誰かが既に気付いていた
その危険を口々に言い始める
おい!何か飛んでるぞ!!
ありゃドラゴンだ…こっち来そうだな
リザードマンの次はドラゴンか!?
アレを仕留めたらガッポリ儲かるぞ?
おい!人集めてこい!!
その声はシャ・バクダを巡回する衛兵達の耳にも届き慌ただしく集まり始めた
ギャオーーース ドッシーン
通行人1「うわぁぁぁ…たたたすけてくれぇぇ」
通行人2「でけぇ…おい!そこの二人!!突っ立ってねぇで逃げろぉ!!」
ドラゴンが着地したのは剣士と女エルフの目の前だった
剣士剣士は目の前のドラゴンの存在感に唖然として居る
女エルフ(動かないで?)
剣士(う、うん…)
”エルフが斯様な所で何をしている”
”汝らは人間に汲みするのか?”
ドラゴンの声は森の言葉では無く直接頭の中で聞こえて来る
女エルフ(ドラゴン…これには訳があります)
”森へ戻れ”
”エルフの秘宝が奪われる前に”
女エルフ(秘宝?…秘宝とは何の事でしょうか?森で何が?)
その時集まり始めた衛兵達とその他弓を持った者達が一斉に矢を放ち始めた
衛兵達「撃てぇぇぇ!!」シュン シュン シュン シュン
剣士(女エルフ!危ない!伏せて)グイ
女エルフ(あ…)
放たれた矢は巨大なドラゴンへ向かって雨の様に襲い掛かる
それを嫌がったのかドラゴンは翼を一振り…一気に飛び上がった
衛兵達「飛んだぞ!!逃がすな!撃て撃て撃てぇ!!」シュン シュン シュン シュン
ドラゴンを追いかける形で無数の矢が放たれる
その向こうで誰かに当たってしまうかも知れないとは誰も考えていない様だ
剣士はその様子を見て危険を感じた
剣士(行こう!流れ矢に当たる!)グイ
女エルフ(えぇ…)
2人は矢を避けその場を離れた…
『宿屋』
建屋の中に居た人は今起きている事に気付いて居ない
店主「お帰りなさいませ…外が騒がしい様ですが何か?」
剣士「ドラゴンが来たんだ」
店主「ええ!?それは大変な事になってるじゃないですか!?」
剣士「みんな弓で応戦してる」
店主「私もちょっと見てきます!!あ…お連れ様が部屋の方に興しになっていますよ?」
剣士「そうか…部屋に戻るよ」
そう言って剣士と女エルフの2人は部屋に戻った
ガチャリ
女海賊「あ!帰ってきた…なんかお姉ぇ来ちゃって寝る暇無いさ…」
??「この2人か?…」
女海賊「紹介するよ!!お姉ぇフード脱いで?」
??「まぁお前の仲間なら信用して良さそうだな…」ファサ
その女性は女海賊よりも随分背が高くがっちりとした体付きをしていた
流石に姉妹だけ有って顔の特徴はそっくりで髪の毛が赤毛なのも一緒だ
女海賊「盗賊ギルドマスター代理の女戦士!私のお姉ぇだよ」
女戦士「お初にお目に掛かる…話は妹から聞いた…世話になっている様だな」
女海賊「あんたさぁ美女3人に囲まれてどうよ?」
剣士「いぁ…それどころじゃないんだ」
女エルフ「町にドラゴンが来たの」
女戦士「何ぃ!?今居るのか?」ダダッ
女戦士は窓辺に行き上を見上げる
女海賊「ヤベ…あんた達がエルフだっての忘れてた…」
女戦士「どこだ?ここからは見えんか?」
剣士「多分森の方へ飛んで行った」
女戦士「どれほど被害が出ている?」
剣士「殆ど無いよ…弓で追い払われた」
女戦士「私は少し町の様子を見てくる!お前たちはここで待っていろ…すぐ戻る」タッタッタ
女戦士は部屋を飛び出して行った
剣士「この町の人は戦闘の準備が早いね…すぐに弓で応戦を始めた」
女海賊「あぁソレね…シャ・バクダは元々戦闘民族だったんだって」
剣士「それで武器類が沢山売ってるのか…」
女海賊「ん?女エルフは弓買ったんだね…てかそれ弓じゃ無くて重クロスボウの部品じゃね?」
剣士「女エルフが選んだんだけど…」
女海賊「そんな硬い弦手じゃ引けないから…」
女エルフ「……」ギリリ ブン! バチン!
女エルフ「痛っ!」空撃ちした弓の弦が腕に当たった様だ
女エルフ「やっぱり調整が必要ね…」スリスリ
女海賊「ちょ…マジか…エルフってそんな硬い弓使うんだ?ちょい貸して」
女エルフ「ドワーフでも使えるかも」
女海賊「ふぬぬ!…」ギリ
剣士「アハ…無理そうだね?」
女海賊「んむむむむ…無理!なんで?あんたの方が手足細いじゃん?なんでこんなクソ硬いの引っ張れるん?」
女エルフ「慣れ…かな?」
女海賊「なんかムカツクなぁ…背が高くて美人な上に強いとかさぁ」
剣士「壁に爆弾で穴を開けるのは君の方が上手だよ?」
女海賊「なんかスッキリしないな…」
剣士「そういえば君にお土産買ってるのを忘れてた…この石」ゴトリ
女海賊「はぁ?あんた舐めてんの?石なんか要らねぇよ!!」
女エルフ「女エルフが見つけてくれたんだ…磁石という物らしい」
女海賊「え!!?マジ!!?ちょちょ…見せて見せて?」
剣士「はい…なんか金属糸の服に引っ付く」
女海賊「おおおおおおお!!これマジもんじゃん!!これで色々出来る…みなぎってきた!!」
女海賊はその磁石を色々な物に引っ付けて喜んでいた
どうやら機嫌を損なわせないで済んだらしい…なんだか可愛らしい
『30分後…』
ドラゴンの騒動が収まったのか外に出ていた女戦士が戻って来た
ガチャリ バタン
女海賊「あ!お姉ぇ…どうだった?」
女戦士「流れ矢に当たった者が居るが大した事は無い…だがお前たち2人!!ドラゴンと何か話したな?」
剣士「僕達が人間の味方をしているのか聞かれたんだ」
女戦士「襲われる訳でもなくそれを大衆に見られているのがマズイ」
女エルフ「ドラゴンの声は他人には聞こえない筈よ?」
女戦士「大衆には話している様に見えているのだ…衛兵がもうお前たちを探し始めているぞ?」
女海賊「え!?まずいじゃん!」
女戦士「ゆっくりしてもらう予定だったが…すぐにアジトへ移動した方が良いな」
女海賊「どうしたら良いん?」
女戦士「裏の馬小屋に預けている馬2頭はお前たちの馬だな?」
女海賊「そうだよ」
女戦士「よし!あれは荷馬だ…二人づつ乗ってアジトへ向かう」
女海賊「了解!!」ビシ
女戦士「それからその二カーブは脱いでおけ…衛兵が探しているのは二カーブの女だ」
女海賊「長い金髪だからすぐエルフってバレちゃうよね…」
女戦士「その白い毛皮に着せ替えてフードを被せろ…行くぞ」
4人は衛兵が訪ねて来る前に宿屋を後にした
『オアシスの丘』
女戦士は馬に女エルフを乗せて盗賊ギルドのアジトまで先導する
砂丘を越えてシャ・バクダが視界に見えなくなってから女エルフに語り掛ける
女戦士「もうフードは脱いで良いぞ…顔を見せてみろ」
女エルフ「……」ファサ
女戦士「なるほどな…一目でエルフと分かるな」
女戦士「ドラゴンとは何の話をしたんだ?」
女エルフ「……」
女戦士「初対面の相手にペラペラ話す気にはなれんか…エルフだなフフ」
女戦士「まぁ良い…私の独り言だ」
女戦士「町から少し離れると人間の匂いは気にならんだろう?」
女戦士「この砂漠の砂は汚い物をすべて洗い流してくれる」
女戦士「触ってみると分かると思うが神聖さを感じるほど清らかだ」
女戦士「エルフなら感じるか?かつて此処が広大な森だった事を」
女エルフ「え?」
女戦士「200年前の大破壊ですべて焼き払われた結果だそうだ」
女戦士「見てみろ…あのオアシス群は隕石が落ちた後に出来た物だ」
女戦士「そんなオアシスがこの周辺にはいくつも在る」
女戦士「どれほどの大破壊だったか想像できるか?」
女エルフ「ここが…森…」キョロ
女戦士「フフ…口を開いたな?」
女戦士「耳を立てて砂漠の声を聞いてみろ」
女エルフ「砂と…虫達…」
女戦士「大破壊とは只の破壊では無い…新たに生まれる命も有るという事だ」
女エルフ「再生していると言う事?…」
女戦士「かつて魔王が成そうとした事は大破壊という再生だったと考えると…」
女戦士「それ阻止しようとする勇者は善か悪か?」
女戦士「我らドワーフが勇者を保護しようとするのは善か悪か?」
女戦士「精霊の一部だった森を守ろうとするエルフは善か悪か?…いったいどちらなのだ?」
女エルフ「そんな…」
女戦士「我々はその答えを探求しているのだ…」
女戦士「エルフとこういう話を共有出来るのは感慨深い」
女エルフ「どうして人間は戦いを止めないの?どうして森を侵略しようとするの?」
女戦士「人間は恐れているのだ」
女エルフ「エルフを?森を?私たちは何もしていない…」
女戦士「…何か持っているのではないか?」
女エルフ「…ドラゴンが言って居た秘宝の事?」
女戦士「ん?秘宝?何の事だ?」
女エルフ「わからない…私は知らないの」
女戦士「ふむ…やはりエルフは何か持って居そうだな」
女エルフ「それが原因で人間はエルフの森を侵略していると言うのね?」
女戦士「まぁ確かな話では無いが…その秘宝とやらが狙いだとするとセントラルの動きも合点が行くのだ」
女エルフ「他にも何か動きが?」
女戦士「後でアジトで皆が居る時に話してやる」
女戦士と女エルフが先導する馬の後方では剣士と女海賊が馬に乗って続いていた
もう日が落ちて随分経っていて先導する馬を見失いそうだ
女海賊「もう真っ暗で何も見えないよ?ちゃんと付いて行ってる?」
剣士「僕は初めから何も見えてないよ」
女海賊「ちょ…なんかメチャ不安なんだけどさ…マジ何も見えん…お姉ぇの馬の音聞こえてる?」
剣士「大丈夫…」
女海賊「星は見えてるんだけどさぁ…足元が真っ過ぎて穴に落下しそう」
剣士「穴に落下?ハハハハハ」
女海賊「目を開けても閉じても真っ暗…あんたいっつもこんな?」
剣士「そうだよ?…耳を澄ましてみて?」
女海賊「馬の足音しか聞こえないって」
剣士「もっと…砂が引っかかる音…砂が落ちる音…蹄が沈む音…」
女海賊「……」
剣士「風が耳をすり抜ける音…遠くの音…近くの音」
女海賊「ぁぁ…分かる!」
剣士「地面を砂が転がる音…あっちにもこっちにも」
女海賊「ちょ…これ私がイメージした通りに白くボヤーっと見えるのってさぁ…本当にそうなってんのかな?」
剣士「砂の起伏の事かな?」
女海賊「なんか動いてる様に見えるっちゅうか…なんこれ?」
剣士「もっと集中するとどんどんハッキリして行くんだよ」
女海賊「マジか…音だけで見えるんか…」
剣士「あ!!前の馬が止まった」
女海賊「どこどこ?何も見えんけど…」
剣士「到着したみたいだ…馬を降りてる」
剣士「結構大きな建物みたいだよ」
未だ月が出て居なかった…
沙漠で周りに明かりが無いと本当に何も見えない真っ暗闇
何故そう感じるかというと星空のせいだ…星の光が多すぎて逆に砂漠の暗闇が真っ暗に感じる
そして今辿り着いた場所がまさにそれに適した場所だった
女戦士「着いたな?ここは星の観測所だ…明かりを付けるぞ」チリチリ
女海賊「お姉ぇ良く足元見えるね?落ちそうで怖く無い?」
女戦士「砂漠も海も同じだぞ?お前は昔から黒い海がキライだな」
剣士「馬はどこに繋げば?」
女戦士「放しておいて良い…牧草と水はここにしか無いから逃げん」
女海賊「ここってさぁ?誰も居ないの?」
女戦士「今は移設の最中だ…直に若い衆が出入りする様になる…こっちだ!入れ」
『盗賊団のアジト』
その建物は星の観測所だと言う通り天窓が大きく開く建造物だった
恐らくこの建物もシャ・バクダ王朝時代の遺跡だと思われ
200年前の大破壊でも壊れないで残ったくらい堅牢な建物だ
随所に補修を施して居るが十分星を観測するのに使えそうだ
女海賊「おおおおおおおお!!望遠鏡!!」
女戦士「気に入ったか?一つ持って行って良いぞ」
女海賊「なんでこんなにいっぱいあんの?」
女戦士「趣味で買い集めた…町の様子もここから伺えるぞ?見るか?」
女海賊「見る見るぅ!!」
女戦士「この望遠鏡がオアシス方面…こっちが町…これが天体観測用だ」
女海賊「おぉぉ!!超見える!!」
女海賊は子供の様にはしゃぎまわって居る
女海賊「お姉ぇ天体観測用で望遠鏡集めてんの?」
女戦士「いや…天体観測よりもシャ・バクダ遺跡の捜索が主だ」
女海賊「捜索?」
女戦士「遺跡を探すのに砂漠を行くのは大変なのだ…望遠鏡を使った方が早い」
女海賊「なるほど…アサシンが探してる遺跡だね?」
女戦士「うむ…」
女海賊「あ!!そうそう…今日さぁ~女エルフからコレ貰ったんだ!!磁石」コロン
女戦士「見せてみろ…んむ良い物だ…良く見つけたな?」
女海賊「少しあげよっか?」
女戦士「良いのか?」
女海賊「望遠鏡のお礼だよ」
女エルフ「ウフフあなた達…やっぱりドワーフなのね」
女戦士「ん?何だ?今のは嫌味か?」
女エルフ「珍しい石とか鉄…機械が大好き」
女海賊「いちいちウルサイやい!あんたは鳥とお話でもしてな!」
剣士「今日は少し疲れたかな…横になる所はある?」
女戦士「あぁ悪い…馬車での長旅の後だったな…まだベッドは無いが一応横になれる…こっちだ」
剣士「女海賊?今日は僕が先に寝ても良いかな?」
女海賊「おけおけ!後で私も行くから先に寝てて」
女戦士「今日はゆっくり体を休ませろ…話は明日だ」
剣士「そうさせてもらうよ…女エルフ?君はどうする?」
女エルフ「私は疲れていないから少し星を見てみる」
女海賊「お!?興味出た?ここの穴から見るんだよ?」
剣士「じゃぁ先に休む」
女海賊は得意気に女エルフに望遠鏡を覗かせた
エルフに対して何か教える事が有るのが嬉しかったのだ
なんだかんだで女海賊は面倒見が良い
『翌日』
女海賊は夜中一人でずっと起きている女エルフを不憫に思い人間の眠り方を教えた
ただ横になって目を閉じるだけなのだが
中々眠らない女エルフに女盗賊が歌っていた子守歌を聞かせたら眠りに落ちた
女海賊「おはー!!寝られた?」
女エルフ「少しだけ…」
女海賊「やっぱ眠り方分かんない?」
女エルフ「こんな風に横になるのは子供の時以来なの…」
女海賊「ほんで夢見れたんかな?なんか覚えてる?」
女エルフ「誰かと空を飛ぶ夢…誰だったんだろう」
女海賊「おぉ!!エルフも夢見れるんじゃん」
女エルフ「人間の部分…なのかな?」
女海賊「その夢!正夢になるぞ!…お姉ぇ~~~!!何してんの?」ドタドタ
隣の部屋で何か作って居る女戦士の下へ行く
女戦士「朝から騒がしいな…お前も食事を作るの手伝え」
女海賊「うぉ!お姉ぇが食事作んの?食える?」
女戦士「客が来た時くらいは私も作る…黙って手伝え」
女海賊「お姉ぇは知らないと思うけどさぁ…エルフはあんまり食わないよ?」
女エルフ「寝ると少しお腹が減るみたい」
女海賊「ほんでかなりの偏食…鳥の餌とか食ってるし」
女戦士「エルフが何を食べるくらい知っている…良いから手伝え」グイ
女海賊「ちょ…あぁぁ何だコレ…木の実、木の芽…もうちょっと腹の足しに…」
女戦士「……」スラーン チャキリ
女戦士は持っていた帯剣を抜いた
女海賊「ちょちょちょ…待った待った!分かったやるって…」
女戦士「…これで木の実を割っておけ」ポイ
女海賊「はいはい分かりました!…ところでさぁアサシンから指示書預かってるんだ」
女戦士「お前は又そうやって話をすり替えて逃げる気だな?黙って手を動かせ…指示書は後で見る」
女海賊「…へいへい分かりました」
女エルフ「ウフフ…食べ物は気にしなくていいの」
女海賊「ほらお姉ぇ…こんな事言ってるよ?」
女戦士「又尻をぶっ叩かれたい様だな…」
女海賊「ちょちょちょ!!待った待った!!お姉ぇがお尻ぶっ叩くから青アザ消えないんだよ」
女戦士「それは蒙古斑だ…口は良いから手を動かせ」
30分後…
2人で作った朝食は女海賊にとってかなり不満のある物になった
全く持って食べたくない
女海賊「おい!起きろぉ!!」グイグイ
剣士「う~ん…おはよう」
女海賊「あんたが一番遅いんだよ!飯だ飯ぃ!!」
剣士「なんか機嫌悪い?」
女海賊「別に!!?」
剣士「やっぱり機嫌悪そうだ…今丁度何か夢を見てたんだ」
女海賊「だから何さ?」
剣士「ちょっと匂いを嗅がせて貰って良い?」
女海賊「んあ?なんで匂いなんか…まぁ良いけど…」
剣士「首の辺り…」クンクン
女海賊「ちょ…くすぐったいんだけどさ…」
剣士「耳の後ろ…この匂いだ…」クンクン
女海賊「あんたちょっと…近すぎて…そんな色々触られると変な気持ちになるんだって!!」
剣士「変?」
女海賊「ちょい近すぎなんだけど…ほんで首回り撫でるの止めて!」
剣士「あぁゴメン…夢と匂いが同じだからツイ…」
女海賊「あっちでみんな集まってんだ!早くして!」
剣士「今行く…」イソイソ
女海賊「ヤッベ…又下の方が濡れて来た…」
剣士は立ち上がり隣の部屋へ移動した
そこではテーブルを囲んで女戦士と女エルフが会話をしている
女戦士「起きたな?ゆっくり寝られた様だな?」
剣士「うん…やっぱり安全だと良く寝られる」
女戦士「簡単だが軽い食事を用意したぞ?この辺りでは珍しい木の実と木の芽だ…野菜もある」
剣士「ごちそうでは無いけどイイね…いただくよ」
女海賊「お姉ぇ指示書読んだ?」
女戦士「あぁ…セントラルの情報収集に人駆を回せという件だな?何が起こっている?」
女海賊「ぃぁそこじゃない…気球を私にくれるっていう所」
女戦士「気球はまだ移送中だ今日の日暮れまでには届く…それまで待て」
女海賊「夕方かぁ…望遠鏡の取り付けとか改造したかったのになぁ…」
女戦士「それよりセントラルの状況だ…数万の兵で森へ魔物討伐に出ていると聞くがどうなっているのだ?」
女海賊「え!?マジ?初耳なんだけど…」
女戦士「シャ・バクダにも徴兵に来ていたのだがな」
女エルフは「数百ではなく数万?…そんな…」…女エルフは愕然とする
剣士「3か月くらい前に法王庁の衛兵がセントラルから出たのは知ってる…2個中隊って言ったかな…」
女戦士「ふむ…それは別動隊だな…アサシンからは何も聞いて居ないのか?」
女海賊「う~ん政治的な事は教えてくれないなぁ…てか私が理解出来ない」
女戦士「…そうか仕方が無いな…その様子だとセントラルの第3皇子が戦死したのも知らんな?」
女海賊「誰だっけ?興味無いから覚えてないわ…」
セントラルでは随分前からゴブリンとオークの襲撃があってな
若い第3皇子は功を焦って魔物討伐隊を指揮したのだが
ゴブリンの放った流れ矢に当たって戦死したのだ
ここで第1皇子と第2皇子の権力抗争が始まる
魔物にやられたままでは体制維持が難しいと考えた第1皇子は
権力基盤を固める狙いで仇討ちを称し魔物討伐隊を再編成する
その規模は2個師団…数万の兵を招集し森に進軍したのだ
女戦士「私が知っているのはここまでだ…気になるのが第2皇子の動きなのだが…」
女エルフ「私…森へ戻らなければ…」そう言って女エルフは立ち上がる
女海賊「無理無理!あんたのその足はちゃんと治らないとロクに戦えないよ…走れる様になってからにしな?」
女エルフ「くぅ…」
女戦士「さてここからが本題だ…法王庁が動いていると言ったな?」
女戦士「法王庁は第2皇子の管轄なのだ…そして第2皇子の側近にダークエルフが居るという報告もある」
女エルフ「ダークエルフが!?まだ生きているの?」
女戦士「数万の兵が森を北へ進軍し…法王庁が漁夫の利を狙ってエルフが持つ秘宝とやらを奪う…」
女戦士「ダークエルフが居れば不可能な事ではあるまい?」
女エルフ「そうだったのね…やっと分かった…ドラゴンも一緒に動いて居る理由が…」
剣士「僕たちが始めにドラゴンに会ったときはもっと南だったね」
女海賊「そういえば…昨日ここに来てるって事は…もしかして戦場になっている場所が移動してる?」
女戦士「どちらの方向に飛んで行ったのか分かるか?」
剣士「東南東の方向」
女戦士「ふむ…やはり少し北上しているな…指示書には気球で光の国シン・リーンへ導けとあるが…」
女海賊「ちょっと急がないと戦場の上を飛ぶ感じになっちゃうじゃん」
女戦士「明日出発するとなると戦場になりそうなのは帰りだな」
女エルフ「ちょっと私…望遠鏡で森の様子を見て来る」ヨタヨタ
女エルフは居てもたっても居られ無い様で足を引きずりながら上階の望遠鏡を覗きに向かった
剣士もその後を続く…
剣士(その望遠鏡で何が見えるの?)
女エルフ(森の様子よ)
剣士(エルフの森が心配なのかい?)
女エルフ(私はゆっくりしている場合じゃないのに…)
剣士(足の具合は?)
女エルフ(痛みは耐らえれる…でも動かないの)
剣士(君一人が森へ戻っても危険なだけだよ)
女エルフ(私一人では何もできないけれど…他のエルフが捕まえられる事を思うと…)
剣士(この人間とエルフの戦いって不毛だね…何も生まない)
女エルフ(そう…私も何が悪いのか分からなくなってきた)
剣士(エルフもダークエルフと何か因縁が?)
女エルフ(私たちよりも不幸な種…彼らがエルフへ復讐を計画しているのなら業はエルフが払わなければいけない)
剣士(エルフがダークエルフを迫害したという解釈で合ってる?)
女エルフ(そうよ…)
剣士(人間はその中間で踊らされている…のかな?)
女エルフ(ダークエルフが戦争を導いてるとしか考えられない…人間は戦いに勝っても得るものが無いでしょう?)
剣士(エルフの秘宝と言うのは?)
女エルフ(私は知らない…でもダークエルフが欲しがるのは考えられる話)
剣士(なんか…その話を聞くと行く所まで行ってしまいそうだ…)
女エルフ(ドラゴンが加わってる以上エルフも絶対に引かないわ)
剣士(少し視点を変えてみるよ?人間からすると普段攻め入って来る魔物を退治するために兵を募ってる)
女エルフ(……)
剣士(森の奥へ進めば進むほどトロールやドラゴン…そしてエルフが抵抗してくる)
女エルフ(……)
剣士(人間からするとこれは正義の戦い…引く訳が無い…どうやって決着をつける?)
女エルフ(この戦いを誘導してしまったのは傲慢な私たちエルフ…でも人間に譲歩する事も考えられないわ)
剣士(何か切っ掛けが無いと終われない戦いになってるね…)
女エルフ(切っ掛け?…どうすれば良いの?私に何か出来る事は無いの?)
剣士(エルフの秘宝をダークエルフに渡す…と言うのは出来ないんだろうか?)
女エルフ(それはハイエルフが判断しなければいけない事…私ではどうにも出来ない)
剣士(ハイエルフの判断か…何か確執があるならそう簡単じゃ無さそうだね)
一旦戦争が起きてしまえば1人や2人の力でどうにか出来る訳など無いと思い知る
今は体を癒すしか選択肢が無かった…
その日の昼過ぎにこの新しい盗賊ギルドのアジトに数名の若い衆が荷物を運び入れ出した
それと同時に気球も到着する
オーライ オーライ こっちこっちぃ!
女エルフ「あれが気球?たまに森の上を飛んでいるのとは形が違う」
女戦士「アサシンが改造した物だ…船の帆を張っているのだ」
女エルフ「空を船の様に進むの?」…女エルフはその気球を見上げ感心している
女戦士「うむ…アレの操作に関しては妹が秀でている…あのセンスはさすがとしか言い様が無い」
女海賊「お姉ぇ!!明日気球で出発するよね?」
女戦士「ううむ…さてどうする…」
女海賊「お姉ぇも行くよね?」
女戦士「それを考えているんだが…お前が剣士を魔女の住処まで案内出来るなら私はここに残る」
女海賊「えぇ~そんなん知らないよぉ…何処にいんの?」
女戦士「片道3日か…アジトの移設中で忙しい身なのだが…どうしたものか」
女海賊「若い衆に任せとけばいーじゃん」
女戦士「あと5日でお前たちが居たであろう商隊が到着するのもある」
女海賊「あ…そういえばそんな予定だったなぁ」
女戦士「シン・リーンまで2日で行けないのか?」
女海賊「うーーーん風次第なんだけどさぁ…今行く?…丁度暗くなってきたし」
女戦士「水も食料もまだ到着していない」
女海賊「今ある分でなんとかなるっしょ!…エルフ2人は放っとけば良いよ!どうせ食わないし」
女戦士「ふむ…よし行くか!!若い衆に事を伝えてくる…お前たちは準備をしておけ」
女海賊「ハイキター!!剣士!!女エルフ!!荷物入れるの手伝って!!」
剣士「え…うん…どうすれば?」
女海賊「薪とか燃える物を出来るだけ沢山積んで!!女エルフ?剣士の目の代わりやったげて」
女エルフ「わかったわ…剣士こっちよ」グイ
女海賊「あと10分で出発するよ!!」
剣士「そんなに急ぐの?」
女海賊「もうすぐ凪時なのさ…風向き変わる前に上空の風に乗らないと反対方向に流される」
剣士「分かった…急ぐよ」
女海賊「お姉ぇ!!適当に食料と水ぶっこむね~」
『気球』
フワフワ
既に球皮は膨らみ炉とフイゴで熱は十分入った…
後は地上と結んであるロープを抜けば一気に上昇する筈だ
女海賊「あぁぁ日が沈んじゃう…お姉ぇはまだかな?」
剣士「…よっこらせと」フゥ
女エルフ「これで薪は最後」
女海賊「後さぁ…寝るときに使ってた毛布も持ってきてよ!」
剣士「人使いが荒いなぁ…」シュタタ
女海賊「んんんん…薪足りるかなぁ…高高度行ったら寒いんだよなぁ…」
女戦士「早いな?もう行けるか?」ドサ
女海賊「お姉ぇ!?それは?」
女戦士「弓と矢だ…これが無いと他の気球が寄って来る…アサシンから常に積んでおけと言われていてな」
女海賊「そういや私は何も持たないで手ぶらだったわ…」
女戦士「クロスボウはどうした?」
女海賊「どっかの宿屋に置きっぱなしで忘れて来たさ」
女戦士「お前は何処に行っても何か忘れて来るな?」
女海賊「大事な物は忘れて無いから!…てか剣士おっそい!!」
剣士は毛布の他に荷物を抱えて戻って来た
ガチャガチャ…
女海賊「何やってんだよ!!早く乗って!!」
剣士「あぁゴメン…君の荷物が散らかってたからちょっと…」
女海賊「お!ヤベ…カバン丸ごと忘れる所だった」
女戦士「大事な物はどうした?」ギロリ
女海賊「アハ!そんなん剣士が全部持って来るって知ってたさ」
女戦士「ヤレヤレ…これで4人揃った…早く飛べ」
女海賊「おっけ~ほんじゃロープ抜くね~」シュルリ
フワフワ フワフワ
女戦士「気球の操舵はお前に任せたぞ?」
女海賊「おい剣士!!あんたも操作覚えて!!」
剣士「ええ?僕目が見えないんだけど…」
女海賊「うっさいな!あんたは私のペットなんだから言う事聞いて!!」
女戦士「剣士済まんな…妹の面倒を見てやってくれ」
女海賊「いやいや剣士の面倒見てんの私の方だから」
女戦士「私から見ればお前が剣士に面倒ばかり掛けている様に見えるが?」
剣士「ハハ…まぁ良いよ…僕がペットの役をしっかりして居れば全部上手く行くんだ」
女海賊「あんた分かってんね!!もっと匂い嗅がしてやるよ」
女戦士「まぁ良い!日が暮れる前に方向定めろ」
女海賊「アイサー!!」
女海賊は剣士のちょっとした一言で上機嫌になる
剣士にしてみれば機嫌を損なわせないで居れば何でも面倒を見てくれる姉みたいな存在になっていた
女戦士「夕日で砂漠が赤い海の様だ」
女戦士「外を見てみろ…砂漠のオアシス群が見渡せるぞ?」
女エルフ「…オアシス群の中央にあるのは?」
女戦士「かつての火の国シャ・バクダ遺跡だ…我らのアジトはそこら界隈を転々としているのだ」
女エルフ「この砂漠が全部森だったなんて信じられない」
女戦士「下にある今のアジトの場所は良く覚えておけ…何かあった場合はそこが集合地点になる」
女海賊「お姉ぇ!どれくらいあの星の観測所を使う予定?」
女戦士「そうだな…アサシンが戻るまでは持たせたいな…望遠鏡を見せてやりたい」
女海賊「アサシンは星になんか興味あんの?」
女戦士「星ではない…アサシンが探していたもう一つの遺跡の入り口を発見したのだ」
女海賊「お!?それは喜ぶかも!!もう行ったん?」
女戦士「入り口まではな?どうやって奥に入るのかはまだ分からん」
女海賊「帰って来たら行ってみよっか」
女戦士「そうだな…」
女エルフ「ねぇ…太陽が又昇っている様に見えるのはどうして?」
女海賊「フフフフフ高度を上げるとそういう風に見えるのさ!!世界が丸い証拠なんだよ」
女エルフ「え?丸い?…」
女海賊「エルフに勝った!!あんた達が森に引きこもってる間に私は世界を見てきたさ」ドヤ
女エルフ「これが私たちが住んでいる世界…」
女海賊「地平線がぐるっと一周繋がって見えるのも世界が丸い証拠さ…あんたに分かる?」
女エルフ「世界は丸い…どういう事か分からない…」
女海賊「ナハハハ後でちっと教えてあげるよ…ちょい進路安定するまで景色眺めてて」
女エルフにとって上空から見下ろす世界はすべて初めて見る物で
下に広がる何もかもが陸続きですべて繋がっている事が不思議だった
認知出来ていた範囲のその向こう側をすべて見通せる…そしてそれを感じられる距離では無い
自分の視点があまりに低かったことに気付いた