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「魔王は一体どこにいる」2  作者: ジョンG
6/19

6.ハズレ町

『商隊14日目』


セントラルから商隊でシャ・バクダへの旅を続けて2週間…


もうすぐ次の町へ差し掛かろうとしていた…その町の名はハズレ町


ハズレ町はエルフの森へのアクセスが良くあらくれ共が集まりエルフ狩りのメッカとして有名だった


捕らえられたエルフは奴隷としてセントラルへと送られ、主に貴族達に高値で買い取られる


あらくれの賞金稼ぎ達には好条件の場所なのだ


ガラゴロ ガラゴロ



女海賊「ぬぁぁもうウンザリ…気球貰ったら二度と商隊になんか入んない!」


馭者「嬢ちゃん…そう言いなさんなって」…この馭者との付き合いももう2週間になる


女海賊「まだ着かないの?」


馭者「日没前にはハズレ町に着く筈じゃ…でもな?盗賊が出るから気を付けなアカン」


女海賊「ほんなんどうでも良いって…」


馭者「嬢ちゃんは世間を知らねぇ…傭兵団から離れたらイカンで?」


女海賊「あのおっさん共は私に色目使うからキライ」


馭者「あっはっは…しょうがあるめぇ商隊に若い娘が入ることなんざ滅多にねぇもんでな」


女海賊「ハズレ町は2日の休憩って言ってたよね?」


馭者「商隊の再編成があるんじゃ…ゆっくりしとくとええ」


女海賊「なんかある?」


馭者「露店が沢山出てる筈じゃ…買い物も良いがスリに合わん様にな」


女海賊「買い物かぁ…おい!剣士!あんたのその冴えない服を私色に染めてあげる!」


剣士「このままで良いよ」


女海賊「私の従士なんだからさぁ!その貧乏くさい旅人の服じゃ恰好付かない」


馭者「嬢ちゃんのヒマつぶしに付き合ってやりーな」




馭者の言う通り日没前にはハズレ町へ到着し商隊は再編成の為一度解散した


2泊も野宿で過ごす訳に行かないから女海賊は速攻で宿屋を押さえに走った




『ハズレ町』


宿屋には貴族の身分証を提示する事で部屋が空いて居なくても立ち退かせる権利があった


今回はその権利を使い無理矢理良い部屋を開けさせた


でもリスクはある…貴族だと言う事が人伝手にバレてしまうのだ


女海賊はそんな危険をいちいち考える程器が小さくない…やりたい事をやる性格だった



女海賊「よっし!宿屋も取れたし買い物いくよ!付いてコイ!!」


剣士「露店がいっぱいだね」


女海賊「とりあえず剣士の辛気臭い旅人の服を買い替える」


剣士「辛気臭い?」


女海賊「だっさいって意味!」


剣士「だっさい?」


女海賊「あぁぁメンドクセーなあんたは!!良いから付いてコイ!」グイ



剣士は腕を引っ張られながら女海賊に付いて行く…いつもの事だ


妖精もその2人の周りでヒラヒラと踊りながら付いて行く



剣士「あ!?…あの恰好は…」妖精が何かに気付いた


女海賊「んぁ?…あぁアレは法王庁だね。こんな所まで来てたんだ…無視無視」


妖精「ちょっと様子見てくる」ヒラヒラ


女海賊「いってら!!剣士は私に付いてコイ」


剣士「……」剣士は聞き耳を立てている


女海賊「あんた聞いてんの?うんとかスンとか言えよタコ」


剣士「スン」クンクン


女海賊「…何立ち止まってんのさ!何かあんの?」


剣士「何か居る気がする」


女海賊「また魔物?」


剣士「いいえ…森の匂い」


女海賊「そんなんどうでも良い!いくよ!」グイ





『露店』


その露店は主に砂漠で着用する装備品を売っている露店だった



防具商「らっしゃい!何か買ってくかい?」


女海賊「おすすめは何?」


防具商「ラクダの革鎧が安いよ」


女海賊「そんな臭い物おすすめすんの?もうちょっとマシなの無いの?」


防具商「はぁ…すこし値が張るけど金属糸で織った旅人の服は臭わないですが?」


女海賊「お?ちょい見せて?」


防具商「…こちらです」ゴソリ


女海賊「おぉ光ってる!!剣士!?サイズ合わせてみて?」


防具商「此方の方ですね?」


女海賊「私も合わせてみる…おい剣士!何ぼーっとしてんのよ!」


剣士「はい…」クンクン



剣士はどこからか風に漂う森の匂いが気になって居た



女海賊「…もう!まぁ良いや適当に見繕って着替えさせて」


防具商「かなりお高いですがよろしいでしょうか?」


女海賊「いくらよ?」


防具商「2着で10金貨ですが…」


女海賊「ハイハイ…」ジャラリ


防具商「うは…どちらの貴族様で?」


女海賊「うっさいなぁ…私は他の露店見てくるから着替えさせておいて!」


防具商「かしこまりました」ニヤ


女海賊「剣士!着替えたらここで待ってて」


剣士「はい…」



金属糸で織られた装備品はとにかく通気性が良くて丈夫だ


薄い肌着の上に着用するだけで革の防具並みの守備力があり汚れも直ぐに落ちる


その露店商は剣士に金属糸で織られた旅人の服を仕立てて着用させた後に店じまいを始めた



防具商「こちらがお連れ様の分ですが…お戻りが遅い様で」ニヤニヤ


剣士「……」


防具商「ここら辺はスリが多いですからねぇ…あなたは何も持っていない様ですが」


剣士「……」---女海賊大丈夫かな---


防具商「わたしはこれで店を終いますので失礼します…ではお気を付けて」



露店商は商品を荷車に乗せそそくさと去って行った


そこに法王庁の兵隊を見に行ってた妖精が戻って来た


ヒラヒラ ヒラヒラ



妖精(剣士!大変な事が起きてるよ)


剣士(どうしたの?)


妖精(エルフが捕らえられてる)


剣士(やっぱり!…その匂いだったか)


妖精(法王庁の馬車の中)


剣士(どうしよう…女海賊がまだ帰って来ない)


妖精(エルフは僕の姿を見て助けをお願いしてきた)


剣士(僕だけで助ける事が出来そうかな?)


妖精(牢の鍵の場所は分かる…でも人が交代で見張ってるよ)


剣士(夜になれば…)


妖精(状況はあんまり良くないんだ)


剣士(どうして?)


妖精(法王庁の衛兵が交代交代でエルフにエッチな事してる…夜になっても続いてると思う)


剣士(夜でも兵隊の目が有るのか…騒ぎになってしまうね)


妖精(うん…でもエルフに任せてって言っちゃったよ)


剣士(牢の鍵を開けたところで襲うしか無いね)


妖精そうだね…


剣士(僕たちの馬車の中に樽があったよね?一旦その中に隠そう)


妖精(馬車までは僕が誘導するよ…でもエルフが言う事聞くかな?)


剣士(一旦安全な所まで避難しないと逃げようが無いと思う)


妖精(エルフを説得してくる…)


剣士(今日の夜行こう)


妖精(もう一回エルフの所に行ってくる)ヒラヒラ




中々帰って来ない女海賊を待つ事30分…


彼女は大きな袋を背負って戻って来た




女海賊「やほーー待った?」


剣士「大丈夫?」


女海賊「何が?」


剣士「スリ」


女海賊「え!?…アレ?ない!!…ない!!…」ゴソゴソ


剣士「体が無事なら良い」


女海賊「ほーん…言うじゃん…でも買い物終わったからお金はもう良い」


剣士「宿屋のお金は?」


女海賊「フフフフフフフ海賊をなめんなよ?大事な物は大事な所に隠しているのだ!!」


剣士「良かった」


女海賊「あ~でも…盗んだ人大丈夫かなぁ…」


剣士「??」


女海賊「拾ったサソリ2匹を金貨の入った袋に入れておいたんだ」


剣士「サソリ?」


女海賊「まぁ良いじゃん!?ところでさぁ…いっぱい買い物したんだ!早く宿屋に帰って装着するぞ!!」


剣士「はい…」


女海賊「てかアンタ半分持てよ!!」





『宿屋』


女海賊は欲しい物を沢山買い物出来て長旅のストレスは吹き飛んだようだ



女海賊「おぉーこの金属糸の服!軽くて良いね」ゴソゴソ


剣士「……」


女海賊「見えてないのは分かってるけど…あっち向いて!!」


剣士「……」クルリ


女海賊「臭いも嗅ぐな!!息を止めて!!」


剣士「……」ピタリ


女海賊「私が裸の時は気を使えよ」ゴソゴソ


剣士「くるし…い」


女海賊「もう良い…ほんでコレあんたの分」ドサ


剣士「僕はこれをどうすれば…」


女海賊「それは狼の仮面…あんたはどうせ目が見えてないから顔を全部隠す」


剣士「こう?」ゴソゴソ


女海賊「おー超かっこいいじゃん!…私はこの機械式望遠ゴーグル…じゃーん!!って見えてないか」


女海賊「それからクロスボウのホルダーと小物入れ付きベルト…めっちゃスチームパンク」


剣士「見てみたい」


女海賊「私の美貌を見れないなんてあんた不幸だねぇ…ホレ?ホレホレ?」


剣士「何してる…の?」


女海賊「ナハハハ残念だねぇ!!私のボディー見れないなんてさぁ…アソコ御開帳!ヌフフフ」


剣士「……」---どういうつもりなんだろう---


女海賊「おっぱいぐらい触っても良いぞ?」


剣士「いや…ええと…僕はどういう風に見える?」


女海賊「その仮面と白い毛皮着てれば私の番犬ポチ」


剣士「ウルフに見える?」


女海賊「夜ならそう見えるかもね」


剣士「……」---よし!都合が良い---


女海賊「あ~やっと馬車から解放されてゆっくり休める」


剣士「僕は休めない」


女海賊「なんでさ?」


剣士「え~と…」


妖精「剣士じゃ説明できないから僕が代わりに…」



妖精が代わりにエルフが捕らえられてる事を説明してくれた


助けた後に馬車に入ってる樽に隠す作戦も説明した



女海賊「ほ~ん…で夜に助けに行くのか…う~ん危険だなぁ…」


妖精「エルフに今日の夜行くともう伝えたよ」


女海賊「まだ一日この町に居なきゃいけないのがね…もう少し別の騒ぎ起こさないと明日困るなぁ」


剣士「爆弾使う?」


女海賊「いまいちだなぁ…あんたさぁウルフの大群とか呼べないの?」


剣士「え?」


女海賊「ほら…ウルフって遠吠えで仲間呼んだりするじゃん?」


妖精「賢い!!デザートウルフが居るかもしれない」妖精は飛び上がった


女海賊「ヌフフフフフフ面白くなってきたぞぉ!私は養羊場の柵を爆破してくる」


妖精「羊が交換条件だね?出来る?剣士」…妖精はノリノリだ


剣士「呼んでみる」


女海賊「おけおけ…今夜は上弦の月…よし!月が沈む時に爆破するからエルフの方は剣士と妖精で行って」


剣士「わかった」


女海賊「エルフを樽に隠したら宿屋に戻って来る事…分かった?」


剣士「はい」


女海賊「よっし!いっちょ働くかぁ!!あんたの遠吠え楽しみにしてるよ」





『丘の上』


剣士は久しぶりに遠吠えでウルフ達を呼んでみた


ワオーーーーーーン アオーーーーーーーン



妖精(デザートウルフは来るかな?)


剣士(返事があった…来る)


妖精(法王庁の馬車は宿舎の方…こっちだよ行こう)ヒラヒラ



法王庁の馬車は丘を下った先にある大きな建物に横付けされていた


その建屋を囲む形で見張りの兵隊が数人警備している


馬車には妖精が言った通り順番待ちの兵隊が2人並んで待機していた



剣士(今の月は?)


妖精(もうすぐ沈むよ)



ドーン


遠くで爆弾が破裂する音がした



剣士(予定通りだね)


妖精(ストップ!!これ以上近付くと見つかっちゃうよ?)


剣士(声が聞き取りにくい…もう少し近づく)ソロリ




『法王庁の馬車』


馬車の周囲は他の誰かに見られない様にわざわざ明かりが消されて居る


馬車の中ではエルフが見世物になって居るのか隙間から明かりが漏れて居た


ギシギシ ギシギシ



兵隊1「おい!早くしろよ…交代だ」


兵隊2「待ってくれ…こう無反応じゃ気が入らんのだ」



その女エルフは死んだ魚の目の様に一点を見たまま下半身を遊ばれて居るのに耐えて居た



兵隊2「もうちょっと抵抗するとか無いのかよ」


兵隊1「おい!開けるぞ」


兵隊2「待て待て…もう出る…うっ」ハァハァ


兵隊1「終わったか?」


兵隊2「こんなに綺麗な顔してても無反応じゃなぁ…」シンナリ


兵隊1「みんな待ってんだ!早く出ろ!」ガチャリ



アオーーーーーーン



兵隊1「今日はヤケに犬が鳴いてるな…うぉ!めちゃくちゃ美形だな」


兵隊2「助けてやるとか口説いても無駄だぞ?」ゴソゴソ


兵隊1「さすがに汚されきって舐める気は起きんな…早く変われぐふふふ」


兵隊2「今出る…ん?この女エルフ動いたぞ?おい暴れ…」



女エルフは檻の鍵が開いた隙を狙ってそこから出ようとした



兵隊2「おい!おとなし…ぐぁ」


兵隊1「な、なんだ?おい暴れるな!!」



女エルフは両腕を縄で縛られて居たが下半身は縄を外され自由が利いた


その兵隊に蹴りを入れ檻を出ようとする



兵隊2「エルフが逃げちまう!檻を閉め…」



女エルフは行為が終わって下半身が露出した状態の兵隊のそれに噛みつき食いちぎる


ガブ!! ペッ!! ボトリ…



兵隊2「だぁぁぁぁぁいでぇ!!ぬぁぁぁぁ血がぁぁ俺のモノがぁぁぁ」


兵隊1「こ、このやろう!!」



そこにウルフに扮した剣士が現れる



剣士(助けに来たよ!今の内に檻から出て)


女エルフ(待ってた…足を怪我してて走れない)


剣士(チャンスを見て僕の背中に乗って!)


兵隊1「犬!?いや…ウルフか?」タジ



突然現れたウルフにその兵隊は驚いていたが携帯していた剣を抜き向き直る…スラーン



兵隊1「ウルフが人間様に勝てると思ってんのか!!」


剣士(早く出て!!)


女エルフ(乗る!)ピョン



裸の女エルフが剣士の背に乗る



兵隊1「な!?…ウルフに乗るだと?」


剣士(つかまって!!走る…)シュタタ


兵隊1「逃がすかぁ!!」ダダッ


女エルフ(一人追いかけてくる)


剣士(大丈夫!行ける!デザートウルフの方に向かう)



剣士はエルフを背負うのは初めてだった


体は細いのに異常に重い…エルフは同じ体格の人間に比べて筋肉の質が違って重いのだ



剣士(くぅぅぅ重い…)シュタタ


女エルフ(追いつかれてしまう…)


剣士(…くぅぅ…もう少し…もう少し)シュタタ



ガルルルル…


デザートウルフの群れが見え始める


それに気付いた兵隊は足を止めた



兵隊1「うぉ!!ウルフの大群…やべ」タジ


剣士(このまま馬車まで行く!妖精!…先導して)


妖精(こっち!)パタパタ


女エルフ(あなたは…エルフ?ウルフ?…それとも人間?)


剣士(いろいろ事情があってね)シュタタ


女エルフ(私は重い?)


剣士(背中に誰かを乗せて走った事なんか無い…背骨が折れそう)


妖精(剣士!馬車まで誰も居なさそう…真っ直ぐ行けるよ)


剣士(良かった…上手く生きそうだ)



剣士は女エルフを背に乗せたまま馬車の中まで一直線に走った…




『馬車』


この馬車は荷物を載せる馬車では無かったから休憩する2日間は他の馬車とは違う場所に止められて居た


そのお陰で周囲に誰も居なく明かりも無い…偶然だったけれど誰にも見られることなく馬車まで来られた


馬車の中で女エルフを背から降ろし胸を撫でた…



剣士(足の怪我は酷いのかな?)


女エルフ(…人間が仕掛けたベアトラップにかかってしまって)


妖精(この足の怪我は治るのにしばらくかかると思う)妖精は心配そうにしている


剣士(走れないとなると…治るまでは一緒に居た方が安全かな)


女エルフ(この樽の中に隠れておけば良いの?)


剣士(明後日この町から離れる…それまでは隠れて居て)


女エルフ(わかった…)


剣士(その毛皮は君に貸しておくよ)


女エルフ(白狼の毛皮…)


剣士(君が裸だったのは知らなかったんだ…何も用意していなかった)


女エルフ(ありがとう…あなた…やっぱりエルフね?)


剣士(君も妖精と同じ事を言うんだね…僕は自分が何なのかよく分からない)


女エルフ(きっと私と同じハーフエルフ)


剣士(その話は今度じっくりしよう…僕が今ここに居るのはあまり良くない…怪しまれる)


妖精(そうだよ…見つかる前に戻ろう)ヒラヒラ


剣士(狭いけど…樽の中で休んで居て?)


女エルフ(……)コクリ


剣士(このナイフを渡しておくよ…もしもの時に使って)


妖精(行こう!)パタパタ


剣士(じゃぁ…明後日の朝に)シュタタ





『宿屋』


突然デザートウルフの群れが襲ってきた事で外でキャンプしていた人達は一時的に近くの建屋に避難していた


ガヤガヤ ガヤガヤ


外はウルフが居て危ねぇぞ


駐屯してる衛兵は何やってんだ


オラの羊さ心配だべぇ~ヒック



女海賊「お!?上手くいった?」


剣士「うん」


女海賊「もっと遅くなると思ってたさ」


剣士「デザートウルフが来て助かったよ」


女海賊「50匹ぐらい来てんね!あちこち走り回ってる」


剣士「町の人は建物に?」


女海賊「他は分かんないけどここに来てるのは隣の酒場に居た連中が帰れなくて来てるっぽい…被害は殆ど無いよ」


剣士「よかった」


女海賊「そろそろ寝るかぁ!!ふぁ~あ…アレ?あんた!そういえば毛皮と仮面はどうしたの?」


剣士「馬車に置いてきた」


女海賊「ほ~ん…まぁ良いけど…」ジロリ


剣士「なに?」


女海賊「あやしぃ…あんたぁ!!エルフに貸したな?」


剣士「うん」


女海賊「エルフに惚れたん!?美人なの?そのエルフ!?」


剣士「ハハ僕は見えない」


女海賊「なんかイライラすんな…ドワーフとエルフ!!どっちが良いかハッキリしな!!」


剣士「どっちも同じ…」


女海賊「ん~む…同じねぇ…なんかイラつくけど…悪い気はしないなぁ」


剣士「休もう」


女海賊「私はこっち!あんたはそっち!寝るよ!」プン


剣士「背中は要らないの?」


女海賊「機嫌損ねたってあんた分かんないの!?」


剣士「分かる…ごめん…」


女海賊「もう寝る!寝る寝る!!」



いつの間に背中合わせで寝るのが普通になっていた


その普通に少し距離が空いた気がした





『夢』



僕「回復魔法!」ボワー


君「へぇ~魔法使えるんだ?すごいじゃん」


僕「大丈夫?」


君「もう平気!!あんたが持ってるその剣ってさぁ…変わった色してんね」


僕「銀…かな?」


君「どこで手に入れたん?私も欲しいんだけど」


僕「覚えてないんだ」


君「ちょっい貸して」


僕「はい」ポイ


君「お?軽~い」フォン フォン


僕「気に入った?」


君「振ると不思議な音が鳴るんだね」フォン フォン


僕「それが普通だと思ってた…」


君「返すよ」ポイ


僕「行こうか」


君「日暮れまでに馬宿まで行かないとまた野宿になるなぁ」


僕「向こうの谷の下に見えるやつかな?」


君「まだ遠いなぁ…こんどウルフが出たらあんたが追い払って」


僕「わかったよ」


君「ちょいまだ足が少し痛む…ててて」


僕「回復魔法!」ボワー


君「さんきゅ!」


僕「急ごう…」


君「馬宿まで行けたら定期馬車に乗れるかも」


僕「楽になるね…お金ある?」


君「あるわけ無いじゃん」


僕「ハハ…」



---魔法なんて使えたっけ?---




『翌日』


機嫌を損ねてふて寝した女海賊は朝になっても機嫌が悪いままで一人で露店に食事を買いに出て行った


背中を貸さないで別々に寝てしまった事が原因だと反省した


彼女はすごく単純…きっと僕が勝手に背中を貸して居れば良かった筈なんだ



ガチャリ バタン


女海賊は慌てた様子で部屋に帰って来た



女海賊「はぁはぁ…まずい事になっちゃったなぁ…」


剣士「どうしたの?」


女海賊「ちょっと目立ちすぎたかも…後を付けられてる」


剣士「誰に?」


女海賊「多分同業者…盗賊ギルドの連中」


剣士「なら仲間だと教えて…」


女海賊「簡単に信じる訳無いじゃん?ったくぅ…」


女海賊「私がギルマスの助手だって事分かってないんだよね~あのバカ共」


剣士「きっと商隊に混ざって追ってくる…どうすっかなぁ」


女海賊「馬車の中に食料と水はどれくらい残ってた?」


剣士「水は沢山ある…食べ物はあんまり無い」


女海賊「あんたさぁ…馬車の馭者出来る?」


剣士「え!?…やったこと無い」


女海賊「馬のおしりペチンペチンやってりゃ良いのよ!!トンズラするよ!!」


剣士「前の馭者の人は?」


女海賊「置いて行くに決まってんじゃん」


剣士「マジで言ってる?」


女海賊「ちょ…その言い方…私の真似?てか教え方が悪いか…とにかく今夜逃げる」


女海賊「このまま商隊で移動してると絶対面倒な事になる」


剣士「どうして?」


女海賊「相手はプロだよ?こっちはエルフ匿ってるしバレると絶対襲われる」


女海賊「商隊は明日の朝に出発予定だから馬の締結は日が暮れるまでに終わってる筈」


女海賊「この部屋の明かりは付けたまま日が暮れたら出来るだけ早く出発するよ」


女海賊「ウルフが沢山うろついてる時に単独で出発するとは誰も思わない」


剣士「…ゆっくり話してくれないと良く分からない」


女海賊「シッ…」


剣士「??」


女海賊「私のカンは超当たる…次は誰かこの部屋を確認に来るよ」


剣士「…」クンクン


女海賊「誰か来る?」


剣士「食べ物の匂い」


女海賊「…ルームサービスか…一部屋づつ回ってんな?…来ても開けないで!」


剣士「はい」


女海賊「部屋がバレるのも時間の問題…どうするどうする?」キョロキョロ


剣士「爆弾?」


女海賊「こんな所で?ダメダメ…ん?まてよ?」


女海賊「窓から投げてドーン…人が集まる…衛兵来る…明かり付けたまま今逃げる…いいな」


女海賊「ほんでどうしよ…どこに隠れる?」ソワソワ



すぐ隣の部屋まで迫って居るルームサービスの足音を聞いて女海賊は焦って居た


相手はプロの盗賊集団で何処に隠れても見つかってしまいそうだからだ



トントン



声「お食事を届けに参りました」


女海賊(ああぁぁもう来た…どうするどうする?)


剣士………足音を立てない様に入り口の扉前に行く


女海賊(シーッ…出ないで!え~いもうやっちゃう!…爆弾投げるよ)チリチリ ポイ



女海賊は爆弾を窓から放り投げた



??「いらっしゃいませんか?」ガチャガチャ


女海賊(人が集まって来たら窓から出るよ!準備して)


剣士(丘の上に行こう)


女海賊(隠れるところあんの?)


剣士(風通しが良くて誰も居ない)


女海賊(おっけ!あんたが先導して)


??「いないのですか~?ここを開け…」ドンドンドン



ドーン パラパラ



??「うゎ!!な、なんだぁ?」ドタドタ


??「外か?」タッタッタ



扉を叩いて居たルームサービスは慌てて何処かへ去って行った様だ


窓の外では女海賊が放り投げた爆弾で木が一本倒れ掛かって居る


その異変に気付いた衛兵達が集まり始めだんだんと人だかりが出来て行った


ガヤガヤ ガヤガヤ


なんの騒ぎだ


けが人は!?


この木が破裂したのか?



女海賊「よし!今行ける!窓から飛び降りて!」ピョン 


剣士「付いてきて!こっちだよ…」ピョン シュタ


女海賊「よっし!!おけおけ!撒ける」タッタッタ



剣士と女海賊は倒れている木に注目が集まっている隙に宿屋を抜け出した


先導する剣士は何も考えず女海賊の手を握って引っ張っている


いつもと違う立場…この状況に女海賊は少し心が動く…銀髪をなびかせながら手を引くその姿に…



---あんたやっぱり---


---やっぱあんたじゃ無ぇの?---




『丘の上』


手を引いて走る男女の姿を誰も見なかった訳では無い


ただそれは何処にでも居る恋人同士に見えて居て誰もそれを気に止めなかった


丘の上ではサワサワと気持ち良い風が吹き見晴らしも良かった



女海賊「付けられて無いね?」キョロ


剣士「大丈夫…」


女海賊「いつまで手を繋いでんだよ!!恥ずかしいんだって!」


剣士「あぁゴメン…」


女海賊「ほんでどうすんの?隠れる場所なんか無さそうだけど…」


剣士「この木に登る」


女海賊「こんなでっかい木を私に登らせる訳?」


剣士「引っ張る」ピョン ピョン シュタ


女海賊「あんたはサルか!」


剣士「手を…」


女海賊「よっ…と」ピョン ピョン ガシ


剣士「おっけ」グイ


女海賊「その言い方…だんだん私になって来てんな」ヨイショ


剣士「完璧!」


女海賊「言い方違うんだって!こう言うの…フフフフフかんぺーき!!」


剣士「アハ…」


女海賊「さて…馬車は何処だっけ?」


剣士「あっちの方角」ユビサシ


女海賊「…あれだな?今こそこの望遠ゴーグルを使う時だ!!装~着!!」ビシ


女海賊「おぉぉ見える見えるぅ…丁度馬締結してる所だ」


剣士「女エルフは?」


女海賊「分かんない…牧草と水は馬車の中に入れ終わってる模様」



チュンチュン


剣士に鳥達が集まって来た



女海賊「ちょ…あんた何やってんのよ?」


剣士「鳥達とお話」


女海賊「はぁぁ?何メルヘンやってんのさ…焼き鳥用に捕まえといてよ」


剣士「女エルフが元気無いらしい」


女海賊「そういや妖精は?全然見ないけど」


剣士「多分女エルフの所に居ると思う」


女海賊「あ!!馬の締結終わった…あの馭者…町の方に戻って行くな」


女海賊「なんちゅー不用心なんだろ」


女海賊「てか荷物積んで無いから放置で良いんか…」


女海賊「まだ夕暮れ前だけど人が居ない今がチャンスかも」


女海賊「他の商人達の馬車が商隊詰め所に入ってくる前に行っちゃおう!」


剣士「ええ!?もう行く?」


女海賊「私は待てない性格なの!行くよ!」ピョン


剣士「ちょちょ…」ピョン




『馬車』


ヒヒ~ン ブルル



女海賊「よし!誰も居ない!ひとまず馬車の中へ」ピョン


剣士「おっけ」ピョン



ヒラヒラ



女海賊「おぉ!妖精…やっぱここに居たね?」


妖精「女エルフの足の怪我が良くないよ」


女海賊「この樽の中?…てか今は見てあげらんない…町出るまで待って」


剣士(女エルフ大丈夫?)


女エルフ(ぅぅぅ…はぁはぁ…)



樽の中から女エルフのうめき声が漏れる



女海賊「もう!!しょうがないなぁ…樽開けるよ?妖精!!誰か来ないか見張ってて」パカ


妖精「承知!」ビシ パタパタ


女海賊「ドワーフとエルフのご対面~わぉ綺麗な金髪」


女エルフ(ド、ドワーフ?…聞いてないわ)


剣士(この子はドワーフの女海賊…大丈夫だよ)


女海賊「私の分かんない言葉使うな!…足見せて?」


女エルフ(ドワーフに体を見せるなんて…屈辱)


剣士(大丈夫…言う事聞いて?)


女エルフ(……)スック



女エルフは樽から出て立ち上がった



女海賊「お?立った…て細っそ!ちょいそこに横になって足見せて?」


女海賊「てかなんで裸なのさ…ちゃんと毛皮で隠さないと丸見えなんだって」


女海賊「あ…剣士には見え無いか…まぁ良いや」


女海賊「ホラ?怪我してる足出して!」


女エルフ(……)ソローリ


女海賊「あららら…血は止まってるけど骨が露出してんじゃん!剣士コラ!なんで怪我の事言わないのさ!」


剣士「血生臭くて分からなかった…触っても居ない」


女海賊「これ壊死しかけてるよ?…薬草じゃどうにもなんないな…どうしよう」


女エルフ(え?そんなに)


女海賊「これ切断しないと敗血症で死ぬよ?」


女エルフ「足を無くすくらいなら…」


女海賊「お?しゃべれるんじゃん」


剣士「医者に見せよう」


女海賊「何バカな事言ってんの?この子はエルフだよ?捕まって言い様にされるに決まってんじゃん」


剣士「切断しか方法は無い?」


女エルフ「イヤ…そんなのイヤ」ブルブル


女海賊「んんんんシャ・バクダまで持つかなぁ?回復魔法とかあればなぁ…」


剣士「……」---回復魔法?---


女海賊「このハズレ町からシャ・バクダまで早くて3日…薬草で何とか持たせるのに賭けるか」


剣士「触るよ?」…剣士は女エルフの足に手を添えた


女エルフ「え?」


女海賊「おい!!裸の女に勝手に触るな!!」


剣士「回復魔法!」シーン 何も起きない


女海賊「何やってんの!あんたはバカか?」


女エルフ「あなた魔法使えるの?回復魔法は触媒に水とミネラルが要るの」


剣士「触媒?」


女海賊「ミネラルは爆弾の材料で少し持ってるケド…あんたのメルヘンに付き合ってる場合じゃ無いさ」


剣士「貸して」


女海賊「もう!勝手にしな!!私は薬草用意する」


剣士「ミネラルってどれの事?」


女海賊「ああぁぁいろいろ忙しいなぁ…小ビンに入ってる白い粉!!メルヘンは早く終わって馭者やってよ」


剣士「これか…もう一回…回復魔法!」ボワー 薄い光が溶け込んだ


女エルフ「ぁ…」


女海賊「お?光った?マジ?…」


剣士「回復魔法!」ボワー


女エルフ「ぁぁ…ん」


女海賊「マジでマジか!!でもちょい待って…その光は目立ちすぎる…町出てからにして」


剣士「わかった…馭者試してみる」


女海賊「てか適当に走ると馬車ぶつけちゃうから妖精は剣士の目になってあげて!」



ヒヒーン ブルル


ガラゴロ ガラゴロ



女海賊「お?動いた…なんで?!まぁ良いや…人通り避けて町を出て」


妖精(もっと右…そうそう)


女海賊「あんた!?手綱持ってないの?」


剣士「馬とお話した」


女海賊「アハ!あんたは便利だねぇ…条件何だったの?」


剣士「おしりを叩かない約束と牧草」


女海賊「馬に任せといて良い感じなん?」


剣士「妖精が馬に指示してくれてる」


女海賊「馭者は妖精で良いって訳か…さっすが妖精!今日はわたしのおっぱいの真ん中で寝かせてあげるわ」


妖精「……」シラー


女海賊「おい妖精!!聞いてんのか?」


妖精「アハハ…先約があるんだー」


女海賊「なぬ?…まさか…」ジロリ 女海賊は女エルフの顔を見た


女エルフ「……」プイ 女エルフは知らない振りをしている




急なドタバタ劇だったがこうして無事に女エルフを連れ出しハズレ町を出る事が出来た


行き先は北へ…火の国シャ・バクダへ向かう




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