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ざまぁっっっ!!

 アレックス王子が激怒する女王を、まあまあとなだめる。

「マユが言いたいのは父上や私たち王子が命を狙われたから、女王は犯人であるはずがないということですね?」

「はい……。わたしが殺されかけたのは邪魔だったからかもですけど、王様や王子たちは違います……」

「フェイクだったとしたら?」

「え? フェイク? ニセモノ?」

「本当の目的はマユで、それを悟られない為に私たち王族を殺すように見せかけていたとしたら?」

「ええっ!?」


 アレックスは優雅に微笑む。

「思い出してください。礼拝堂でシャンデリアが落ちてきたのは、マユがいた場所です」

「でも……!」

「その後に父上や私たち王子を狙った事件で、実害をこうむったものはないでしょう?」

「でも毒入りケーキはどうなんですか!?」

「致死量じゃないケーキを食べても、死にはしませんよ」

「王様の部屋の火事は!?」

「父上が部屋にいないとわかった上で、放火したとしたら?」

「…………」

「おそらく最初はマユの悪い噂を流して、マユを城から追い出そうとしたのでしょう。けれどマユは城から出ていかなかった」

「だって帰る場所がないから!」

「次は事故に見せかけて、礼拝堂でマユを殺そうとしました。でも失敗してしまった」

「…………」

「何度もマユが狙われたら、マユが目的だと気づかれます。だから父上や私たち王子を狙っているように見せかけた。あれこれあったのに誰も殺されなかったのは、そういうわけでしょう」

「王様や王子たちを……殺すつもりはなかった?」

「そうです」

「アレックスたちは……王様やアレックスは、気づいていたんですか?」


 アレックスと王は、困った顔で目を見交わした。

「父上も私も確信はありませんでしたけれど、そうではないかと疑っていました」

「なんで教えてくれなかったんですか!?」

「言えばマユがおびえるでしょう? だから私たち王族が狙われていると思わせたかった」

「わたしを怖がらせないために……?」

「常に命を狙われているのは、精神を削られますからね。私たち王族は慣れていますけれど、マユはそうじゃないでしょう?」

「…………」


 プランタジネット王は緑の目を細めてマユと王子のやり取りを聞いていたが、不意に口を開いた。

「今日が期限だったのだろう?」

「え?」ベッラ女王がビクっとする。

「さっき私たち王族が死んだらバラルディ公爵の娘であるコリンナ嬢が王妃になると聞いて、驚いていただろう?」

「…………」

「今日の宴で婚約を発表するのは、マユと王族だと思っていたのだろう? だから婚約が発表される前に、是が非でもマユを消したかった」

「…………」

「婚約を発表するのは王弟子息のカールとコリンナ公爵令嬢だ。マユじゃない」

 ベッラ女王はうつむいて肩を震わせていたが、昂然と顔を上げた。

「もうたくさんです! 帰らせていただきます!」

「いいのか? まだ疑いは晴れてないぞ?」

「何のことです!?」

「さっき、マユを見たときにしゃくを取り落としただろう?」

「それが何だというのです!?」

「まさかマユが生きているとは思わず、驚いたからだろう?」

「そんなことはありません!」

「調べれば証拠はいくらでも出てくる。差し当たり、エルザとエンゾの部屋を調べさせよう。貴女との繋がりが一つでも見つかれば、容赦はせぬぞ」

「…………」

「大事なマユを亡き者にしようとした貴様を許しはせぬからな」


 アレックス王子が静かに言った。

「父上だけではありません。私たち王子もです。二度と同じ過ちは繰り返しません。マユを守る為なら、貴国を徹底的に潰します。あなたの大事な国が、あなたの愚かな行いで焼き尽くされるのを見ていればいい」

 オスカーは口元を固く結んで深く頷く。そして小さなノエルは天使のように可愛らしい笑顔で言った。

「女王さまはボクのだいすきなマユを殺そうとしたのを、死ぬほどこうかい(後悔)すればいいと思うの♪ ううん、死んだほうがマシだと思うくらいこうかい(後悔)すればいいとおもうよ♪」


 ベッラ女王はその場にへなへなと座り込んだ。呆然自失の表情は、彼女が犯人だと雄弁に物語っていた。


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