謎がスルスルと解けてゆく
王はエメラルド色の目を細める。
「マユの悪い噂も私や王子たちを狙った事件も、この二人が犯人だった。そして二人は正直に自分の罪を認めた。マユもそろそろ正直に言う時だぞ?」
「え? わたしですか?」
「マユが夜中にウロウロしたり、部屋で何をしていたか言わなかった理由は何だ?」
「……言いたくありません」
「それでいいのか?」
「え?」
「この姉弟の口振りからすると、背負わなくていい罪まで自分たちの罪だと言うぞ? マユの罪まで自分がやったと言い出しかねんが、それでもいいのか?」
「そんな……!」
アレックスは、にこやかな笑顔で言い放つ。
「父上、それで良いではありませんか。二人がマユの罪を背負ってくれるなら結構なことです♪ 二人のせいにしておいて、マユには潔白でいてもらいましょう♪」
マユは血相を変えて大声を出す。
「そんなことできません!」
王は狙いが当たってニヤリと笑う。
「それなら夜中に何をしていたのだ?」
「…………ウロウロしていたのは取材です」
「部屋で何をしていた?」
「…………お話を……書いていました」
王は驚いて目を見開く。
「取材と話を書いていただと? なぜそんな面白いことをわざわざ秘密にしていたのだ?」
「だって言えば読ませろって言うでしょ!?」
「ははぁ~ん! さては私たちのことを書いていたのだな?ww」
「ぐっっっ!!」図星を指されてマユは言葉を失う。
「やはりそうか♪ 後で読ませろ。ww」
「だから言いたくなかったんですよ!!」
王はマユがうなだれるのを笑顔で見ていたが、真顔に戻ると姉弟たちのほうへ向き直った。
「それで? お前たちにマユを殺すよう指示したのは誰だ?」
エンゾもエルザも口を閉じたまま答えない。
「誰に言われてマユを殺そうとした?」
エンゾが大声を張り上げた。
「それは言えません! 孤児の僕たちを拾って育ててくれた方です! 大恩ある方を裏切ることはできません!」
王はしばらく二人を見つめていたが、堅く口を閉ざしたまま沈黙が続くのであきらめたようだ。
「マユ、犯人は誰だと思う?」
マユは自信がなさそうに、小さな声でつぶやく。
「……バラルディ公爵??」
それを聞いたザクセン王は爆笑し、バラルディ公爵は怒りで飛び上がった。
「オットー!! 黙れ!! そのバカ笑いをやめろ!!」
「ハハハハハ! お前、一体なにをやらかしたんだ!?」
「うるさい!! ワシは何もしておらん!!」
「ハハハ! あまり笑わせるな! 足の傷に響く!」
レティシア皇太子妃が心配そうに気遣う。
「お義父さま、大丈夫でいらっしゃいますか?」
「ハハハ! 大丈夫だ! あんまり可笑しくて痛みを感じない! マユ殿、バラルディ公爵はオレの幼馴染みだ! 口は悪いが、悪だくみをするような奴じゃない! ハハハ!」
公爵はザクセン王を睨んでいたが、くるりとマユへ向き直った。
「貴様! 命の恩人のワシを殺人者呼ばわりするのか!?」
恐ろしい顔で睨まれたマユはあわてる。
「だってさっき王様たちが被害にあってないって知ったら、残念至極とか言ってたじゃないですか!?」
「あわわ、やめろ! それは言うな! 貴様などかばってやるんじゃなかった! 貴様が婚約の儀で言い間違えた時に、剣の露にしてやればよかった! 礼拝堂でこんがり焼き上がるのを待っておればよかった!」
「かばってくださったのは感謝してますってば! でも王も王子もみんな死んだら、公爵の娘さんがプランタジネットの王妃になるじゃないですか!?」
「え?」ベッラ女王は小さな声を漏らすと、あわてて口元を手で覆った。
プランタジネット王はそんな女王をじっと見ていたが、マユを見て優しく微笑んだ。
「バラルディ公爵は違うらしい。他に誰かおるか?」




