謎解きが始まる
プランタジネット王は、緑色の瞳で考え深げにエルザとエンゾを見つめる。
「なぜマユを殺そうとしたのだ?」
「…………」二人は口を閉ざしたままだ。
「答える気はないか。それならマユの推理はどうだ?」
マユは言いにくそうにボソボソつぶやく。
「……誰かがエルザさんとエンゾさんに、わたしを殺すよう言ったんだと思います」
「なぜだ?」
「……わたしが……ジャマだったんだと……思います」
「マユを殺して、得をするのは誰だ?」
「わかりません。でも、王様や王子たちも殺すつもりだった!」
「なぜそう思う?」
「忘れたんですか? 王様や王子たちは何度も狙われたでしょう!? みんな殺されるところだったんですよ!」
王はアレックス王子と目を見交わせると、互いに頷きあう。
「確かに色々とあったな……。礼拝堂の天井が落ちたり、上から物が降ってきたり、巨大な像が倒れたり、馬が暴れたこともあったし、図書室の棚が崩れたこともあった。そのうちの幾つかは事故かもしれないが、毒入りケーキや寝室の火事は明らかに故意だ」
ノエルが不満そうに口をはさむ。
「ボクのおふねが、しずんだこともあったよ!」
「そうだな」
王は厳しい顔でエルザとエンゾを見つめながら、マユに問いかける。
「マユ、この者たちはお前の動向を知っていたようだが、どうやっていたと思う?」
マユが言おうか迷っていると、サラが飛び出した。
「あたしが悪いんです! エルザやエンゾにあたしがマユ……マユ様のことをしゃべりました!」
「例えばどのような事を話したのだ?」
「マユ様が王様たちといっしょに礼拝に行くとか、議員たちにウエディングケーキの試食を出すとか……」
「二人はお前に、マユのことを尋ねたのか?」
「ちがいます! あたしがベラベラしゃべったんです!」
縛られて動けないエンゾは、精一杯緑色の髪を振りたてる。
「違う! 僕も姉さんもマユ様のことを知るためサラに近づいた!」
エルザは瞳に涙をためて反論する。
「サラは聞かれたことに答えただけです! サラは悪くないのです!」
王は姉弟をじっと見据える。
「やっと喋る気になったようだな。これ以上、サラの立場を悪くしない為、正直に話せ。マユの悪い噂を広げたのは、お前たちだな?」
「……はい」 エンゾが消え入りそうな声で答える。
「マユの動向を探ってつけ回し、マユの近くで事件を起こして彼女を犯人に見せかけたのか?」
「……そうです」
「男たちへ送った恋文も?」
「……姉さんがマユ様の便箋を手に入れて、僕があちこちへ届けました」
「礼拝堂の扉に打ち付けられた蛇は?」
「……姉さんが洗濯室からマユ様のハンカチを手に入れて僕が……」
「毒入りケーキは?」
エルザが声をあげた。
「わたくしがスミレの花とトリカブトを入れ替えました。弟は関係ありません!」
「ふむ……。神像を倒したのは?」
「それは僕です! 姉さんは知りませんでした!」
「図書館の本棚を倒したのは?」
「…………」
「それは二人の仕業か?」
「…………そうです」
エルザとエンゾはガックリうなだれた。




