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何か、やらかすらしい

「なんだ? ねぇちゃん?」ドリドリは慌てて涙をぬぐう。

「あのぅ~。お話、聞いちゃいました。すみません……」

「かまわねぇよん。なぁ、ダズッチャ!?」

「……オラ、悪いことは一つもしてないから、かまわんっちゃ。ううう……」

「わあぁっ! ダズッチャさん泣かないでください! ちょっとお願いがあるんですけど」

「なんだよん?」

ドリドリが尋ねるとダズッチャも興味をひかれたようで、泣きながらもマユを見ている。

「その宝石で、ネックレスを作ることはできますか?」

「ダズッチャ、どうだよん?」

「……できるっちゃ」

「良かった! じゃあお願いします。宝石は、台座からすぐ取り外せるようにしておいてください」

「……でも、なんでだよん?」

「結婚記念日は明日ですよね? 時間がないから後で説明します」

「それって、ダズッチャのカアチャンが喜ぶ話かよん?」

「うまくいけば……」

「ちょっと待ってろ。おにはやで作ってくる! ダズッチャ行くよん!」

ドゥワーフたちはスツールから飛び降りると、バタバタと店を出ていった。


ルウとガングは心配そうだ。

「マユ、大丈夫か?」

「わからないです……」

「なにするつもりだ?」

「ちょっと……。気の毒すぎて思い付きで口出ししたけど、失敗だったかも……」

マユが不安でガタガタ震え出したので、二人は聞くのをやめた。

「こういう時は、カラダを動かすにかぎるぜ! マユは皿を洗ってくれ! ルウは掃除! また夕方からテンテコ舞いだ! たのむぜ!」


 三人で夕方の開店準備をしていると、夕日を背にドリドリとダズッチャが駆け込んできた。

「できたよん! 首飾りだよん!」

「早いなっ!」薄暗い店内でランプに火を灯していたガングが感心する。

「オラたち、めちゃ頑張ったよん! ねえちゃん、コレをどうしたらいいんだっ⁉」

マユが進み出る。

「私に貸してください。それから、ちょっと変装したいんです」

「ニャルの部屋に何でもあるぞ。ルウ、案内してやってくれ」

 数分後、ニャルのドレスで飾り立てた厚化粧の中世貴婦人が出てきた。派手な金髪のクルクル巻き毛に大きな羽飾りのボンネットをかぶり、幾重にも重ねたレースのペチコートで青い絹のドレスは最大限に膨らんでいる。動くたびにあちこちのリボンが揺れて、派手なことこの上ない。そして胸元には緑色のネックレスが光っている。ドリドリたちは驚いた顔で派手な貴婦人を眺める。

「オメェさん、さっきのねえちゃんか!? 違う人みたいだよん!」

「えへへ。マユです」

 言いながらマユは、胸元のネックレスをランプにかざす。

「やっぱりニセモノですね。本物のアレクサンドライトなら、ランプの光で紅色に見えるはずです」

「……ニセモノをカアチャンに贈りたくないっちゃ」 傷ついた顔でダズッチャがつぶやく。

「そうですよね。ところでガングさん、この辺で一番豪華なホテルってどこですか?」

「近くの街に『ザ・ルッツ』ってホテルがあるぞ。どの部屋にも主寝室と別に、執事とメイドの部屋があるらしい。使用人を引き連れたお貴族様しか泊まらないホテルだ」

「わかりました。ソヴリンさんの店は、どこですか?」

「この店を出て左にしばらく歩けばすぐだ。今のマユみてぇな、ピカピカの派手な店だ。 見逃す心配はねぇ!」

「わかりました。幸運を祈っていてください」   

マユは緊張で顔を青くしながら店を出ていった。残された一同は心配そうだ。ドリドリとガングが言い合う。

「おねぇちゃん、大丈夫かよん?」

「どうだろう? さっきパンドラから来たばっかだしな」

「またニャルがやっちまったのかよん?」

「ああ。そうだ」

「ニャルは何しに行ったよん?」

「なんでもパンドラで流行ってる『スタバの新作フラペチーノ』ってヤツが欲しいらしい」

「そっか……。ねえちゃんも気の毒だよん……」


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