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華麗なパレードが見えないんだが?

 各国から世紀のカップルを一目見ようと群れをなして集まった民たちがお祝いの垂れ幕や応援ウチワ、旗やローソクを持って幾重にも人垣を作っている。揃いの衣装でクルクル踊る踊り手たちや、晴れやかな音楽を奏でる楽師たちを満載した山車の後ろへ新郎新婦を乗せた絢爛豪華な馬車と、一糸乱れぬ行進で進んできた騎士団が合流すると、盛大なパレードが始まった! 次々と花火が上がり、楽師たちは楽器をかき鳴らす♪ 音楽に合わせて何百人もの踊り手たちが華麗な祝いの舞を披露する。しかし群衆たちから不満の声が上がった。


「おぉ~い! 熊の獣人たちよぉ~! しゃがんでくれや~!」

「オオカミの獣人もだ~! お前らがデカくて見えねぇんだ~!」

「でっかいヤツは座っておくれ~!」

「後ろにも見せておくれ~!」


 身の丈2mを超す獣人たちは、お互いを見やった。


「たしかにオレたちがいると見えねぇな!」

「みんなに見せてやりたいぜ!」

「やるぜ!」

「オレたちはやるぜ!」


 巨大な獣人たちは群衆をかき分けて沿道へ進み出るとドシドシと足音を響かせて新郎新婦の馬車へ近づいていった。近衛兵たちが制止しようとしたものの大きな身体にはじき飛ばされる。騎士団が剣を抜いて斬りつけようとしたが素手で剣を止められ「まあまあ! いいから!」と軽くいなされてしまった。何事が起こるのかと一同が息を呑んで見つめていると、獣人たちは軽々と二人が乗った馬車を持ち上げた! 別の獣人たちは20頭の馬を持ち上げている!


「これで見えるようになったか~?」

「よく見ておくれや~!」

「大事な花嫁さんと花婿さんだ! そっと運べよ~!」

「がってんしょうち!!」

「それじゃあ、いくぞ~!」


 それを見ていた大勢の獣人たちが大笑いしながら群衆の中から進み出て、獣人の道の続きをを作る。


「こっちは準備できたぞ~!」

「揺らすなよ~!」

「おめでとう~!」

「ずうっと幸せにな~!」


 獣人たちに馬車ごと高々と持ち上げられたレティシアとアンドレアは目を丸くして驚いていたが、揺れもせずスルスルと進むようすを見ると大笑いしながら群衆へ手を振り始めた。生まれて初めて持ち上げられた20頭の白馬たちも最初は怯えて暴れる素振りを見せたが、安定感のある大きな手で優しく運ばれるうちに安心したのか横倒しになったままおとなしく獣人の手から手へ送られてゆく。獣人の道はどこまでも続き、新郎新婦は遠くまで見渡しながらにこやかに手を振る。群衆たちはウチワや旗を振り回して二人にお祝いの声をかけた。結局この珍妙なパレードはプランタジネット城へ入るまで数キロメートルに渡って続き、獣人と人との温かい交流として後の世に語り継がれたのであった。


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