華麗なパレードが始まるよ☆
無事に儀式が終わった頃、地平線から二人の未来を象徴するような輝かしい朝日が昇った。
二人の門出を祝福するかのようにあらゆる種類の鳥たちが声高らかに歌を唄い、それに応えるように太陽は幸せな世界を照らし始めた。朝露の降りた大聖堂の前には、ありとあらゆる種族の者たちがひしめき合っている。手には「祝♡ご成婚」「神推し♡レティシア」「求む!投げキス×××」「ラヴラヴ♡アンドレア♡」といったウチワや、色とりどりのローソクを持っている。群衆の前に立つ各国の近衛兵たちも「我らは国民とともに!」「今日は来てくれて、ありがとう!」「アンドレアとレティシアの推しは民たち♡」などレティシアたちが作ったウチワを、よく見えるようズボンに挿している。
神馬のように真っ白な馬たちの引く20頭立ての馬車が大聖堂の正面玄関へ到着した。聖堂の大きな扉が開くと、歓喜に満ち溢れた新郎新婦が現れ群衆は熱狂した!
「おめでとうございます!」
「お二人に天空神ユーピテルのご加護を!」
「いつまでもお幸せに!」
「お二人でキスして~!」
「わはははは! 二人でキスしてください~!」
「キース! キース! キース!」
群衆が声を合わせて叫ぶキスコールに二人は戸惑ったようすを見せたが、すぐに笑顔を浮かべた。レティシア皇太子妃が顔を差しだすと、アンドレア皇太子が頬にキスをした。
「ほっぺじゃなくてぇ~!」
「唇じゃけん~!」
「口づけですよぉ~!」
「まうす つう まうすですじゃぁ~!」
「キース! キース! キース!」
二人は口づけの要望に大笑いすると、口づけをした。5秒……10秒……30秒……1分……。
「…………」
「…………」
「…………」
「長いですぅ~!」
「もう、おなかいっぱいですぅ~!」
「あとはお二人になってからお願いしますぅ~!」
「その時はお好きなだけどうぞぉ~!」
大爆笑に囲まれて、新郎新婦は馬車に乗り込んだ。20頭立ての馬車の前後左右をプランタジネットとザクセンの騎士団が取り囲む。出発のファンファーレがさわやかな朝に響き渡ると、パレードの一団はお祝いの歓声を受けながら新しい一歩を堂々と踏み出した。
聖タルーマ山の麓には、新郎新婦のパレードと合流する楽団や踊りの一団が今や遅しと待ち構えていた。そして沿道には人人人! 獣人獣人獣人! 他の種族や魔女や妖怪もそこここに見える。よく見ると、マユの友達のドゥワーフ一族も集結している。胸元に輝くアレクサンドライトのネックレスを付けているのは、ダズッチャの妻らしい。どうやら本物のアレクサンドライトを手に入れて、ネックレスにしたようだ。ダズッチャは妻へ指輪をプレゼントするつもりだったから、おそらく妻がネックレスのほうが良いと言ったのだろう。妻は時折ネックレスを撫でてそこにあるのを確認すると、隣のダズッチャへ誇らしげに微笑みかける。ダズッチャは嬉しそうな妻を見てニコニコ顔だ。幸せそうな二人の横で、親友のドリヨンや彫金師のゴールディーはワクワクしながらパレードの開始を待ち構えている。
沿道から少し離れた場所を流れる小川のほとりで、30人ほどのカッパ一族が無言で水から顔を出している。一人のカッパがズッキーニを取り出すと、黙って隣のカッパに手渡した。みずみずしいズッキーニを受け取ったカッパは、無言で隣のカッパに手渡す。次からつぎへと渡されるズッキーニを全員が1本ずつ手に持つと、一同は乾杯のゼスチャーをして無言でニコニコしながら齧りだした。みんな静かだな! なんかしゃべれよ!




