皆さん気軽にプロポーズしているように見えますけれど、全員マジです!!
マユはぬるくなった紅茶を飲む。熱い紅茶も美味しいが、少し冷めた紅茶も美味だ。
「コリンナさんが王弟子息のカールさんと結婚することになったから? たしかにそうですけど……」
「私はバラルディ公爵が犯人とは一言も言っていませんよ♪」
「それはそうですけど……」
アレックスは魅力的な笑顔を見せる。
「それにマユ、考えてみてください。もしマユと私の間に子どもが授かれば、その子は王位継承者です。そうすれば王位が王弟一族へ移ることはありません」
「おっしゃることはごもっともですが、私は誰とも結婚しません!」
「国のために私の妃になってもらえませんか?」
「いやです!」
王が笑いながら大げさに目を丸くする。
「マユは私の妃になるのだ! アレックスには義理の息子という立場で我慢してもらおう!」
「おとうさまもおにいさまもやめて! マユはボクのおよめさんになるんだから!」ノエルが足をバタバタさせる。
オスカーは皆のやり取りを驚いた顔で見ていたが、意を決したように立ち上がるとドスンとマユの横に座った。そのようすを見ていたアレックスが大笑いする。
「いよいよオスカーもマユの争奪戦に参加する気になりましたか!ww でも私は負けませんよ!」
王は笑いながら胸に手をあてて情熱的に訴える。「マユ、王妃になってくれ」
「ボクのおよめさんだってば!」ノエルは頬をふくらませる。
オスカーが赤面しながら声をあげた。
「……俺だって……!」
「おぉ! とうとうオスカーが口を開きました!ww」アレックスが大仰に驚く。
「オスカーは父に逆らうのか?www」非難する王の目は笑っている。
「おにいさまもおとうさまもやめて!」ノエルは両腕を振り回す。
わちゃわちゃする4人にたまりかねたマユは立ち上がった。
「やめてください! 誰とも結婚なんかしません! 王様もアレックスも面白がってるだけでしょう!?」
「おぉ、なんということだ! まさか私の愛を疑うとは!!ww」
「父上はともかく、私の愛は本物ですよ♡ww」
怒りに震えるマユがプルプルしながらドスのきいた声を出す。
「……なんで……なんでそんなに……カラんでくるんですか……!?」
王とアレックスは顔を見合わせると、同時に口を開いた。
「「マユの反応が面白いから♡ww」」
「やっぱりそこか……!」マユは膝から崩れ落ちた。
疲れるお茶会を終えてマユはげんなりした顔で居室に帰ってきた。サラはご機嫌で口笛を吹きながら黄色の薔薇を花瓶に活けている。
「マユ、おかえり! エンゾからもらったバラ、マユにあげるよ!」
「サラの部屋に飾ればいいのに」
「部屋にはもう飾ってるよ。たくさんくれるから飾りきれないんだ♡ 二人部屋だから場所もないし」
「ありがと」
「エルザがこのバラは香りが良いって言ってたよ」
マユは黄色の薔薇に顔を近づける。
「ん~! いいニオイ! 甘い香りがする! 香水みたい!」
「あはは! エルザも香水みたいだって言ってた! エルザとあたしの服にも香りがするって!」
「エルザさん? エルザさんって誰だっけ? 聞いたことのある名前だけど」
「レティシア様の第5侍女だよ」
「エルザさんと同じ部屋なの? モリーさんじゃないの?」
しまったという顔をしてサラの目が泳ぐ。
「ん~。まあ、ちょっとね……」
「どうしたの? なにかあったの?」
「ん~。べつに……」
目を合わせようとしないサラを見てマユはため息をつく。
「ごめん。私の悪いウワサのせいよね」
「マユはなんにも悪くないよ! モリーがあれこれ聞き出そうとするから!」
「ケンカしちゃったの?」
サラはオレンジ色の前髪をさわりながら頬をふくらませる。
「ケンカっていうほどのことじゃないよ……。マユの悪いウワサを信じるなんて、アタマにおがくずでも詰まってんじゃないの?って言っただけ。そしたらモリーがあたしと一緒の部屋はイヤだって言うからさ……」
「……ごめん」
「だからマユは悪くないってば! それにエルザはあたしと同じ部屋がいいって前から言ってし、ちょうど良かったんだ!」
「エルザさんはウワサを気にしてない?」
「うん! エルザはマユのことが好きなんだって! だから悪いウワサなんてぜんぜん信じてないって言ってた♪ それにマユのことを話してあげると喜ぶんだ! 王様たちに溺愛されて、童話のお姫さまみたいだって♪」




