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なんでもない知識が意外と役に立つらしい……♪

 放火事件のあった翌日、アフタヌーンティーの時間になってもマユはまだ暗い顔をしていた。小さなノエルは彼女を元気づけようとマユに抱きつき、オスカーは心配そうな顔で見つめている。アレックスが皿に盛った色とりどりの美しい菓子をすすめながら、優しい声音で言葉をかける。


「マユ、どうしたのですか? お顔の色がすぐれませんよ」

「……はあ」

「昨日の放火騒ぎが気になりますか?」

「……ええ」

「安心してください。犯人がわかればマユの疑いは晴れます。私がきっと犯人を捕まえますから」


 二人の会話を聞いていた王がテーブルにカップを置く。

「マユに相談があるのだが」

「……なんでしょうか?」

「レティシアとアンドレア王子の結婚の儀で、両国に和平の道が開けることを広く国民に知らせたい。文書で知らせることも検討しているが、もっとわかりやすい方法はないものだろうか?」

「お二人が結ばれることで、両国が結ばれると知らせたいのですか?」

「そうだ」


 マユは熱い紅茶を飲みながら考える。

「文字が読めない妖精やカッパもいますよね……。」

「ドゥワーフや獣人の中にも、字の読めない者がいるな」

「そうなると文書はわかりにくいですね……」

「ぱっと見てわかる方法はないだろうか」

「ぱっと見て……平和……お祝い…………パレードはどうでしょうか?」

「ぱれーど? それは何だ?」

「レティシアさんとアンドレア王子が馬車に乗って、華やかな行進をするんです」


 王の顔が明るくなる。

「華やかな行進? 楽しげだな!」

「ええ。お二人は結婚衣装を着て、集まった国の人たちの前を行進してお祝いしてもらうんです」

「国の民たちが間近で王族を見る機会は今までほとんど無かった」

「きっと皆さん見たいと思います。それに直接お祝いを言いたいだろうし」

「民たちが沿道から王族へ声を掛けるのか!? それは良いな!」

 王の弾んだ声につられてマユの表情も明るくなる。

「ウチワとかペンラで盛り上げてもらうという方法もあります」

「うちわ? ぺんら?」

「後で作ってお見せします。こちらの世界に電気はないからペンライトはロウソクになりますけど」

 王は満足げに緑色の目を細める。「マユに相談して良かった!」


 ニコニコ顔の王のそばでアレックスも微笑む。

「マユには色々なことで助けてもらっています。どうぞご自分に自信を持ってください」

「はあ……」

 昨夜の一件を思い出したマユの顔が曇るが、アレックスは笑顔を崩さない。

「レティシアが行方不明になった時も、どこにいるか推理してくれたでしょう?」

「あれはたまたま当たっただけで……」

「今回の騒ぎも誰が犯人か推理しているのではありませんか?」

「……えぇ。まぁ」


 小さなノエルが目を輝かせる。

「マユはだれだとおもうの? おしえて?」

 オスカーが無言で何度もうなずく。王やアレックスも興味津々の顔だ。


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