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ざわつくお茶会

カベー王国の宮廷音楽師たちが奏でる優雅な音楽の流れる中、薔薇が咲き乱れる庭園へ王と美麗三王子がマユを伴って姿を現わすとベッラ女王と三人の王女たちは席を蹴って立ち上がった。


王はまるで気持ちの込もらない挨拶を述べる。

「天気だけは良い日だ」

ベッラ女王は上機嫌で、礼儀も構わず王の腕を取る。

「皆様におかれましては、ご機嫌うるわしゅう♡ 王はどうぞここへお座りになって♡」

王子たちと同じ年齢の王女たちも、それぞれが王子に腕をからませる。

長女のベレニスが金髪を揺らしながら甘ったるい声でアレックスに話しかける。「アレックス王子様、22歳のお誕生日おめでとうございます♡ 私も22歳になりましたの♡ 二人が同じ年齢なんて、運命を感じませんこと?」

「それは……べつに……おめでとうございます……」いつもは悠然としたアレックスがタジタジになっている。

次女のベアトリスは青い瞳を輝かせながらオスカーを見上げる。

「オスカー王子、お勉強の進み具合はいかが?」

「…………」

オスカーは返事に困って黙り込む。しかしベアトリスは気にせず話しかける。

「せっかく同じ年なんだから一緒にお勉強しましょうよ!」

「…………」

「いつにします?」

「…………」

「来週はいかが?」

「…………」無言で首を横に振るオスカー。

「じゃあ再来週にしましょう!」

「…………」さらに強く首を振るオスカー。

「じゃあその次の週に決定です! これは予定ではありません! 決定です!」

「…………!?」

オスカーは横に首を振りながら無理やり組まれた腕を振りほどこうとするが、ガッチリ押さえられて逃げられない。


三女のベルナデットにいたっては、姉たちのように王子に言い寄る手間も惜しいようだ。腕を組んだノエルに口づけをしようとして、必死で逃げるノエルと無言の戦いを繰り広げている。


女王や王女の厚かましい言動にどん引きしたマユが立ち尽くしていると、ベッラが横目でチラリと見やった。

「こちらの方は?」

ほっとした顔で王が席から立ち上がる。

「ご紹介しよう。マユ嬢だ。しばらく我が城に滞在してもらう。マユ、こちらはカベー王国のベッラ女王と王女たちだ。さあマユ、私の横へ座りなさい」


王の言葉をきっかけに王子たちがからまった手を振り払って王女たちから逃げだす。

「マユ、寒くはありませんか? ひざ掛けをお持ちしましょうか?」

「ボクもマユのおとなりにすわりたいな♪」

オスカーは黙ってマユの椅子を引いてやる。

四人にちやほやされながら座るマユをじっと睨むベッラと王女たち。冷たい視線にさらされて、マユの背中に冷や汗が流れる。


一同が着席してお茶や菓子を待つ間、ベッラはマユに話しかけた。

「黒い髪だけでもお珍しいのに、瞳の色まで黒いのですね……。あなた、ご出身はどちら?」

「うぇ……うぁ……日本……こちらではパンドラと呼ばれているところです……」

「パンドラの日本ですって……? たしかお隠れあそばした王妃様も、パンドラの日本という場所のご出身でしたわね?」

王がにっこりしながら頷く。「まるで王妃が戻って来たようで、私も王子たちも喜んでいるのだ」

ベッラは赤色の目を細めて訝し気にマユを見つめる。

「……そういえば、面差しが王妃様に似ていらっしゃいますわね……」

王や王子たちは嬉しそうにうなずく。

「やはりそうか!」

「鼻の低いところがそっくりなのです!」

「ボクはおぼえてないけれど、みんなおかあさまとマユが似てるっていうよ! とくにお胸がないところ!」

マユはため息をつく。

「亡くなられた王妃様も、鼻が低くて貧乳だったんですね……」


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