お茶会に必要なものは?
王と美麗三王子は四人で顔を見合わせると、王が口を開いた。
「マユはいてくれるだけで充分だ!」
王の言葉に王子たちが同意する。
「マユは呼吸をしていてくださるだけでいいのです♪」「だってボク、マユが大好きだもの!」「…………そうだ!」
マユは黒髪を振り乱す。
「そういうわけにはいきません! お掃除でも何でもします! 働かせてください!」
アレックスはにっこりする。
「マユは真面目ですね。そういうところにも心惹かれます」
一同はニコニコしながらうなずく。
「ま、まぶしい……!」四人の輝く笑顔にマユは目まいをおぼえた。
一同のやり取りを見ていたレティシアとアンドレアが食卓から声をかけた。
「まずはお朝食を召し上がったらどうかしら?」
「無事に査問会が終わったのだから一緒にお祝いしましょう!」
王たちからエスコートされてマユがしぶしぶ食卓へ座っていると、ノックの音がして執事長のセヴィが足音もなく入ってくると、銀の盆に乗せた封蝋のある書状をそっとアンドレア王子の前に置いた。いぶかしげに書状を読んだアンドレアは息をのむと慌てて席を立った。
「申し訳ありません! すぐ国へ帰ります! 父王が負傷したらしい。幸い軽傷だそうですが国へ戻らないと!」
それを聞いたレティシアも席を立つ。
「わたくしもご一緒しますわ! もう二度とあなたから離れない!」
「レティシア!」
「アンドレア!」
ひしと抱き合う二人を見て顔を赤らめる一同。二人は固く手をつなぎあったまま、あわただしくザクセン王国へ出立していった。
朝食の後。残された一同で食後の紅茶を飲んでいると王が口を開いた。
「今日はマユに会わせたい客がいるのだ」
「どなたですか?」
「隣国のカベー王国のベッラ女王と、三人の王女に会ってほしい」
「よその王族の方に、どうして私が? 私は何をすればいいんですか?」
「何もする必要はない。ただその場にいてくれればいい」
「まさかまたレティシアさんの身代わりですか?」
婚約の儀で大失敗したマユは身体を固くする。それを見た王は苦笑する。
「違う。私と王子たちの心の支えになってほしいだけだ」
「心の支え??」
「会えばわかる」
数時間後。
王と三人の王子は困惑していた。王が執事長のセヴィに投げかける。
「ベッラ女王たちと茶会だと? 女王と会うのは公式訪問に応えるためで、場所は拝謁の間のはずだ」
セヴィも困惑しているようで、いつもは無表情なのに今は戸惑い顔だ。
「王のおっしゃる通りでございます。しかし女王が……」
「会う時間は短縮したい。あの者たちとはできるだけ距離を置きたいのだ。私的な茶会などすれば時間がかかるし、近寄らざるをえない。私も王子たちも公務があると茶会は断れ」
「それがその後の皆様のご公務は、それぞれがカベー王国の貴族や大使との謁見でございまして……」
金色の美しい眉をひそめてアレックスがつぶやく。
「……私たちの予定を押さえるため、故意に自国の者たちをブッキングしましたね……。これでは断ることができません」
不機嫌な顔で王が問いかける。
「しかし急に茶会などと言われても準備はできない。セヴィ、そうだろう?」
セヴィは困り果てたようすだ。
「女王はお付きの者を幾人も引き連れて、すでに庭園にお茶会の準備を済ませていらっしゃいます。茶器はもちろん、テーブルや椅子、なんと東屋までお持ちでして……」
「建物まで持ってきたのか!?」
「はい……。その横では楽団が音楽を奏でております……」
「BGMまで連れてくるとは……!」




