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さよならを言えない……。ムキイイ!!

 プランタジネット王国とザクセン王国の査問会で、公開処刑(という名の結婚式典♡)が決定した翌日。


 マユは朝食の間で、まとわりついて求婚する王や王子たちを振り払いながら言った。

「私は誰とも結婚しません! 査問会の結果は聞いたので金の狼停へ戻ります! 皆さんどうぞ末永くお元気で!」


 食卓に座っているレティシア王女とアンドレア王子はおやおやという顔で互いの顔を見つめ合い、マユを奪い合っていた王と美麗三王子は素早く視線を交わした。


 王は思慮深い緑色の目をきらめかせ、穏やかな笑顔を浮かべながら口火を切った。

「そのことだがマユ、勇者ガングの店は大規模な改修を始めたのだ」

 アレックス王子はマユの黒髪にキスをしながら耳元で囁く。

「ですからマユは、しばらく城に滞在してください」

 次男のオスカー王子も真っ赤な髪の毛を振りたてながら同意するように何度もうなずく。

 末っ子のノエル王子がマユの腰にギュッと抱きつきながらとどめを射した。

「マユはお店に帰れないんだよ!」


「帰れないっっっ!? どういうことですかっ!?」

 動揺するマユにアレックスはニッコリと、とろけるような笑顔を見せる。

「勇者ガングの店は今朝から大規模な改修工事を始めたのです。工期は未定でしばらく休業するそうです」

「今朝から!? 私が昨日お店を出るまで改修なんて話はなかったはずですけど!?」

「なんでも以前から排水管が詰まって困っていたらしい。良い機会だから管を新しくするだけでなく、水回りの大規模な改装もするそうです」

「……たしかに水の流れが悪くて困ってましたけど、ずいぶんと詳しくご存じですね?」

「そ、そんなことはありませんよ……」 


 視線を泳がせるアレックスを見上げていたマユは、麗しい四人をジロリと見た。

「その改修工事のお金を出したのは誰ですか?」

 元気よくノエルが手をあげた。

「ボクお小遣いを出したよ! おとうさまも、おにいさまたちも!」

「こら! ノエル! それは秘密だと言ったでしょう!?」

 あわててノエルの口をふさぐアレックスにマユが噛みつく。

「私を帰さないためですね!? 私を城に足止めするための工事でしょう!?」


 プランタジネット王が悠然と微笑む。

「勇者ガングがかつて国のために尽くしてくれたので王族として謝意を示したまでだ。そしてマユにも礼をしたい。マユのおかげで我が国とザクセンは和平の道を歩むようになったのだから」

 マユは怯えた目で王を見る。「どうして皆さんは私に固執……いえ、執着……いえ……ご親切なんですか?」

 小さなノエルが天使のような顔でマユを見上げる。「マユのことが大好きだから♡」他の三人はノエルの言葉に深く頷く。

「ぐうぅ……。どうして好きなんですか?」


「マユは良いにおいがするから♡」ノエルはマユのドレスに顔をうずめて、くぐもった声で答える。

 いつも厳粛な王が目を細めて優しい顔になると、マユの手を取りいたわるように撫でた。

「私はマユといると、昔に戻った気がするのだ」

 アレックスは愛おしそうにマユの髪に頬ずりをする。

「何をされるかわからないのに、公開処刑を受けると言い切った誠実な勇気に心を奪われたのですよ♡ ぜひ私と公開処刑を受けましょう♡」

 オスカーは真っ赤な髪の毛より赤い顔をして、切ない顔でマユを見つめている。マユを好きな理由を言うことさえ恥ずかしいらしい。


 麗々しい四人に囲まれてマユは呆然としていたが、イケメンたちからスリスリなでなでされている己の現状に気づくとドレスの裾につまずきながら飛びのいた。

「……金の狼停の工事が終わったら、すぐにおいとまします!」

 アレックスが花開くような笑顔を見せる。

「それでは城に滞在してくださるのですね!」

「でもタダでご飯を食べるわけにはいきません! 私にお仕事をください!」

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