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マユの推理は穴だらけ

「そもそもレティシアさんが部屋を出ようとすれば、アニナさんが気づくはず。それなのに気づかなかった」

「それは眠り薬のせいで……」 アレックスは弱々しくマユに反論する。

「アニナさんはレティシアさんが赤ちゃんの頃からそばにいるのですから行動範囲は把握しているはず。それなのに、どこへ身を寄せたかわからない」

「まあ、そうですけれど……」

「何よりレティシアさんの安否を気にしてないのはヘンです。けれどもし安否を知っているとしたら?」


 王子たちは考え込む。


「アニナが……?」天井を見つめるアレックス。

「言われてみれば、考えられねぇ話じゃねぇよな……」赤毛をかき上げるオスカー。

「おねえさまは、一人じゃなんにもできないもん」可愛らしい唇をとがらせるノエル。


 アレックスは考えながら言葉をつなぐ。

「けれどもしアニナがレティシアを匿っているとしたら、問いただしても口を開かないでしょう。アニナは姉の為なら命を差し出すでしょうから……」

 今度はマユが頭を抱える。

「う~ん……。そうなると動かぬ証拠が必要ですね……。はっ! マクラですよ!」

「枕……?」アレックスは首をかしげる。

「そうです! 枕です! 枕って、変わると困りませんか!? マクラが変わると、眠れなくなりませんか!?」

「あまり気にしたことがありませんね……」

「ダメですか!? じゃあドレスは!? ドレスは自分のじゃないと、困りますよね!?」

「確かに着る物がないと困りますね。でも、それが……?」

「レティシアさんは何も持たずに家を出たのですよね?」

「アニナの話では、着の身着のままだろうと……」

「でも家を出ている時間が長くなれば着替えは必要です! もしレティシアさんのドレスが減っていれば、誰かが持ち出したことになる!」

「そうかもしれませんけれど、アニナは宿下がりをしてから城に出入りしていません」


「あ、そうか」当たり前のことに気づいて、マユはポカンと口を開けた。

「それにドレスが減っていたとしても、アニナの仕業しわざと断定できません」

「そうか……」

 行き詰まって頭を抱えるマユの腕にしがみついているノエルが口を開いた。


「ドレスもマクラもないよ。アニナが持っていったもの」

「えっ!?」

 全員がノエルに注目した。

「どうして知っているのですか?」アレックスが身を乗り出す。

「おねえさまがいなくなった時に、もしかしてお部屋のどこかにかくれているのじゃないかしらって、ボクおもったの」

「それで?」

「おねえさまのお部屋をあちこちさがしてたら、アニナが入ってきたから、ボクはかくれたの」

「家族でも勝手に部屋へ入るのは、良くありませんね。そのことについては、後で話し合いましょう。それでどうなったのですか?」

「アニナはボクに気づいてなくて、マクラやドレスをたくさん運びだしたの。お化粧の道具や、クツもたくさん」

「マクラ! レティシアさんもマクラが変わると眠れないんだ!」マユはガッツボーズをする。

「ボク、アニナに何してるの? ってきいたの」

「アニナは何と答えたのですか?」平静を装っているアレックスだが、握った手に力が入る。

「ボクがいるってわかって、すごくビックリしてた。そして『枕やドレスのお手入れをするために持ってゆくのです』って」

「どうして今まで言わなかったのですか?」

「勝手に持ち出すと叱られるからナイショにしてくださいって、アニナが言ったの」

「そうですか……」

「ボクほんとに、アニナがお手入れのために持っていったと思ってたから……言わなくて、ごめんなさい」


 マユがノエルをかばう。

「ノエルを叱らないでください。それに大事なヒントを教えてくれたんだし」

「そうですね。どうやらレティシアの居場所は、アニナが知っているらしい」

「アニナさんの近くに、レティシアさんもいるはずです。宿下がりをした実家でしょうか?」

「アニナの実家は、私たちが静養に使う城の管理をしています。おそらく……」

「そこしか居場所は考えられませんね……」

「レティシアは一人で何もできないので、他の城を探すことさえしていませんでした。けれどアニナが世話をしているとなると話は別です」

「そのお城は遠いのですか?」

「今から急げば、間に合うでしょう」


 アレックスの言葉に、オスカーは驚いて目を大きく開いた。


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