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マユは推理する

 王子の提案に、ガングとルウはマユを見つめる。


「王女がいないまま明日になったら、婚約の儀は中止するしかない。そうなればザクセン王国との間は、悪くなるばっかりだ。なあ、ルウ?」

 ルウは父親の言葉に頷く。

「もしマユが身代わりになったら、3カ月は時間ができる」

「ガングさんもルウも、何を言ってるんですか!? 私にはムリです!」


 アレックスは金髪を揺らして立ち上がると、床にひざまずいてマユに右手を差し伸べた。眉目秀麗な彼がひざまずくのを見て、他の客たちはざわついている。

「どうかマユ、この国を助けるために力を貸してください!」

 オスカーも兄の横にひざを付くと、赤毛を振って懇願する。

「俺からも頼む! 愛する国民を危険に晒したくないんだ!」

 幼いノエルまでがスツールからすべり降りると、兄たちの横に並んだ。

「マユ、おねがい!」


 美しい王子たちにひざまずかれて動転したマユは、三人に駆け寄る。

「やめてください! どうか立ち上がってください!」

「マユが力を貸してくれると言うまで、このままです」

 切ない眼差しでアレックスが答える。

「絶対に動かねぇからな!」

 生意気な口調とうらはらに、子犬のような目でオスカーが懇願する。

「マユ、はやくイエスと言って! このポーズ、おひざがいたいんだよ!」

 天使のようなノエルは今にも泣きそうだ。


 目を丸くしていたドリドリやダズッチャが小声で言い合う。

「あのキレイなぼっちゃんたち、どこかで見たよん?」

「どう見ても、大金持ちっちゃ」

「マユがプロポーズされてるよん!」

「誰を選ぶっちゃろうか?」


 追い詰められたマユはヤケクソになって叫んだ。

「わかりました! やります! やりますとも! やらせてください!」


 三人の王子は嬉しそうに立ち上がり、席に戻った。マユもプンスカしながら席に座ると、話を切り出す。

「私も当事者になってしまったので、色々と教えてください!」

 王子たちは笑顔で応える。

「「「喜んで♪」」」

 麗しい王子たちが一斉に微笑むと、あたりがパアっと明るくなる。眩しい笑顔に目まいをおぼえながら、マユは質問を始めた。


「レティシアさんがお金を持たずに出たというのは、間違いないですか?」

 アレックスは唇に手をあてて考える。

「間違いありません。普段から金銭管理は乳母のアニナがしています。レティシアが現金を持ち歩くことは、ありません」

「それなら宿やホテルに身を隠すのはムリですか?」

「レティシアが素性を明らかにすれば、どこも喜んで部屋を提供するでしょう。けれど、すぐに城へ知らせが来るはずです。知らせが来ないところを見ると、そういった場所へ滞在しているとは考えにくい」

「タダで泊まらせてくれるお友達はいますか?」

「王族や貴族の子女に親しい方はいらっしゃいます。けれどこちらも滞在しているとなれば、城へ知らせが来ます」

「レティシアさんがお一人で、どこかに隠れているということですか?」

「そうだと思うのですけれど、身の回りの世話をしてくれる者なしで、どうやって暮らしているのか……」

 アレックスは心配そうに眉をひそめる。


「乳母のアニナさんは、今もひどく心配しているでしょう?」

「責任を感じて落ち込んでいました」

「いました? 過去形ですか? 今は落ち込んでない?」

「いえいえ! アニナはレティシアを溺愛していますから、今も落ち込んでいると思います。過去形で言ったのは、最近のようすを知らないからです。アニナが半年前に城を出たときは、ひどく落ち込んでいました」

「今はお城にいないのですか?」

「レティシアが家出をしたショックでアニナは寝込んでしまったのです。しばらく実家で療養したいと言うので、宿下がりを許しました。城にいても気がふさぐでしょうから」

「それはレティシアさんがいなくなってすぐですか?」

「ええ。直後です」

「その後、アニナさんからレティシアさんの安否に関する問い合わせはありましたか?」

「ありません」

「心配してるのに、レティシアさんが見つかったか気にしてない? ヘンですね」

「言われてみれば、おかしいですね」

「じゃあ、そういうコトですよね」

「どういう事ですか?」

「アニナさんはレティシアさんの居場所を知っていて、身の回りのお世話をしているということです」

「えええっっっ!?」


一同は素っ頓狂な声をあげた。


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