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ガングが勇者になったのは、ウッカリが原因らしい

 話を切り上げようとするガングを遮ってオスカーが口を開く。

「兄さん、勇者ガングに話を聞いてもらおうぜ。俺たちだけじゃ、どうしようもない」

「ワシがこの国を救ったのは、怪物が出るって話をウッカリ聞いちまったせいだから、どんな話もウッカリ聞きたくないんだが……」

「……オスカーの言うとおり、私たちだけではどうしようもないのです」

「いや、ホントにいいから! ウッカリ聞いちまうと後が大変だから……」

制止するガングを無視してアレックスは話す。

「先ほども言いましたように、私たちにはレティシアという姉がいます。マユさんにそっくりの姉です」

「おっぱいは似てないけどね♪」

 マユの腕にしがみついたノエルが口をはさむ。

「ノエル黙れ!」


 オスカーがノエルを小突く横で、アレックスが話を切り出した。

「レティシアは城で僕たちと一緒に暮らしています。……いえ、暮らしていました」

「……今は一緒じゃないのか?」

 トラブル回避をあきらめたガングの問いに、アレックスは頷く。

「半年前に、城からいなくなったのです」

「きっかけは、一年前だ」オスカーが言い足す。

「そうだったね。発端は一年前に隣国のザクセン王国から使者が来たことです。姉のレティシアをアンドレア王子の妃に望んでいると……」


 ガングは眉をひそめる。

「ザクセン王国? あの国とはいさかいが絶えねぇじゃねぇか。この間も国境線争いで小競り合いがあったばかりだ。あの国と揉めないで済むのは、聖タルーマ山だけだ」

「そうなのです。天空神ユーピテルに幸いあれ」

 アレックスの言葉を他の者が復唱する。

「天空神ユーピテルに幸いあれ」

 どうやら慣用句らしいが、マユはワケがわからない。ポカンとしていると、オスカーが不思議そうな顔をした。

「マユは、天空神ユーピテルを知らないのか?」

「こっち(の世界)に来たばかりなので……」

「聖タルーマ山は俺たちのプランタジネット王国と、隣のザクセン王国をまたいだ高い山だ。そこには天空神ユーピテルが住むという伝説がある」

「そうですか」マユは頷く。

「山で争うと天空神ユーピテルが怒って邪悪神ユディアボルスになるから、タルーマ山では何人も争ってはいけないってしきたりがあるんだ。ユディアボルスという名は邪悪の象徴なので、本当は口にしちゃダメな名前だ」


 ガングが付け足す。

「聖タルーマ山ではダイヤモンドが採掘される。聖タルーマ山の聖石と呼ばれるのは、ダイヤモンドのことだ」

「勉強になります。あ、すみません、アレックスさんのお話の途中でした」

 頭を下げるマユに、アレックスはニッコリ微笑んで話を続ける。金色の髪との相乗効果で、笑顔がまぶしい。


「長年の小競り合いで疲弊しているのは、我が国だけでなくザクセン王国も同じです。国境警備に費やす負担は、両国とも莫大なもの。しかし両国の王家が縁続きとなれば、争いも緩和されるでしょう。そこで両国をつなぐ和平の使者として白羽の矢が立ったのは、誰だと思いますか? マユ」

「……三人のお姉さま、レティシア王女でしょうか?」

「正解です。マユは、話の飲み込みが早いですね」

「いえ話の流れからいくと、誰が考えてもお姉さましか……」

「マユは頭の回転が速いです。私は知的な女性にとても心惹かれます」

 年下の美青年から予想外に褒められたマユは、動揺して真っ赤になると冷たい水を飲んだ。ルウは不機嫌な顔で水を注ぐ。


 ガングがあごを撫でながらつぶやく。

「ザクセン王国のアンドレア王子と、プランタジネット王国のレティシア王女が結婚すれば、両国は縁続きになる。わるい話じゃねぇよな」

アレックスも頷く。

「私は個人的に同性間の結婚もあると考えていますけれど、国の結婚となるとまだ異性同士の結婚しか認められないようです」

「世継ぎのことを考えると、異性同士の結婚になるだろうなぁ」

「レティシアは小さな頃から政略結婚で他国へ嫁ぐことを言い聞かされていました。それは私たち王子も同じです。国や一族の繁栄のため、より良い結婚をする必要がある。姉もそれは理解していたはずなのですが……」


 マユが恐るおそる発言した。


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