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1−3 軍服

1−3 軍服

 

 マンホールチルドレンが“狩り”をする時に絶対に気をつけなければ行けない事、それは自分の生体を残さない事だ。

 

  市民は成人になると強制的に声紋・指紋・光彩を政府に登録される。生体は政府が管理し、市民が必要な行政サービスを受け取る際に、その都度、登録した3つの生体のうち、任意の2つを提出すればすぐに本人の照合がなされ、サービスが提供される。

  

  成人に満たない子どもたちは成長によって生体も変化する為、3歳になると項の下や親指と人差し指の間など、一箇所に1〜2ミリほどのマイクロチップを埋め込み、15年間本人の変わりとして機能する。失踪や行方不明者が出た場合にも、保護者が生体認証で瞬時に警察の捜索サイトにアクセスして、GPSで居場所を特定出来る。このチップを地上の全ての未成年に装着して以来、子どもの失踪や誘拐というものは無くなった。

  

  中央が市民の全てのデータを一元管理するこの国家運営は米国からの技術という事もあって、発足当初は凄まじい反対にあったが、身体一つで自分自身を簡単に証明が出来るとあって、瞬く間に全市民の同意を得た。もはやこの街の日本人にとってはなくてはならないものだ。

 

 ただ、生まれたときから地下にいたエイト達マンホールチルドレンは生体を登録されていない。政府の警察組織も、生体の分からない犯人を特定する事が出来ず、実質野放しの状態が続いていた。

 

 だから、マンホールチルドレンにとっては、生体を取られる事は死に値する絶対にあってはならない失敗だ。彼らは特に“声帯”を採取されないよう、地上では一切喋らない事を徹底している。

 

 病院から盗んできた黒いゴム手袋をゆっくりのばしながら黙々と手にはめ込む。野球場のグッズ売り場から盗んだ帽子を深く被り、静かにうつむいたまま今日の狩りのイメージトレーニングをする。

 

 今日の獲物は警察予備隊の制服。

 

 日本の学ランをイメージした、黒と金色のバッジのついたジャケットが特徴で、襟元には階級や実績に応じた豪華なバッチが取り付けられている。独特の美意識から生まれたデザインと相まって、ほとんど外国での活動を行わない事から、世界中の軍服コレクターから重宝され、高値で取引されるのだ。

 

 また、腰元には活動の際に相手に対して使用する電子警棒を携帯しているが、この様子が丁度外国人のイメージするサムライの雰囲気とリンクして、マニアにはたまらないアイテムだ。

 

 警察予備隊の軍服を盗んで売る。

 普通ならそんな危ない橋を渡ることは避けるべきだが、エイトには秘策があった。

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