雪に青サギ 第六話
放課後。
拓人とさやかと一緒に、体育館に向かう途中で姉さんと会った。
「大地―。呼ばれたから来たよ。」
姉さんの片手には明らかに今日部活に行こうとしていた証拠があった。
「今日、もともとくるつもりだったでしょ?」
「あー。バレた?コーチにこいって言われてたからね。」
僕と拓人は、苦笑い。隣に目をキラキラさせた巨人がいるけど、、、
「はじめまして!!伊藤さやかっていいます!」
「大地から聞いてるよ。今日来た転校生だってね。よろしくね。」
2人は夢中で話していた。その様子を見て拓人が僕の耳元で囁く。
「このまま逃げね?」
「無理だろ。勝負までお前が仕込んだんだから。」
「お前がいればいいじゃん。俺は体調不良ってことにしといてくれ。じゃあ・・・」
「拓人君?いくよ?」
まるでヒソヒソ話を聞こえていたかのように、絶妙なタイミングで姉さんが笑顔で話しかけてきた。拓人は後ろを向いていて、顔だけ姉さんに向けた。
「はい。よろしくお願いします。」
観念したのか、そこから拓人はおとなしかった。
体育館に着くと、すでに下級生が準備をしていてくれた。
「こんにちはぁー!!」
運動部特有の大きなあいさつが体育館に響く。
「こんにちわぁ!!」
姉さんが挨拶をする。わかりやすく、一瞬の沈黙があった。その後、ストーブの前で温まっていた同級生も含め、全員が姿勢を正して、大きな声で姉さんに挨拶していた。姉さんの統括力は今でも健在らしい。
「おお!!元気だったか?」
コーチが姉さんに話しかける。
「元気ですよ。弟がお世話になってます。ほら、3人は準備しておいで。」
姉さんに諭されると、拓人が耳元で、
「まさか、このまま見るだけってことは・・・」
「ないだろ。」
「だよなぁ〜。」
さやかと別れて、僕たちは着替えた。