雪に青サギ 第五話
担任に言われた通り、僕が学校の案内をしている。外野の視線が痛いが、そんなことよりも、窓ガラスに映る自分と彼女の対比の姿が心にくる。改めて思った、僕ってこんなに小さいんだって。
「バレーいつからやってるの?」
彼女にも視線が集まっているのだが、そんなの気にしてない感じで普通に話しかけてくる。心なしか、教室で話していた時よりも顔が明るい。
「小3くらいからかな。そのくらいの時から兄ちゃんが始めたからそのついでに。」
「お兄さんも有名だもんね。アンダー代表にも選ばれてたし。」
あんなおちゃらけていて、姉に尻に敷かれている兄だが、誰もがしる実力者。顔もスタイルもいいので雑誌の特集では、王子なんて言われてた。この記事を見た家族の反応は、全員が「どこが?」だった。
「兄は僕と違って、大きいから。センスもあったし、身長も高いし。」
「身長、そんなにコンプレックス?」
彼女は僕の目の前に立ち道を塞いだ。顔をじっくり見るために少し屈んでいる。
「別に、、、」
「嘘だ。2回も身長のこと言ってたよ。そんなに大事かな?身長って。」
持っている人間の言い方だ。それが1番欲しい人にとっては煽り以外の何者でもない。
「当たり前だろ?君は身長高いからわからないと思うけど、大きい人の中にいると惨めになるんだ。家でも、学校でも。」
「そうなんだ。でも、私は気にしてないけど?なんでもない、、、」
彼女は少しだけ顔を赤くして、そっぽを向いた。
「ほら、さっさと案内してよ。あと、君はやだ。さやかって呼んで。」
自分が今、どこにいるかもわかってないであろうさやかは少し小走りで僕の前を行く。
「あ、そこ、男子トイレ・・・」
僕の声はなぜか届かず、さやかは男子トイレに直行して行った。
「すいませんでした!!」
さやかの大きな謝罪が休み時間の廊下に響いた。