雪に青サギ 最終話
卒業アルバムを開く。全く同じデザインの2冊のアルバム。娘が見たいからと言って、押し入れの中から出した。どちらのアルバムかはわからないが、娘は嬉しそうに胡坐をかく僕の膝の上に座って、絵本をねだるように表紙をめくった。
「パパどこにいるの?」
「もう8年も前のことだから覚えてないよ。でも、パパ小さかったから意外とすぐに見つかるかもね。」
「あっ!いた!」
高校入学当初の、これから大きくなるであろうと期待して、大きすぎる制服を着る僕の姿がいた。改めて見ると、結構小さかったな。
「よくわかったね。」
「大好きなパパだもん。わかるよ。」
嬉しいことに娘はパパのことが大好きに育ってくれたらしい。今年で3歳になるが、今の所、お風呂も一緒に入ってくれる。
「ママは?」
「ママは、2年生の時に転校してきたから、まだ出てこないかな。」
そこから、体育祭や文化祭、各年度ごとの部活の面々が移る。
「おじさんたちみっけ。」
兄さんと拓人の顔を見つけて、娘は嬉しそうな顔をする。いつも遊んでくれてるみたいで、可愛がってもらってる。
これは余談だが、拓人と姉さんが結婚した。姉さん曰く、拓人の猛アピールがあったから、仕方なくらしい。逆に拓人は、姉さんがめちゃくちゃ迫ってきたとのこと。真実はわからないが、多分、拓人がいうことが正解なのかなって勝手に思ってる。兄さんは独身を謳歌していると、自分では言っているが、最近、フラれたらしい。
「ママ!!」
次のページには、3年次の体育祭の時の写真が載っていた。笑顔で僕とハイタッチする姿。
「パパとママ。昔から仲良しだったんだね。」
「そうでもないよ。昔はよく喧嘩してたし、言い合ったり、口聞かなかったり、勝負してママ泣かせたり。」
「そうなの。パパ酷かったんだよ。チビだったくせに。」
僕の後ろからさやかの声がする。
「ママの方が大きいね。」
「この時はね。パパ、この後に急に伸びて生意気に追い越したから。」
「でも、そんなチビでもいいって言ったのがママだったんだよ。」
「チビじゃダメなの?」
「そんなことないけど、周りと比べるとパパ本当に小さくて、それが、嫌だったんだ。」
「じゃあ、なんでママは、チビだったパパを選んだの?」
「小さかったから目立ったってこともあるかもだけど、誰よりも背中は大きく感じたからかな?パパ上手だったから。」
「ママに見つけてもらって、こうして一緒に入れるから、その時は、チビでよかったなって今は思うよ。」
「ふーん。あっ、アニメの時間!!」
娘は重いアルバムを勢いよく閉じて、僕の膝から飛び上がった。その反動で、アルバムから写真の端っこが出てきた。
「何これ?」
「あっ、それは・・・」
その写真には、顔はわからないが体育館倉庫で抱き合い、夕焼けに照らされる2人の姿が。
「これって、俺たち?」
「うん。拓人が、撮ってたみたいで。インターハイ本戦の前だって。」
「絵にはなってるね。あいつ引退したら、こっちの道もあるかもね。」
「うん。いい写真だからって、アルバムの中に入れたまま忘れてた。」
「パパ!早く来て。」
「はいはい。」
僕は、その写真を持って娘の待つ、ソファーに向かった。
「どうするの?」
「せっかくだから、飾ろうかなって。額も余ってたし。」
テレビ横にある棚には、今まで取ってきた写真が飾られている。
インターハイの準決勝で負けて僕に泣きつくさやかの写真。
会場で撮った集合写真。
結婚式の写真。
娘が生まれた時の写真。
拓人と兄さんと一緒に選ばれたトップ代表の時の写真。
その中に新しく、高校の時の写真。
「今度はみんなの集合写真かな。」
僕が、綺麗に写真を陳列していると、
「パパ。邪魔!!見えないから、こっち来て抱っこ。」
僕は言われた通りに、娘を膝の上に抱える。娘が見ていたのは、3歳の女の子には珍しく、スポ根系のバレーアニメだった。しかも、リベロが主人公という少し攻めた感じのアニメだった。
「パパ、このスポーツやってるんでしょ?」
「そうだよ。」
「上手?」
「まぁまぁかな。」
「ママもしてたんだよね?」
「そうだよ。ママはもしかしたらパパより上手かな。」
「わかった!なら、私もする。ママに勝てるように教えて。」
「バレーボールで何がしたいの?」
娘はテレビに指を向けて、
「この人みたいに、ボール取りたい!」
おしまい
季節限定で、季節守れてませんが、最後までお付き合いいただきありがとうございましたm(_ _)m
次回作もよろしくお願いします(๑>◡<๑)




