25/30
雪に青サギ 第二十五話
いつも通りの実家。
いつも通りの家族。
違うのは多分、僕の中と兄の様子だけ。
僕が今見える世界は、とてもクリア。
いろんな色が澄んで見える。いつも食卓を囲む白いテーブルも、それに合わせて作られた白い椅子。
そこに座っている兄の真っ赤なパーカー。
今までと違った世界が見えた。恐怖心が急に巡ってきた。
僕だけが、どこかおかしくなってしまった感覚があって。似た世界に僕だけ連れて行かれたみたいで。
目に見えるものはいつもと変わらないはずなのに、どこかに違和感が覚える。
いつしか騒がしかった兄さんの声が聞こえなくなってきた。
足に力が入らない。膝から崩れ落ちたみたいだ。
その衝撃だけが僕の感覚に走った。
痛みはない。
もともと傷めるほど高くない。
僕の異変に気づいた姉さんが、僕の体を支える。そういえば瞬きしたっけ?目が乾く感覚もしない。
防衛本能からか、自然に目から涙が溢れてきた。
悲しくないけど、怖かった。




