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雪に青サギ 第二十一話

次の日。


当たり前のように、口を聞くことはなかった。1番前の席で、誰とも話さないで、ただ次の授業の準備だけする。僕って、話しかけてもらえないと、誰とも話せないんだって思った。かといって、誰かに話しかける勇気もない。いつもキッカケをくれる拓人の存在のありがたさが身に染みた。拓人の周りには常に人がいるし、さやかも別に僕と話さなくても、女子の中心でたくさんの人に囲まれていた。僕は2人がいないと孤独なんだなって。


「お昼一緒にいいかな?」


僕は、拓人ではなくさやかに声をかけた。


「分かった。」


「ありがと。」


よそよそしい雰囲気だったが、了承してくれた。2人での昼食は初めてだった。


いつもの空き教室。いつもと違うのはキッカケをくれる人間がいないこと。2人だけということ。


「・・・。」


「・・・。」


お互い何を話していいのかわからなかった。自分で読んでおいてそれはないだろうと思うだろうが、こんな雰囲気の時にそれは無理だ。簡単に口を開くことなんてできない。


「あのね、私嘘ついてたの。」


口を開いてくれたのはさやかだった。


「お姉さんに憧れて、この学校に転校してきたって大地には言ったけど、本当は大地に会いたくてこの学校に来たんだ。」


「拓人から諭されて、自分で考えて、そんな感じなのかなって思った。そうだったんだ。」


「うん。中学校の時に、大地の試合見て、感動したの。確かに、体は小さいかもしれないけどそれ以上に、大きく見えて、何より、かっこよかった。私、レシーブ苦手でさ、身長が高かったから一応エースって呼ばれてたけど、それに納得しないチームメイトが多くて、いつも1人で練習してたんだ。レシーブって、1人じゃ練習できないから、大地は、人に囲まれてバレーしてきたんだなって、羨ましくも思った。」


教室での彼女の様子を見ている限り、嫌われる要素はない。笑顔で、可愛くて、気さくで、よくふざけたりもして。

「それは、高校に上がっても変わらなくてね。一時、私、不登校になったの。もう、嫌になっちゃって。大好きだったバレーも嫌いになったりして。そこで思い出したのが、大地の顔だった。たぶん、その時から、私は無意識にあなたが好きだったんだと思う。性格も知らないし、大地は私のこと認識してないけど、辛い時に真っ先に頭の中に浮かんだのが、大地の顔だった。一緒に、バレーしたいって思いが溢れてきたの。」


告白とも取れる、その発言は、たぶん、たぶん、うん。


「そこから、親を説得して、納得してもらって、ここに転校してきたの。担任の先生に、大地に案内してほしいってお願いして。初めて近くで見た、大地の顔は少し、怖かったかな。眉間に皺が寄ってたし、案内してくれって、お願いされた時、嫌な顔してたから。その理由も、その後わかった。」



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