雪に青サギ 第十七話
今度は、姉さんのサーブのターン。姉さんのルーティンはいつも通り。さやかと練習したからといって変わるものではなかった。姉さんのサーブは、真っ直ぐ僕の正面にきた。
「お願いします!」
膝を抜き、早めに準備していた速太の真上に完璧にレシーブする。速太はアンダーハンドに関してはめちゃくちゃうまかったのだが、ずっとオーバーハンドが課題だった。リベロ病というかなんというか。だから、僕なりの誠意一杯の速太へのサポート。速太の不安げな顔が見える。
「高く上げろ!」
拓人の声が響く。速太は、拓人の注文通りに高く、トスをあげた。それに合わせて、姉さん側はブロックを2枚使うらしい。姉さんはサーブうってからすぐにブロックに入っていた。僕みたいにオーバハンドが得意でない速太だからこその対応だと思う。ネットの高さは、女子に合わせてる。さやかも、入学からさらに身長が伸びて、姉さんはもともとでかい。その上から打てるかもしれないが、完全にシャットアウトを狙っていて、腕が前に出てる。速太の上げたトスはネットに少し近く、拓人はしっかりジャンプできてはなかった。
拓人のスパイクは、さやかの手に当たり、威力が落ちて、姉さん側に緩やかに上がった。
「ワンタッチ!!」
もう1人にチームメイトが姉さんたちの準備のために、高くそれをあげる。
「オーライ!!」
姉さんがトスをあげるみたいだ。さっきの打ち合わせの通り、ネット側をカバーするために僕は少し前にでる。そんな僕らを嘲笑うように、姉さんと早也香のコンビは中央突破の速攻を選択した。拓人のブロックは、急な速攻攻撃に対応できずに、完成前に手に当たり、ボールは吹っ飛んでいった。
「ナイスキー!」
「ナイストスです!」
盛り上がる向こうに対して、
「意識しすぎたな。」
「姉さんにしてやられた。」
さやかも以前とは違って、力任せのプレーが減り、多彩だった。今まではそれで通用するくらいのポテンシャルはあったのだろうが、僕対策に、いろいろなことを姉さんから吸収しているみたいだ。
「どうする?」
「ちょっとは考えて欲しいけど、これ結構どうしようもないかもしれない。」
拓人のサーブの時は、サーブで崩すことは可能だが、僕らのターンがどうしてもネックになってくる。チャンスボールを与えある機会が1ローテに必ず2回ある。これはどうしようもない。
そこからの僕らは耐えるのに必死だった。さやかだけじゃない。もちろん、姉さんという馬鹿でかいミサイルもあるので、てんやわんや。さやかを対策しようもんなら、容赦なくそれを力でぶっ壊しにきた。結果的に、ギリギリ2点差で負けた。




