雪に青サギ 第十一話
さやかを不可抗力で泣かしてしまってから数日が経った。あれから、口を聞いてくれない。本当に嫌われたのかもしれないが、時たま、視線を感じる。あの日以降、姉さんは毎日来るようになって、練習がバカキツくなった。拓人と共謀しれサボろうとしたが、僕らのクラスにはさやかがいるのですぐに姉さんに連絡がいく。姉さんとさやかは仲良くなって、最近の姉さんの口からでる話題はほとんどさやかのものだった。
家では、さやかのことを泣かしたというのが全員の耳に入り、いじられる。今日もなぜか、兄さんが僕の部屋で漫画を読んでいた。
「大地も罪な男だね。女の子泣かすなんてさ。」
「だから、試合中で、不可抗力だって。」
こんな話題、兄さんにとってみれば最高のおもちゃだ。
「でも、ちゃんと謝ったか?」
「試合中のことだったから、謝るのは違うと思うけど。」
「バカだなぁ。謝れば、話くらいはしてくれるだろ?そこから、仲を深めるんじゃないか。好きなんだろ?」
「はぁ?そんなこと、一言も言ってないけど!?」
「そうなのか?拓人が言ってたぞ?いい雰囲気だったのにって。」
拓人と兄さんは仲がいい。大学生になった今でも、頻繁に連絡を取りあってるみたいだ。その内容はほとんど僕の内容らしいが。
「そんなんじゃないから。大体、身長が違いすぎて、僕には勿体無いよ。」
「お前、そんなこと思ってるのか?でも、そんなお前に朗報だ。身長の高い女性は、低い男性のことが好きらしいぞ。」
「どこ情報だよ。それ?」
「漫画。」
「当てにならない。そんなんだからいまだに彼女が・・・」
「それ以上はダメだ。俺の心にくる。」
「こんなにかっこいいのにさ。中身が残念すぎるから、彼女ができないの。黄色い声援はいやほど聞いてるかもだけど、1人に中身まで愛されるって大事だよ。」
「そんなこと言ってもしょうがないじゃないか。おっさんみたいな説法を兄にするな。まぁ、とりあえずさやかちゃんだっけ?話しかけてみろって。部活でも、変な空気が流れるのは悪影響だろ?」
「わかったよ。なんとかしてみるけど、、、」
「報告よろ。」
「拓人からいくだろ。」
「こういうのは本人から聞いてナンボだろ?」
そんなこと話してると、姉さんが入ってきた。なんで、この兄、姉はこの部屋に来るのか。
「何話し当てたの?」
「男だけのヒ・ミ・ツ。」
「きもいから、いいや。大地、漫画貸して。」
兄妹3人仲がいいのはいいが、僕の部屋に集まらなくてもいいじゃないか、、、




