雪に青サギ 第十話
あれから、試合は進んで、僕らが大差で勝っている。男女というのもあるとは思うが、僕らはサーブミスとブロックアウトでしか失点をしてない。基本的に、ブロックでコースを限定して、その先に僕を配置する。コースさえ絞れれば、何も問題なく、スパイクレシーブすることができる。入った僕には、ボールの回転まではっきり見えていた。行動までの時間が極端に少なく、思考すら追いついてないが、体が勝手に動いてくれる。ボールに触れるまでの体感時間が長ければ長いほど、僕にとって余裕ができる。余裕さえできれば、基本的に落とすことも、セッターに返らないこともない。油断すると、意識が持っていかれそうになるが、バレーが得点後に止まるスポーツでよかった。意識が持っていかれる前に強制的に止まるので、現実に戻ることができる。現実に戻って見えるのは、相手チーム、特に姉さんとさやかの顔だった。この後が少し怖いが、手を抜くのは違うのであくまで全力で。
・・・。
僕はいつも通りに、音も立てずにセッターに返し続ける。それを容赦なく、全力で拓人が点を決める。
マッチポイント。拓人が、全力で打ったサーブがコートの隅に落ち、僕らが勝った。
「ありがとうございました!!」
試合が終わると、僕のスイッチが切れて、その場に座り込んだ。
「お疲れ様。手、抜かなかったな。」
「しばらく動けないかも。久しぶりに集中したから。」
拓人と話していると、拓人の後ろから姉さんとさやかの姿が見えた。
「大地。やりすぎ。」
「でも、手を抜いたら姉さん怒るだろ?」
「今日、最初のサーブ以外、大地から点取れなかったもん。流石にそれじゃあ、問題だから練習来るようにしたから調子に乗らないでね。さやかちゃんもいってやって。」
姉さんの隣で、何も話してなかったさやかが、僕のことを指差して、
「大っ嫌い!!」
涙を浮かべながらそう言って、どこかに行ってしまった。
「わかりやすく、嫌われたな。」
「女の子泣かせるなんてさいてー。」
「じゃあ、どうすればよかったんだよ。」
「自分で考えればぁー。」
「俺、しーらね。」
さやかの姿で忘れていたが、姉さんがサラッととんでもないこと言った気がする。
「姉さん、もしかして、これからも来るの?」
「何?そのつもりだし、ほぼ毎日顔出すと思うけど。」
その発言を聞いた拓人と僕は、肩を落として、大きくため息ついた。




