雪に青サギ 第一話
雪に白鷺ということわざを知ってますか?
雪の上では白い鷺は目立たないという意味です。
この短編のタイトルは白ではなく青。
真っ白の雪の上では少し目立つ。
コンプレックスのある、主人公の話です。
『雪に青サギ』
人と違うことが嫌だ。本当に嫌だ。目立つし、疎外感があるから。僕は小さかった。中学生になっても、あまり身長が伸びなくて、女子の真ん中くらい。男子の中ではダントツで小さかった。
そんな僕だからか、よくいじめまではいかないけど、いじられた。よく肩車されたり、頭に肘を置かれたり、顔も可愛いらしく、女子には女装させられて、文化祭に出させられたりもした。
そんな僕の部活は、バレー部。親の影響で始めた。身長の影響で、リベロだった。両親と上の兄弟は背が高いのに僕だけなんでって。アタッカーがやりたかった。うちの一家は全員そうだから。ほら、家族の中でも浮いてるじゃない。違うのが本当に嫌だ。牛乳は毎日飲んで、いっぱい食べて、寝てるのに、、、
朝一、2リットルの牛乳を飲む。結構きつい時はあったけど、今ではスルスル飲むことができる。
「大地。俺も飲むから、持ってきて。」
2つ上の兄から、声をかけられた。
「そのくらい自分でとってよ。」
「いいじゃねえか。目の前にいるんだから。」
仕方なく、僕は兄の分の牛乳を耐熱性のコップに注いだ。
「あ、今日寒いからレンチンしてくれ。」
耐熱性のコップに僕が入れたのをみて、また要求が増えた。ムッとしながらも、両手を合わせて、その後ろからウインクしてくる兄の要求を断ることができなかった。
「そんくらい自分でしなさい。」
冷蔵庫の隣にある洗面所の扉から、1つ上の姉が僕と同じことを言った。
「へいへい。」
兄は姉の言うことを聞いて、僕の手から、コップをとってラップを掛け、レンチンした。兄は僕の耳元に来て小声で、
「いいか、大地はこんな怖い彼女作るなよ。」
「聞こえてますけど?」
少しドスの効いた声がして、2人でゾッとした。この家では姉が1番強い。
「こんな僕のこと好きになってくれる人なんていないよ。」
小さな声で囁く。
「そんなことない。こんな可愛い弟見向きもしない女がいるもんか。」
それが、兄の精一杯のフォローだと感じながら、「ありがとう」としか言うことができなかった。僕が少しくらい顔を見せると、兄と姉は、2回ずつ頭をポンポンとした。それが1番心にくるのに。