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いつもありがとうございます。いちのじゅくりょうです。よろしくお願いします。今回は短編です。今日で完結します。

「そんな不機嫌な君に、実はプレゼントがあるんだ」

「え?本当?」 


 そういってユーリスは胸のポケットを探る。そして、一輪の花を差し出した。

「町のバザーで見つけてさ、きみに似合うと思って持って来たんだ、受け取ってよ」

「え?本当?うれしい」

 

 それは青い花だった。品種は分からない。けど綺麗で、ローズクイーンにとっては、宝物の一つになった。


「けどごめん、実は今日は少し用事があってすぐに行かなくちゃいけないんだ」

「ううん、いいの、大丈夫。また来てくれるよね」

「もちろんさ、また来るよ」

「ねぇ、ユーリス、実は……」

「ごめん、本当に時間がないんだ。また来るからあとでいいかな?」

「うん、ごめんね、いいの、今日は来てくれてありがとう」

「うん、またね」


 そういってユーリスは薔薇の庭園の死角へ消えていった。音もなく、気配もなく、誰もいなかったかのようにユーリスはいなくなった。

 青い花を見つめながら、ユーリスを思い返す。あの日、図書室で出会ったときから、ローズクイーンは口角が上がりっぱなしだ。そういえば顔が痛いなとローズクイーンは頬をほぐす。ぐりぐりと回すと血流が流れる気がして痛みが和らいだ。

どうやら彼と話しているときずっとにやけてしまっているようで、それで痛みが出ているようだ。でも自分ではどうすることができないのだ。仕方がない。


「お嬢様、先ほどようやく茶葉が届きましたがどうされますか?おやそれは?」

「ほんとバカね、こうやってね、あ、いやなんでもないわ」

 平静に戻るために目をそらした。これはローズクイーンとユーリスの秘密だ。誰にも悟られるわけにはいかない。それが彼女には楽しかったし、彼女だけがそれを知っているのは彼女だけでよいのである。


 その時だった。

「Lv.が2に上がりました」

 どこから聞こえたのは分からない。だが確実にローズクイーンはその声を聴いた。誰の声なのかもわからなかった。

「エルブイ……、レベルが上がったわ」

「レベル?どういうことですか?お嬢様」

 今話したセバスティアンの声ではないことは明らかだった。

「セバスティアン、レベルって何かしら?」

「はい、レベルは冒険者たちが主に使う言葉でございます。レベルが高いほど筋力や魔力が上がるといわれています」

「なるほど、そのレベルが上がったようなの」

「レベルですか?どうしていきなり上がったのですか?」

「分からないわ」

 セバスティアンは深く考え込んでしまった。あごに生えた髭をさすり、何か不安そうな顔をする。

 私には一つ、心当たりがあった。恋愛だ。これは愛の力だ。きっとそうだ。ユーリスと出会ったこと、そうして私の力を一つ上げたのだ。

「そうね、愛の力、つまりloveが上がったということね。やっぱりこの気持ちは本物ね」

「何のことですか?お嬢様」

「いいえ、なんでもないわ」

 その日セバスティアンはローズクイーンがやけに機嫌がいいことを不審に思っていたという。


つづきます。

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