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幸ある世界の終わりかた  作者: 鳥ノ音
一章 鬼の都
8/10

閑話:幕引き準備

すっかり見慣れた無人の都を、鬼は一人、静かに歩む。


「死を提供する......ねえ。とても土地神の言葉とは思えんな、カカッ......」


正直な所、余り期待はしていなかった。

期待はしていなかったのだが、しかし、ああもきっぱりと言われては、絶対ないとも言い切れないかもしれないと、そう思った。

だから、鬼は信じてみる事にした。

そうしてもう一度、人の作ったその場所を見ておこうと思い酒呑童子は一人歩く。

別段それほど大した思い入れがある訳ではない、何せ酒呑童子が封印された時には、この地には何もなかったのだから。

どれもこれも、どこもかしこも、目を覚ましてから初めて見る物ばかりだった。

だからこそ、鬼はその景色を純粋に綺麗だと思ったのだろう。

自分の死に場はこの地にしようと、そう思う程に。


「カカッ、カカカッ!」


ケタケタと笑い声を響かせながら歩く、歩く......

もしかしたらこれで見納めかと思いながら、そうである事を願いながら、鬼は一人、その景色を網膜に焼き付けるのだった。



酒呑童子と一旦別れてからも、カガリとツバメはまだ茶室にいた。

「少し歩いて来る。その間お前達は好きにしていていいぞ。」と言われはしたが、二人はこの場で待つ事にした。

畳みの上で向かい合い座る二人。

どうにか出来るの?とツバメが聞く。


「私一人では無理ですが、あなた様に手伝って頂ければ恐らくは可能でしょう。」


と返すカガリ。

ツバメは頭を傾げる。

空すら飛べない自分にできる事があるのだろうか?と。

そんなツバメにカガリは頷いて返す。


「別に何か特別な事をして頂く訳ではありません。ただ、今の気持ちを大切に持っていてください。それだけです。」


訳がわからなかった。

でも、ちゃんと説明をしてもらっても多分理解する事は出来ないだろうなと言うことを、この短い付き合いで学び始めたツバメは、言われた通りに今の気持ちを大事にするよう努める。

思い返すのは酒呑童子の事。

正直な所、ツバメは酒呑童子と言う鬼がどんな者なのかを殆ど理解していない。

何なら鬼と人の違いもわかっていない。

それなのに死なせてあげたいと思ったのは、カガリと話している時の彼の目が気になったからだった。

言葉を交わしている時、カガリではない別の何かを見ているような、そんな気がして、それが何処か寂しそうだった。

だからツバメは思ったのだ。

自分と同じく終わらなかった者を。

自分と違い、終われず取り残されてしまった者を、どうにか終わらせてあげたいと......

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