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Act.8 人生を賭けた乙女ゲームが始まりました

キリの良い所で終わらせたかったので、少し短いです。




「おはようございます、リナリー様。」

「おはようございます、ルシル様。本日も大変お美しい御髪ですね。」

「あら、ありがとうございます。リナリー様も、その澄んだ瞳がとても素敵ね。」



 翌朝、割り振られた教室で再会した私達は、貴族令嬢らしく挨拶としての賛美を送る。


 全員で20名のこのクラス、男女比率は大体半々で、現在はその半数程が教室内で思い思いに過ごしているが、ご令嬢方は、私の様子を遠巻きに観察している。

 自分も挨拶をしたいが、身分が上のものに身分が下のものから声を掛けるのはマナーとしてダメ。

 だから私が声を掛けてくれるのを待ってるんでしょうけど…生憎と私は母様から付き合うものは選べと口を酸っぱくして言われている。


 要するに、相手の家と私の家が仲良くしてパワーバランスは大丈夫か見極めろと言われているのだ。


 残念だがこのクラスには古参の貴族の家系が多く、ディリアス殿下至上主義な親を持つ子供ばかり。子供にもその思想は根強い。

 あんなクズを崇め奉られても私はブリザードを起こす以外の選択肢はないので、仲良くお友達なんて出来る気がしない。よって無視。

 ちなみに子息方だが、彼等はディリアスと付き合いがあるものも多く、私の扱いがあのクズと似ているものも多い為、初めからいないものとする事に決めている。



 特に席が決められていないようなので、私はリナリーと並んで座る事にした。


 周りの漏れ聞こえて来る声を聞けば、黒薔薇姫と田舎娘が知り合いなんて聞いてない、というような話が聞こえる。



 うん、私も知らなかったわよ。

 でも昨日知り合ってしまったんだもの、仕方ないでしょ!

 しかも私とリナリーは最早一蓮托生と言ってもいい程、お互いの未来がお互いの肩に現在掛かっているんですもの。


 …いや、掛かってるのはどちらかと言えばリナリーの肩に私の未来か?



「ルシル様、昨日はとてもためになるお話をありがとうございました。凄く参考になりました。でも、夢中になり過ぎて少し夜更かししてしまって…。」

「御礼なんて、よろしいですわ。私もリナリー様を倣って、昨日から手記を付け始めたのですよ。それに、昨夜は星がとても綺麗でしたわね。素晴らしい夜でしたが、その反動か、朝日がとても眩しく感じましたわ。」



 訳せば、「昨日帰ってから攻略ノートに追記したけど、お陰で寝不足。」と言ったリナリーに対して、「こっちは考察ノート書き始めたけど幻のルートなんてさっぱり過ぎて気付けば真夜中だったし、寝不足で朝起きんのまじ辛かった。」て事だ。


 淑女らしくにっこりと笑いながら、ちゃんと貴族っぽい会話はしているが、お互い前世は平凡な日本人。

 正直最早目で会話するレベルで目が口以上に雄弁に語ってると思う。

 お互いの寝不足加減を。



 そんな久しぶりの日本人特有“寝てない合戦”をしていると、扉が開き、教室内がシンとする。

 気付けばもう授業が始まる時間だ。


 入ってきたのはこの第一学年Aクラスを受け持つアンジュ先生。

 彼女は一応SWに登場はするものの、はっきり言ってしまえばモブ。名前があるだけの、行事毎に登場する言わば説明役のような人。


 ルシルとしての記憶では、確か伯爵家の娘で、魔力量や魔法の扱いに長けていると聞いた覚えが…。



「皆様初めまして。アンジュ=セルシアです。今日から一年、この栄誉あるAクラスを受け持つ事となりました。改めて宜しくお願いします。」



 にっこりと微笑みながら、彼女は教室内を見回した。

 ダークブラウンの髪を一つにまとめて横に流し、くすんだ赤色の瞳は強そうに見えるものの、そばかすが浮かんだ顔を見れば、全体的に素朴な印象を受ける。


 柔らかい雰囲気は、妙ななつっこさのせいだろうか。



「今日は簡単な自己紹介をしていたたき、その後に各授業担当の教師からの説明や諸注意が書かれたものを配りますので、目を通しておいてください。」



 リナリーの選んだ席が最後列だった為、教室内がよく見える。

 このAクラスは性質上暗めの髪が多く、更に由緒ある貴族しかほぼいない。

 家格が上にいけばいくほど由緒ある貴族も増える為、つまりは学園カーストトップに相応しい面子が揃っている。

 だがこのクラスには攻略キャラと呼ばれる人はいない。


 前世知識でいくと普通学園モノの乙女ゲームなんてヒロインの近くにどれだけ侍れるか勝負みたいなのもあったし、同じクラスだからこそ出来るイベントなんてのも多かった。


 しかし、SWにはそれが存在しない。


 何故ならヒロインであるリナリーは治癒専門。そしてリナリー以外は治癒魔法を扱えない。

 リナリーは元より他生徒とカリキュラムが違う上、イベントも大抵は護衛やら先生方やらに守られる為不参加。

 つまり、同じクラスであるより、攻略対象が怪我でもして治してもらいに来るか、リナリーが放課後自発的に攻略対象に会いに行くかしなければ、まず攻略対象と知り合う事すら出来ずに終わる事もままある。


 まあ途中ルシルに用事を持ってくるディリアスだけは必ずリナリーと知り合うんだけど…。



 ちなみに学園カーストトップには勿論あのディリアスも含まれるはずだが、彼は魔力量は一般的な為にBクラスにいる。王族のクセにAクラスにもなれないとは情けない。



「自己紹介が終わったらリナリーは治癒魔法のカリキュラムだっけ?」

「そうだよ、正直この自己紹介いるかな?ってレベル。」

「今日も昼までだし、また後で会おう。」

「うん、了解!」



 クラスメイト達が自己紹介をして行く中、こそこそと二人で話し合い、頷き合ってから視線を外した。



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