Act.6 どのルートを通ればハッピーエンド?
さて、ここでこのアリエスハイム王国の存在する大陸について説明すると。
まず、この世界に存在する大陸は三つ。
一番大きく、アリエスハイム王国他、有数の大国がひしめく大陸。
次に二回りほど小さく、エルフやドワーフ、獣人や魔族が住む大陸。
そして一つの国家が治める、一番小さい大陸。
亜人族達が住む大陸の事は、私達はほぼ知らない。
三上麻里奈としても知らない。SW的には特に関係がないからだ。
ただ漠然と亜人族が住んでいると伝わっていて、勿論国交なんかも皆無。
そしてアリエスハイム王国のある大陸だが、アリエスハイム王国は大陸の最西端に位置する。
そこから、北方は険しい山岳に囲まれる万年雪の国ユースポール王国。
東は四季の変化が目覚ましい享楽の国アマテラス帝国。
南は亜熱帯で常夏の開放的で陽気な多種族国家ミリオス連邦国。
西は海だがその海の向こうに大陸国家で、閉鎖的で他国に干渉せず、その代わりに干渉を禁じる鎖国国家リンドアール公国がある。
ザック様が誘拐された国はアマテラス帝国。アリエスハイム王国とは停戦協定を結んでいるものの、未だに国境感では緊張感が絶えないくらいに仲が悪い。
ここは地球で言うと名前的には和風っぽいが、実際は中華風の国。
でも、食べ物は和風らしい。設定資料集によると。
私がよく視察と銘打って遊びにいくのはユースポール王国。
ここはアリエスハイム王国とは友好国で、国交も盛んだ。
ユースポール王国は、年中雪に覆われているせいで農業は壊滅的だが、国土中にある山々から取れる鉱石や宝石を他国に売る事で食料問題は解決しているそうだ。
これはルシルとしての知識。一応王太子妃だからね。世界情勢は叩き込まれるよね。
ちなみにミリオス連邦国は亜人も住むと聞くが、彼等の大半は元よりこの国の生まれであり、亜人達が住む大陸の事は知らないらしい。
一応連邦国の上層部は亜人の住む大陸について知っているらしいが、国家機密扱いで、他所の国には調べようもない。
じゃあ話を戻して。
先程触れた通り、ザック様は今現在アマテラス帝国にいる。
別に囚われているとか、そういう事は一切ない。まず自分がアリエスハイム王国と関わりのある人間だという思考すらない。
だからアリエスハイム王国の王太子暗殺も、ただの任務としての印象しかない。
作中ではザック様はディリアスの暗殺に一度失敗する。
ディリアスの私室で奴の寝顔を見て、ふと昼間に気に入ってる女と笑うディリアスの姿が思い出され、不自然な既視感に襲われて、その間に王太子付の護衛達に気付かれてしまうからである。
お陰で王城の警備はきつくなり、深夜私室にての暗殺は出来なくなってしまう。
そして仕方なく王城ではなく、学園での実行を決め、学園へ潜入した所をヒロインであるリナリーに見つかり、ザック様はターゲットの気に入ってる女だと気付き、利用してみるか…という所からザック様ルートがスタートする。
ちなみに不審に思われないようザック様は学園の制服を着て潜入している。
このリナリーとザック様初対面時のスチルがイケメン過ぎて私はザック様にどハマりした。顔がいい。それこそ正義。
さてここで重要な事がある。
ザック様の顔がいいのは勿論重要だからもう一度言っておくとして、そこではない。
ザック様が不自然な既視感を持つのは笑っているディリアスの姿を思い出すからであり、嘲笑う姿を見ても何の既視感ももたらさない。
つまり、リナリーにはある程度ディリアスルートで進めてもらわなければ、ザック様は学園に潜入する口実がなくなってしまうのだ。
まあディリアスルート、ザック様ルートでなければ何故かアマテラス帝国はディリアスに暗殺者を差し向けるなどしないから、ストーリーの中でほんのりアマテラス帝国には皇帝お気に入りの闇がいると示されるだけなのだが。
「というか、ザッカリー自体はどう攻略するのよ…。」
「ザック様ルートに入ればザック様は出て来るんだから、問題ない!明日ディリアスと会って、笑顔が素敵ですねって言えばザック様学園に来るから。」
「いやまあ確かに選択肢に縛られてる訳じゃないけど!でも明日はディルと会うよりもフィル様の鍛錬を覗きに行かないとフィル様ルート入れない!」
「そこは私がフィリップ足止めして鍛錬の時間遅らせるから!お願い!ザック様を学園に出して!」
「えー?!」
これでも公爵家の娘だし、王太子の婚約者だ。フィリップの足止めくらいは適当な理由付けてやれば簡単に出来る。
彼は毎日の鍛錬は欠かさない人だし、多少遅くなっても学園の鍛錬場で鍛錬していく。
ならその開始時間を遅らせてしまえば問答無用で一日に二人のルートを開く事が可能なはず。
そう思って必死に彩花に懇願している。
というか、これを了承してくれなかったら私の未来はあのクズ男の奴隷で終わる事が確定してしまう。
私の人生を賭けた願いだから、自然と私の懇願も熱が入りまくる。
しばらくそうして押し問答をしていると、根負けした彩花が一際大きな溜息をついた。
「もー…わかった!婚約破棄協力するから!」
「まじで?!やったあああ!!絶対だからね?絶対の絶対だからね?!」
「わ、わかったってば…その代わりちゃんとフィル様の足止めしててよ…?」
「するするするする!めっちゃ足止めする!あれでも将来ディルお付の護衛騎士予定の騎士やってんだから、私の言う事もちゃんと聞いてくれるし、フィリップは!」
「でも、ザッカリー解放して、ザッカリーと会うのはどうするの?」
「そこはリナリーの代わりに私が裏庭の東屋に行けば会えると思うんだけど。」
ザック様とリナリーが会うのは、春には人気のない裏庭。そこは秋頃になるとコスモスやサルビア、金木犀などが見頃になる秋の庭な為、春には人が寄り付かない。
そこで少し一悶着を起こし、ザック様が現れて…というストーリー。
その声を掛ける役割を私がすれば問題は無い。
問題があるとするならば、別の方だ。
「なら、婚約破棄はどうする?」
「そこなんだよねぇ……。」
「ディリアスルート確定してからのあのイベントだから、そこまではさすがに私も協力出来ないっていうか、したくないっていうか…。」
「それに、婚約破棄早めにしないとあのクズがザック様との障害になりそうでね…。」
「なるとは思うけど…て、待って。」
「ん?」
彩花は何やら思い出したように真剣な顔をしてこっちを向く。
「ルシルは元々ザッカリーの婚約者よね?」
「そうだよ。だけど“病死”したからディルの婚約者になったの。元々ザック様との婚約も正式なものじゃなかったから。」
そう、ザック様の婚約者にと王家からは言われていたが、あの頃は父様が首を縦に振っていなかった。
だから正式なものではなかったし、世間に発表もされていない。
ただ王家としてはザック様の婚約者はルシルと決めていただけだ。
「なら、ザッカリーを王家に復帰させればいいじゃん。そのルート、あったよね?」
「…え、まさかそれって、幻のザッカリー王誕生ルートの事?」




