ファクトリアル (v)
「歩行困難」の文字に目を奪われ、一八は危うくボールを蹴りすぎかけた。いつの間にこんなものが。
ミナスに対処する力に目を向ける。ミナスの攻撃をどうにか剣でさばいてはいるが、その場から動く気配がない。
「どうなってんだよ、え!?」
一八は声を荒らげる。まるで環に責任があり追及するかのような口ぶりだが、彼女は努めて冷静に説明を試みる。
「『ファクトリアル』という機能みたい。さっき、宮丘くんが危なかったとき、午角くんがものすごいスピードでミナスを飛ばしたの、あれがそう」
「なんだよそりゃ。わかりやすく言え」
「プレイヤーは、危機的状況に際して、通常の能力を超えた特殊な力を発揮することがある、とヘルプにある。『課題』の進行状況がログに表示されるんだけど、そこに、午角くんが『ファクトリアル』を発動したと出ている」
「いうほどモンスターに効いてなかったぞ」言いながら一八はミナスのHPを確認した。ゲージは半分以上、残っている。
「あらゆる面で威力を上まわる必殺技、というものではないみたい。ログによると、スピードや正確性、ノックバック性能は跳ね上がっているものの、攻撃力は通常とそんなに変わっていなかった。効果にはランダム性がある」
「使えねーデメリットだな」悪態をついたが、おかげで命拾いしたをことを考えるとあまり文句もいえない。
「デメリットはそれだけじゃない」環が説明を次ぐ。「『ファクトリアル』はピンチ時に自動的に発生する場合がある機能なので、意図的に使えるものではないし、必ず発動するものでもない」
ますます使えない。
しかし、それらさえかすむ、重大なデメリットがさらにあった。




