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逃走 (xi)

 フィールドの端、空色の生白い線の先に転がった魔蹴球(サッカーボール)のもとへと一八は来た。

 不穏なラインがごく鈍く光る。一歩でも踏み越えれば死のペナルティーが科せられるという。

 ここより外がわには逃げられない。仮に出られたとして、車の走行音も鳥のさえずりも人の気配も、環境音のいっさいが感じられず、まるで夜中のように静まり返ったこの近辺に、行くあてがあるだろうか。見える範囲の向こうが全部はりぼてだとしてもおかしくない。

 環の言うとおり、ひとつひとつステージをクリアし『ゲーム』を攻略するしかなさそうだ。

 ――もしもこれがプログラムで動くゲームと同じだとしたら、話は別だが。


 ゲームバランスを崩壊させたり、途中をすっ飛ばして一足飛びに最終ステージへたどり着けるバグでもあればこっちのもの。

 ネットゲームなら緊急メンテナンス、アップデートが入ってすぐに調整、対策をされてしまうが、このゲームにパッチを当てる者はもういない――飼い犬に手を噛まれ、いや馬に、か――死んだ。

 アイテムを無限増殖できるなど、どこかに突ける穴があればいいのだが。


 そんなことを考えつつ、一八は疾走如意剣(けん)魔蹴球(ボール)に伸ばす。幸運にも剣の切っ先がどうにか届いた。

 うっかり線の外に出てしまわないよう、慎重に手と体を前に差し出し、ボールをつつく。

 木や竹の棒だったとしても数メートルもあればじゅうぶん重い。ましてや金属だ。不自然な体勢もあって、思った以上の重労働になる。

 しゃくだが、力の体格ならもっと楽だろうなと一八は悔しがった。


 ひと苦労の末、一八はこのステージの要を回収した。もう少し遠かったら完全にアウトだった。あのバカのせいで、と力を見やる。

 牛に追われる姿に、()鹿じゃなくて()鹿か、と思いなおした。

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