ペナルティーキック (xxix)
「なにをしているのっ」驚いた環が力をとがめた。「ルールを忘れたの? フィールドの外に出れば死んでしまう」
すんでのところで線をまたぎかけた足をとめる。「もしかしたら大丈夫かも」
おもねるように言う力を、環は「もしかなんてしなかったらどうするの」とぴしゃり断じた。
「今のところ全部、アプリにあるとおりに『ゲーム』は進んでる。ルールに『死ぬ』とはっきり書かれていることを試すなんて自殺行為よ」
「じゃあ、どうすりゃいいんだよっ。俺のせいでカズが死んじまう」
瞬間、激した力はぽつりつぶやく。「あー、そうだ、俺がモンスターを攻撃すれば標的は俺に……」
少しうつろな目で、今度はミナスと一八のほうへ向かおうとする力を、環がまた制止する。「落ちついて、午角くんっ。まだボールを取る方法はある」
方法がある?
バカな、と力はやつれたような面持ちで一笑にふす。
このなにもないグラウンドでいったいどうやって? 漫画のキャラクターみたいに手足をびよんと伸ばして取れとでも? それとも『プリムズゲーム』ではそんなおもしろおかしい能力も使えるというのか。
力のやや投げやり気味な期待を裏切って、クラス委員の少女は指摘する。
「伸びるでしょ、それ」
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