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ペナルティーキック (ii) ――― P(k)
薄く砂が舞った。ミナスが軽く痙攣している。泡さえ吹きそうな勢いだ。
そのそばを、色とエネルギーを失したボールがのろのろと転がる。
「カズ、すごっ」「めちゃ飛んだ」「プロになれるんじゃね?」
教室の生徒が騒ぐ。一番驚いているのはほかでもない、一八自身だった。
シュート時もこれまで味わったことのない会心の手ごたえで、フィールド上で身体能力が強化されるのは本当のようだ。
しかし、魔蹴球の球威・球速は、そういった範疇をさらに超えた先にある異常レベルだった。
我ながら人間業とは思えない。一瞬で起こったことのすべてが現実離れしていて、頭がついてこない。
それは、少し離れたところでへたっている力も同じようで、思い出したかのように「おまっ……殺す気か!」と抗議した。
ぼうっとした面持ちで一八はひとこと「ああ……、わり」と口先だけでわびた。彼の視線は、のびているミナスへ落とされていた。
「ヒントは出た?」教室の環は、解答チームと黒板を振り返った。
「出る出ないの騒ぎじゃねえって」玲爾たちは、かつかつと音をたてて黒板に書き込まれていく文字に沸きたつ。




