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剣球 (xxix)

 環の指示に対し、一八の見せたリアクションは――「え、なんで?」反発。

 嫌そうに「まだ色、変わってんじゃん」「これ、もっと育てたら虹色とか金色になるんじゃねえか?」とのたまう。


 唖然とする環のそばで、西井(にしい)(ぎん)が、あいつ、意外とスマホゲーでアイテムとかをちくちく強化するタイプだからな、と言った。

 クラス委員はあきれて口調を少し強める。


「午角くんが疲れてきてる。とりあえず撃って。今、むやみに威力を上げたって、モンスターは『不可侵』状態なんだから無駄になるでしょ」


 一八は「あ、そっか」ところっと態度を変えた。どうも、苦労が無駄になることに敏感のようだ。大ざっぱにみえてこつこつ積み上げるタイプ、無意味な積み上げは嫌う一面があるらしい。彼をうまく乗せるにはそのあたりがポイントになりそうだ。

 脳裏でそんなことを考えつつ環は声がけする。


「午角くん、宮丘くんのほうへモンスターを」


 待ちかねた力が方向転換しミナスを誘う。その先では、旭原高校サッカー部のエース級ストライカーがボールの後方に立ち、スタンバイ。


 一八は、クラスメイトの背中を追う重たげな体に狙いをすます。端末をスボンのポケットにしまうときに、征従か誰かが、ちゃんと当てろよ、と言った。

 あんなでかい(まと)、外すほうが――


「難しいんだよっ!」


 叫び声とともに渾身のシュートを繰り出す。わっとどよめきが教室で起こった。

 放った一八が自身さえ驚くほど、すさまじい音と速度でボールが吹っ飛ぶ。


 黄緑のあざやかな軌跡の延長線上にいた力がぎょっとする。想像を絶する恐ろしい速度で飛翔し向かって来る。すんでのところで横飛びに交わす。彼をちぎり飛ばしかねないスピードで数十センチ脇をかすめた。


 クラスメイトに冷や汗をかかせた球は、黄色がかったゆるいカーブで灰の巨体に吸い込まれ――


 バンッ。


 閃光が、爆ぜる。


 描いた軌跡と同じ色の向こう側で、数メートルの塊がノックバックする。

 獣の低い悲鳴にひと呼吸遅れて、ギャラリーの歓声と、地面に横転する鈍重な響きが起こった。

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