剣球 (xxiii)
「そういうことだ、カズ。準備ができたら教えろ」
こっちだ、牛、と力はミナスをけしかけ、一八から引き離した。一八はボールを放ってドリブルを開始する。
「これ、どれぐらいやりゃいいんだ?」
一八に問われて環は、うーん、と言いよどんだ。
アプリをチェックしてみるが具体的な説明はない。剣の長さと違って見た目で判断できず、適当な長さでやってもらうしかない。
そう伝えようとしたときだった。
「なんか、色が変わりだした」
電話の向こうで一八が言った。
モンスターのことかと思ったが、力を追いまわしているミナスは色彩を欠いたまま。変化しているのは一八の蹴っているボールだった。
白と黒のオーソドックスな球が青みを帯びている。少し発光しているようで、離れていてもはっきりと見えた。一八が蹴るほどに色あいが薄まり、青さが引いていく。
「これ、もしかして」一八の想像に環も同意する。「もしかするかもね」
ドリブルを続けるうちボールは水色に染まり、緑がかってエメラルドグリーンへと移ろう。
間違いない。色の変化が攻撃力の上昇を表しているようだ。すでにボールは真緑に変わっていた。
まだ上昇できそうに思えたが横やりが入った。
「いつまで走らせるんだよ」
力が電話越しになじった。だいぶ息があがっている。真砂鉉が「普段、馬アピールしてるわりに、同じ牛から逃げるだけで手いっぱいかよ」と遠慮のない感想を述べた。
征従と天祀も「走るだけがとりえなのにな」「走らない牛角はただの牛だ」などと辛辣だ。
「おまえら、聞こえてるぞ。誰が牛だ」
反発する気力はまだ残っているようだが、かなりのペースで走っている。力も、いくら先日の校内陸上大会で目覚ましい活躍(おおむね2位、3位)をみせたとはいえ、無尽蔵に体力が続くわけではない。ひとまず、今の魔蹴球がどれほどの威力なのか確かめる意味でも一度、攻撃してもらおう。
「宮丘くん、敵にボールを蹴って」
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