剣球 (xiii)
「午角くん、宮丘くん。それぞれの武器の特性をしっかり確認して。技や魔法は今回ないみたい。そのふたつがあなたたちが唯一使えるものよ」
前回のプレイヤー3人組を見る。「丹下くん、西院くん、湖西くんは、前の戦いでなにか役にたつことを思い出したら、ふたりに教えてあげて」
黒板に顔を向ける。「問題がもう出てる。解答チームはとりかかって」
ぐるり全体を見渡す。「前のふたつの問題から、ひらめきがだいじみたいだから、念のため解答チーム以外も全員、問題を見て。なにか気づいたことがあれば提案してほしいし、思い浮かばなければ解答チームにまかせて」
よどみない指示だしに、さすが生徒会副会長、クラス委員、演劇部の副部長、とクラスは感心する。
実際のところ環は、ついている役職のわりに、進んで先頭に立つことをそれほど好まない。どちらかといえば裏方にまわりたいほうだった。
生徒会副会長、クラス委員、演劇部副部長。いずれも人望で推され、頼まれごとを断りにくい性分から引き受けたにすぎない。
ただ、やるからには、必要に応じてできるタイプのキャラクターを演じる。
小学生までは引っ込み思案な一面が前にでがちで、遊び友達もそう多くなかった彼女だが、中学の部活で演劇部に入って少し殻を破れた。
顧問の先生いわく「日常生活でも、自分が求める人物像を演じ、作りあげることはできる」。今でも座右の銘だ。必要とあらばリーダーシップをとってみせよう。そして鬼にもなろう。
「LINEの友達登録やメールアドレスの提出がまだの人はそれを優先。済んでる人は、各自の担当魔法や技を覚えて。重複がないように申告やチェックを忘れないこと」
声がけしながら環は思う。
あのことにみんなの意識を向けさせてはいけない。よけいなことを考える余地を与えない。きびきびと指揮をとり、勢いでごまかせ。




